第十六話
あいつが俺から大事なものを奪ったから
俺はあいつを許さない
あいつが俺に言った言葉を、俺は絶対に忘れない
そういうと橘は話し始めた。
「俺たちの高等部卒業の時だ」
俺たちが卒業した学校、というか学園である明神学園は中、高、大からなるもので、高等部卒業時にのみ盛大な卒業式を行う。
理由は高校進学時は持ち上がりだが、大学進学時は明神学園ではない大学に行くやつも多数いるからだ
そして、その卒業式のことだったらしい。
「俺たちが何処かで時間をつぶそうと校門の方で話をしていたら一人の女が現れてな」
ちなみに、校門とは高等部の校門のことである。
バイクで駆けつけたその女はニコニコ笑いながら彼らに近づいてきたらしい。
バイクで現れたことと、その女の見た目のせいで一瞬周りがものすごく静かになったらしい。
で、その女は月華に親しそうに話しかけたらしい。
もともと月華はその日なぜか時間をものすごく気にしていたらしく、その女が来たのを見るとすごいほっとしていた、らしい。
「ものすごく仲がよさそうだったな」
ちなみに月華がつけている赤と、青の石がついたイヤーカフス。
あれはその女が卒業式のときに月華に渡したものらしい。
「そういえば、その話は赤坂君がものすごく怖かったんだよね」
敬語じゃなくなった宮内が話に加わる。
何処となく赤坂の顔が不機嫌になっている気がする。
曰く、その時ちょうど赤坂はトイレに行っていていなかったそうだが戻ってくるなり女に向かって大声で怒鳴ってつかみかかったそうだ。
「あれにはびっくりしたよ、だって」
『何でお前がこんなところにいるんだよ、サジタリウス!!』
そう、怒鳴ったそうだ。
サジタリウス、何年か前に世間をにぎわせたやつで、やっていたことは盗み、詳しいことは忘れた。
「何でそんなことを言ったんだ?」
「あいつは、静音を殺した」
苦虫を噛み潰すようにして言い捨てる赤坂。
サジタリウスが唯一犯した殺人事件が彼の言う『静音』が関わっているらしい。
静音、うわさでは赤坂と当時恋仲だったという女性。
詳しいことは言いたくなさそうなので割愛。
どうやら赤坂はその時にサジタリウスの顔を見ていたらしい。
で、それが
「あの女にそっくりな、というかあの女と同じ顔だったんだよ」
なるほど確かに、愛しい人の仇ともなると激昂せずにはいられないだろう。
ちなみに俺にはそんな経験はない。
愛しい人がいたということも、ない。
悲しきかな、俺の人生。
「そしたら十狩は平然と『俺の彼女がそんなことするはずがないだろう?』って言い切ったからなぁ、あの時以上の驚きにはいまだ会えてないよ」
橘がお茶を飲みながら言う。
へー彼女ですかー・・・。
「って彼女!?」
驚くだろう、そこは!!
だってあいつ彼女いない暦=年齢だって言ってたぞ!!
「で、その彼女が『違うよー、月華はタダの友達』って笑顔で言い切った」
「うわぁ」
「でも、そのあとにね、『月華は大事なパートナー、かな?』とも言っていたの」
タダの友達だけど、大事なパートナーってなんだか矛盾してないか?
で、そのあとはいろいろあったのだが二人のことを詮索したがる彼らをおいて、二人してどこかへ行ってしまったと言うことだそうだ。
「神崎君が何を知りたいのかはなんとなく分かるけど、わたしたちも分からないし、この話で勘弁してくれる?」
確かに、何が知りたいのかはきっと彼らも分かっているのだろう。
とくに宮内。
だって、自分の友人とまったく縁なさそうな知り合いの人が実はその友人と面識があって、しかも友人が知り合いをパシリのように使っているとなると、俺だって何があったか気になる。
だが、ユウを笹田に見せに行ったときの反応を見る限り、笹田は決して教えてはくれないだろうし、月華もなんだかんだ言ってごまかすだろう。
これ以上は分かることは何もないだろうと思い、礼を言うことにする。
「ああ、ありがとう。
ちなみにその女の見た目は?」
月華が嘘とは言え、彼女だといった人間だからどんなのか気になるのはしょうがない。
きっと見目麗しい方だったのだろう。
それこそ、月華にふさわしいような。
「あの時の年齢はあの時の私たちと同じっていうか少し下くらいかな?
見た目は金髪に緑の瞳。
あのまま育ったらものすごい美人になってると思うよ?
あの時も美人さんだったし。
あのころの十狩くんとだと美少女二人に見えたけど、今ならものすごい美男美女のカップルが成立すると思うよ?
でも、性格はちょっと危なかったかも・・・」
あー、そういえば月華があんなにかっこよくなったのって大学生になってからか。
でも、そのころに美少女二人で成立するんだから、あいつの顔ってよほど女顔だったのか。
赤坂に見せてもらった昔の写真(高校のころの)を思い出してみる。
・・・確かにその女の顔は分からないが月華の顔は女装さえきちんとすれば美少女、に見えるだろう。
うん、美少女のインパクトに流されそうになったが、危ない性格って、どんなだ?
社会不適合者か?(犯罪暦的な意味で)
そう言ってしばらく飲み食いしたあと、俺たちは解散した。
帰り際に橘に声をかけられた。
「ああ、そうだ神崎」
「なんだ?橘」
「これは俺の個人的な意見だがな
あまり十狩の昔は詮索しない方がいいぞ?」
「何でだ?」
「なんとなくだ」
勘のいい、というかなんとなく、で何でも分かっているような橘の言葉を聞いて、俺は月華の家へと帰った。
「いやー話の核心?の後編でしたー」
『珍しく前後編に別れたわね。失踪じゃ初めてじゃないの?』
「そうなると思うよ?失踪の方は基本一話完結って言うか、一話につきワンシーンみたいな方針で書いてたからね」
『でも、このあとはワンシーン複数話が増えていくようね』
「そうだね。ここらあたりまでは平凡というか暇してたんだけどね。これは、ボクらの出番は近いってことかな?」
『うーん、多分まだよ。だってこのあと・・・(作者の頭の中のストーリーを説明中)』
「・・・そこまで待つの?」
『あきらめなさい。ね?
この作品では皆さんからの感想、評価、指摘、アドバイスをお待ちしております。お気に入り登録もしてくださるとうれしいわ。』
「あと、アンケートねー。
締め切りはえーと、一月十六日または十七日の失踪投稿時になりました。どしどし回答お待ちしてたりしますんで。
ちなみに内容はキャラ紹介の有無についてです。」