十八話
聞こえますか、私の声が
届いていますか、あたしの思いが
感じていますか、あなたの居場所を
「何が狙いだ?」
「何でしょうなぁ?
というか、あんさんがたはわかってはるやろ?」
俺の冷静な問いに、女はゆるゆるとした感じに答える。
正直、心臓はバクバク言ってるし、呼吸も荒くなってきていて、意識を失ってしまいたくなる。
失ってしまいたくなるのだが、それをした瞬間どうにかなるのかはまったく予想ができない。
・・・何も起きないかもしれないが。
「ユウ、か」
「ユウ?ああ、お嬢様のことですねぇ。
そうですよ?
ですからおとなしくこちらに渡してくださりましたら、あんさんがたには手をだしませんえ」
「渡すわけがないだろうが」
俺は緊張を押し殺して女と会話を続ける。
正直、今すぐ会話をやめたいのだが、時間を稼ぎたかった。
なんとなくだが(おそらく、長年の付き合いのなせる技だろうが)月華のやつが「時間を稼げ」と言っているように感じたのだ。
もちろん月華は何も言っていない。
横にいるユウは怯えるわけでもなくボーっとしている。
どこか遠くを見ているような、そんな目。
「だいたい、はじめの時はユウはお前らのことを嫌がってたじゃないか」
「ええ、そうですねぇ。
でもですねぇ、うちらの方もいい加減にお嬢様に来ていただかんと困るんです。
早くせんとうちらの仕事が達成できんのです」
「そういえば、初対面の時に『とあるお方』からの依頼で、とかと言っていたな」
「依頼主さんがそろそろ痺れを切らしてきとりましてなぁ。
いい加減にせんとうちらが損をしてしまうんです」
いい加減話すことがなくなってきた。
だがまだ、時間を稼げ、というプレッシャーを感じる。
何か、何か、時間を稼ぐような何かはないだろうか。
相手は俺が何も言わなくなったのを見て部下に何か指示を出している。
気持ちだけが、焦る。
そんなときだった。
パシャ。
パシャ?
音がした。
おそらくカメラのシャッター音だ。
パシャ。
また、カメラのシャッター音。
写真を撮ったのは月華だ。
「悠、もういいぞ」
そう言って月華はカメラを俺に渡す。
絶対に壊すな、とられるな、と厳命してだ。
「あんさん、偉い冷静やなぁ。
うちの写真なんかとってどうする気や?」
「なに、ちょっと都合でな、お前の顔写真がほしかったところだったんだ。
悠とグダグダ喋っててくれたおかげでゆっくり写真が取れたよ」
「あまり、記録を残されると困るんですけどなぁ」
「なら、あんまりだらだらと喋るな、三下」
今とてつもない、爆弾発言しなかったか?こいつ。
あーなんか向こうが震えてるよ。
あれは、怒りか?
もう、俺の中では緊張も通り越して一周して逆に落ち着いてきたぞ?
「三下?うちが三下ですと?」
「お前が、というかお前らが、だな。
仕事をするならもっと手早く余計なことも言わずに終了させるべきだったな」
いやいやいやいや、月華、お前今のこの状況分かってるのか?
どう考えてもこっちが不利だろう?
なにを挑発してみてらっしゃる?
車の周りにぐるりといらっしゃる皆々様が見えてらっしゃらない?
俺の考えをよそに、月華は轟然と言い放った。
「俺たちは帰る。
できれば道を開けてくれないか?」
「それを、三下呼ばわりされたうちらがするとでも?
それにここには結界が張ってありますから出ることすらできまへんよ?」
結界?今結界って言ったか?あの女は。
なんか一気にファンタジックになったぞ、おい。
月華は無言でアクセルを踏んだ。
まるで、お前らには用は無いとでも言うように。
「ほぼ単話のままの投稿でしたー」
『皆さんあけましておめでとうございます。今年も、紅月の書く小説をなにとぞごひいきに』
「律儀だね、キミは」
『というか、紅月に渡された紙を意図的に無視したあなたのフォローをしているだけよ』
「・・・それが律儀っていうんだよ?」
『まぁ、いいわ。去年の内にもう一話投稿できなかったのを若干後悔していたようよ。だから、今年はこの話を皮切りにまた、定期更新をしていくそうよ』
「勇者未満は相変わらず不定期更新で頑張るって言ってたね」
『頭の中の構想を固めるだけだそうだから、次はわりと早いのかしら?』
「さあ?すべては|紅月≪神≫のみぞ知るってね」
『・・・私はあれを神と呼ぶことに抵抗を覚えるのだけれど、ある意味そうね』
「ボクらの生みの親だしね」
『今回はここまで、ね。
この作品では皆さんからの評価や、感想、アドバイスなど、お待ちしております』