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VS 夜行さん

 草木も寝静まる丑三つ時。現代でいえば午前2時。早く寝るお年寄りの中には、こんな時間に起き出して夜中に散歩をする人々もいる。


 「おとろっしゃあ、アーケードを首なし馬が歩きよるんよ」


 という目撃情報が商店街の青年会に寄せられたのは、そんなお年寄りからだった。青年会はその次の日の未明にアーケードで首なし馬を確認すると、翌朝すぐに今治銀座のシェアハウスに住む明奈に相談した。



*****



「みんな、来たぞ!」


 飛鳥は既に白銀剣を構え、アーケードの先を睨んでいた。明奈は飛鳥の後方でかかとをわずかに浮かせ、トン、トン、とリズミカルに跳ね、瑞鶴みつるは2機のドローンを頭上でホバリングさせていた。


 3人が警戒するなか、アーケードの海側から魔物がゆっくりと歩いてきた。魔物は馬の形をしていたが、その馬には首がなかった。


「その魔物は夜行さん。パワータイプだよ」


 瑞鶴はそれだけ告げると、2機のドローンからブレードを射出した。2枚のブレードは夜行さんに突き刺さるかと見えたが、強靭な皮膚に弾かれ、路面に落ちた。


「あいつ、硬いよ」


 攻撃を受けた夜行さんは両前脚を大きく振り上げ、怒りをあらわにした。飛鳥めがけて猛烈に駆け出し瞬く間に距離を詰めると、蹴り飛ばそうとするかのように前脚を高く振り上げた。


 後の先をとった飛鳥の白銀剣が夜行さんの腹に入ったが、夜行さんにダメージはないようだ。夜行さんは方向を変えると今度は明奈にターゲットを定め、殺到した。


「こいつ、目ぇ見えとるやろ?」


 飛鳥が夜行さんを回避しながら背中に爆裂踵落としを決め、同時に馬体の反対側から飛鳥が白銀剣を食らわせたが、攻撃が通った感覚がまるでない。


 夜行さんの馬体に飛鳥が白銀剣を何度も叩きつけるが、前脚を振り上げたり後ろ脚を蹴り上げたりして暴れる夜行さんの勢いが止まらなかった。


「早いもの勝ちやで! ロイリングドラゴン!」


 雷鳴の如き轟音が夜のアーケード街に轟いた。だが、


「む、無傷やって!?」


 明奈が夜行さんの首の部分に必殺技を放ったが、効いている様子がまるでない。夜行さんが暴れ出し、明奈は回避に専念するかたちとなった。


 これまで魔物に通用した攻撃が一切、夜行さんには通じなかった。


(勝ち目はないなら、逃げるか?)


 飛鳥の脳裏に逃亡という選択肢が浮かぶ。汗ばむ右手が白銀剣を強く握りしめた。


(父さんならどうするか?)


 家庭的なところが一切なく、無口で、ぶっきらぼうで、何事にも雑で、世間一般からすると決して褒められた父ではなかったが、最後の瞬間、父から飛鳥に託された想いと白銀剣にかけて、背中を向けたくなかった。


 飛鳥は父の遣う壮絶な突き技を思い出す。父はその技を使って庭の木に穴を開けてみせた。父はその時こう告げた。


「一心不乱だ、飛鳥。一心不乱」


 ぴりっ!


 と白銀剣が震えた。


 飛鳥の心が決まった。目を閉じ、息を整え、両手で白銀剣を青眼に構えた。


 明奈が大きく後ろに跳躍し、夜行さんと距離を置いた。暴れ馬となった夜行さんの勢いは止まらず、静かに白銀剣を構える飛鳥に向かって突進すると、両脚を振り上げて襲いかかった。


 カッ


 飛鳥の目が開く。と同時に飛鳥が鋭い突きを放った。白銀剣の先端が鋭く白く光る。飛鳥と白銀剣のすべての力が一点に集中・炸裂し、夜行さんの腹から背中にかけて20cmほどの穴があいた。


「一心不乱!!」


 飛鳥はすぐに後退り、夜行さんの反撃に備えたが、夜行さんは力なく前脚を下ろし、数歩歩くと、そのまま横に倒れ、起き上がることはなかった。夜行さんは次第に輪郭を失いやがて消えた。


 こうして未明の戦いは終わった。


「あなた達、ぼやっとしてないで、瘴気水を作るの、手伝いなさい!」


 どこからか現れた担任の野間の声が人気の無いアーケードにこだました。


「もはや、あの人のほうが妖怪っぽいわ」

「妖怪、瘴気水」

「ふっ」



*****



【今治銀座かわら版 妖怪注意報】


9月21日 アーケードに首無し馬が出没しました!

未明のアーケードに首無し馬の妖怪が出現しましたが、今治銀座の3人娘にすぐに退治されました。編集部のO編集長は「首なし馬を見てから松山競輪で万車券を当てた」といっていますが、危険ですので、勝負事の願掛けは吹揚神社で行いましょう。

このお話これからどうなるんだろうと、少しでもワクワクしてもらえてたら嬉しいです。

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次も頑張ります!

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