エピローグ
天空を望む秘密の王国ソラは、突如舞い降りた魔導士に乗っ取られてしまった。
以降、その魔導士による治世を暗黒時代と呼ぶようになった。
国中が黒一色に染められ、国民はみな黒い着物を強制されたのである。魔導士に異を唱える者あらば凶悪な魔力によって口を閉ざされ、歯向かう者あらばそれまた凶暴な魔術によって弾き返される。
恐ろしい支配者が持つ黒への執着を止められる者など誰もいなかった。
あげくの果てには、山に降る雪を黒くする研究に無駄な予算を費やしたり、部下の剣士に有りもしない伝説の食材を探す旅に行かせたり。さらには、黒いチューリップを開発して私腹を肥やすわ、高地でも育つ黒樫の木の植林をして黒色の領域を広げたりと横暴の限りを尽くしていた。
また、魔導士自ら100均の深夜営業の店員となって国民を監視しているという噂もあった。
一か月に一度は王妃を伴ってどこかへ遊びに行き、帰ってくるときはいつも王妃の背中で寝ているという噂まであった。なんて身勝手な者なのだろうか。
さて、そろそろ国王と王妃が結婚式が始まるようだ。
黒い教会に敷かれた黒いヴァージンロード。黒いウェディングドレスを着た王妃、いつもの黒い魔道衣を着た国王。
みんなに黒い花びらのシャワーさせている。「今まで結婚してなかったのかよ」と真っ当な事を言うような者はすでに皆黙らされた後だ。
あ、ワカメを投げてる者もいるではないか! なんだこの国は? もはやこの国の民は洗脳され切ってしまったようだ。やれやれ……
みな口々に言う。
「末永くお幸せに!」
「どうか我らに明るい未来を導いてくだされ!」
(おしまい)
完結です。
最後までお付き合いくださって、本当にありがとう。