第十九話
あの日あの時あの場所であんなことに巻き込まれなかったら知らないままでいたこと
たとえそれが、知らないほうがよかったことなら俺は後悔しただろう
あの日あの時あの場所で彼女と出会わなければ知りえなかったことがある
彼女と引き合わせてくれたことを一体誰に感謝すればいいのだろう
車が急発進する。
俺はその反動で、シートに押し付けられる。
そのまま、女に激突、かと思ったらぐるりとUターンをして後ろの連中の方に向かって突進していった。
後ろのやつらは、Uターンしてくるとは思わなかったのか、思わず道を開ける。
そのまま突き放したかと思いきや、おそらく、女の命令で俺たちを追ってくる。
「ちょ、月華、タンマ、タンマ!!」
「この状況で、何を言ってるんだお前は?」
俺はお前が何でこんな状況にしたのかを知りたいよ!!
でもとりあえずは
「どうやって逃げる気だよ。」
「ふむ、手はあるのだがな・・・。
とりあえず、足元に転がっている袋のものを使ってくれ。」
そう言われて足元を見ると確かに袋が転がっている。
袋を持ち上げて中身を確認する。
・・・
大きく息を吐き、もう一度確認する。
そこには球形をしたピンのついたものがあった。
「これは?」
「見たことないか?手榴弾だ」
再び月華がハンドルを大きく切るが今度はどうにかバランスをとりながら、反論する。
結構なスピードだが、追ってきているやつらにぶつかっている様子はない。
「日本に住む、一般人が本物なんて見たことあるわけないだろうが!!
せいぜい、漫画の世界くらいだ!!」
「あんまり喋っていると舌をかむぞ?とりあえず黙ってピンを抜いて投げ捨てとけ」
無理だ!!いや、使い方は漫画やらで見てるから一応分かるけど、これ兵器だよ?
一般人の俺が、いくら(おそらく)敵とはいっても人に使えるわけないじゃん。
俺が悶々と悩んでいると誰かが袋をひったくっていった。
月華は運転中、俺は袋を持っていた側、だとすると袋を持っていったのは・・・。。
「これ、投げればいいんだよね?」
ユウだった。
ピンも抜かずに、袋をひっくり返して、窓から外に投げる、というよりも落とす。
幸いに、というか俺はそんなものについてなんて詳しく知らないのだが、地面に落ちた衝撃で爆発することも、車がうっかり轢いて爆発することもなかった。
いや、手榴弾って投げて使うものみたいだし爆発しなくて当然なのか。
「月華、このまま直進して!!」
「あ、ああ。」
急なユウからの指示に驚いたのか月華がぎこちなく頷き、直進を続ける。
後ろの追っ手はまっすぐ車を追いかけるようにしてきているので、彼らと、手榴弾をばら撒いた位置が重なる。
どうやら、ピンを抜いていない手榴弾など恐れるに足らずと思ったのだろう。
あるいは見慣れているのか。
手榴弾を見ても、彼らの足取りに迷いはない。
ピンを抜いていないから、爆発はしないのでその辺も分かっているのだろうか。
「バク!!」
ユウが言葉を放つ。
すると、追っ手の移動が止まる。
「バク!!」
もう一度、同じ言葉を言うと、今度は爆発が起きた。
何が起きているのかは分からないがどうやら、手榴弾が爆発したようだ。
どうやってかは分からない。
ユウはふぅ、と後ろを確認すると背もたれにもたれかかった。
追っては一時的にとまっただろうと思い、俺の顔にこれで、一安心だと笑みがこぼれる。
だが、
「ユウ、上に乗ってるというやつらもどうにかできるか?」
そうだ、上にも人がいるのだと、あの女は言っていた。
依然として結界とやらは存在しているらしい、とは言っても俺には分からないんだがね。
月華がそう言ってたんだよ。
上に乗ってるやつが結界張ってるやつだろうって。
そうだとしても上に乗っている人をユウがどうにかできると、月華は思っているのだろうか。
まさか、ユウに上に登ってもらってユウにやっつけてもらうのか?
いや、無理だろうね、てかユウにはあんまり危険なことをしてほしくないし。
さっき、手榴弾をユウがばら撒いた時も心臓が止まるかと思ったよ?
結論、俺は無理だと思
「多分どうにかできると思うよ。」
うけど、そうだよね・・・ってできるんですか、ユウ!!
「思いっきりターンをしてくれたら、その時にでも」
月華は合図をしたら、ターンすると言った。
ユウもそれを了承した。
なんとなく、ユウの雰囲気がいつもと違う気がする。
いつもと違って、なんかこう・・・。
「じゃあ、行くぞ!!」
その合図を受けてユウは車の天井に手を当てる。
「イガミ、ジュウハン」
まるで、これがしっくりきている、というか。
”ユウ”ではないような。
ユウの言葉と、俺が思ったのと、月華が車を大きくターンをさせたのはほぼ同時だった。
俺は今度はドアの方に押し付けられる。
そして、どさっと車から、何かが落ちる音がした。
ターンの衝撃から開放されて後方を確認すると人だったようだ。
ほんとに、人が乗ってたのか・・・。
人が落ちたのを確認すると、月華は再びアクセルを踏んだようで、車がさらに加速する。
そのまま、直進して行った。
今度は誰も追っては来なかった。
『失踪まで投稿とは紅月も末期症状ね』
「あーあれね。通称「めんどくさがり病」」
『まとめて投稿するのはいいけど、もう少し推敲しなさいよ』
「一応してあるよ?紅月自身はどう収拾をつけようか悩んでるみたいだけど」
『ま、いいわ。この物語はすでに終幕に向けて進んでいるもの。』
「紅月も書ききる気だけは十分だからねー。ボクらの出番がなくなる心配をしなくていいってのは安心できるね」
『ええ、そうね。それではまた次回、会いましょう』




