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夜灯
長い昼の後に数分の夜が訪れるような心地に等しかった。
空の彼方から夜の帳がふっと降ろされた。誰かが日を隠ししたように辺りは一瞬のうちに暗くなった。光なき天は聖なる黒を森に落とした訳だが、スリ師はそこに息を潜めていたのかもしれない。黄昏すらなく夜のスリ師は歩み寄り、我らの営みを明かすように照らす天からの光は盗まれたのであろう。悲劇は闇の内を舞台とし、夜の深さは灯の揺らめきではもたない。
しかし安心してもみたまえ。終わらぬ劇がないのと同様に明けぬ夜はないーー朝日の訪れが幾ら速くあっけなかろうといえど。されど、安心してもみるのだ。興奮に耐えかねた夜鳥が甲高く歓喜の一行詞を告げたが早いか、もしくは続く森中の歓声を浴びるなり、スリ師はたいそう驚いてしまう。そしていつものように決まり決まって、光を地平線の端に落っことして誰にも姿を見せずじまいに消えてしまっている。
町の灯の中で暮らす小鳥たちに訪れる夜はないに等しかった。




