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閑話:新聞部のインタビュー(1)

 6月も半ばに差しかかったある日の放課後、愛と紗良は2人そろって進路指導室で担任教師を待っていた。


 高校2年が大学受験のことを考えるのはまだ少し早いし、そろって進路相談室に呼び出しというのもおかしな話だと思いながら、部屋に備え付けの赤本などをちらちら見ていると、担任の男性教師がやってきた。


「やあ、ごめんね、お待たせしてしもうたね」

「あ、先生」

「ええ、ええ、そのまま座っとって。ちょっと話があってね」


 男性教師が後ろ手に指導室のドアを閉めると、こほん、と喉を軽く整えた。


「おふたりとも、せとうち青雲高校を魔物から守って頂いてありがとうございます。教職員を代表して、お礼を申し上げます」


 男性教師は頭を下げた。愛も紗良も驚いた。これまでの人生で大人に敬語を使われたことなどなかった。言葉もなく男性教師を見返した。


「ごめんごめん。突然でびっくりさせてもうたね。事情があって学校側から表立って2人に感謝できないので、教職員で相談してね、ちゃんと感謝の意を伝えておこう、ということになったんよ」


 愛と紗良は顔を見合わせた。愛が丸椅子から立ち上がって口を開いた。


「そういうことだったんですね。ご丁寧にありがとうございます」


 愛が頭を下げると、紗良も慌てて立ち上がり頭を下げた。


「先生、どうぞ、お座り下さい」

「ありがとう、波方さん」


 男性教師が丸椅子に座り、ついで2人も腰をおろした。男性教師が再び喉を整えた。


「それでの、表立ってお礼はできんのやけど、校長や進路指導部長、学年主任とも話し合うて、これから波方さんが大学行くにしても就職するにしても、できるだけ力にならせてもらうことになったんよ。公募推薦でも指定校推薦でも、なるべく波方さんのご希望に沿う形で手伝わせてもらうけん」


 進路指導室に呼び出された理由が分かった。愛が答えた。


「先生、ありがとうございます。親にもこのことを伝えておきます」

「お父さん、お母さんに教職員みんなで心から感謝しとると伝えといて下さい」


 次に、男性教師は紗良に話しかけた。


「宝来さん、宝来さんにも大学進学のことで力にならせてもらいたかったんやけど、理事長から辞退させてほしい言うて話があってね。せとうち青雲高校の理事長がご自身のお孫さんの進学に便宜を図るんは、あったらいかん言うてね。コンプライアンス的なところを懸念されているみたいなんよ」


 紗良には腑に落ちるものがあった。優しいが筋の通った、昔気質のところがある紗良の祖父なのであった。


「はい。子供の頃からそのように言われて育てられてきましたので、よく分かります」

「なんか、申し訳ないね」


 男性教師は丸椅子に座ったまま、もう一度頭を下げたので、愛も紗良も頭を下げた。男性教師は、伝えるべきことをひと通り言い終え、ふうっと息を吐いた。先ほどより肩の力が抜けた様子で、ゆっくりと言葉を続けた。


「それでね、もうひとつ、お願いがあってね。僕は新聞部の顧問しとるんやけど、新聞部の子がどうしても2人に取材したい言うとるんよ。どうやろう、一回話、聞いてやってくれんやろうか」


 愛と紗良はふたたび顔を見合わせた。愛が口を開いた。


「実は、私たちの他にも魔物と戦っている生徒がいます。同じクラスの阿方さんと山路さん、それと通信制コースの紺原さんです。彼女たちも一緒で良いでしょうか?」


 この点は男性教師も予想していた。


「学校側も君たちのチームについては認識しているので構わないよ」

「ありがとうございます。であれば、私達も安心してお話をお受けできます。それと、これは新聞部のインタビューとは関係ない話なのですが、ダンス部の活動の件で、どなたにご相談するのが適切なのか含めて、進め方をご相談させて頂きたい件があるんです」


 愛が丁寧に切り出すと、愛と紗良に全面的な信頼を置いている男性教師が先を促し、愛は説明を始めた。

ここまでお読み頂き、ありがとうございます!

今回のお話、少しでも「いいな」と思ってもらえてたら嬉しいです。


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次も頑張って書きます!

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