94 パーチメントの招待状
パーチメント家から誕生パーティーの招待状がディオ宛に送られてきたのは当然のことだった。
普段はディオに仕える息子にディオの観察は任せてはいるものの、やはり自分の目でと思っているのは確かである。
それは研究者としてでもあり、専属医としてもだ。
ディオ宛の招待状には整った綺麗な字でシドたちも一緒にと書かれていて、おそらくデイジーが付け足したのだろう。
デイジーも1人で家族からディオを守り切れるとは思っていない。出来れば味方は多い方がいいのだ。
全員参加ということでフランに返事を頼み、カトリーヌのことも使用人経由でデイジーに伝えておいてもらう。
周りに止められることを恐れて、アレックスが1人で話を進めている可能性があるからだ。その場合、アレックスの暴走を放置してしまうことになるので、カトリーヌにトラウマを植え付けかねない。
「まずはアルドの服を買いに行く必要があるな。いつまでもダニエル様のをお借りするわけにもいかない」
「それなら僕に任せて!ついでにみんなのも買いに行こうよ」
「そうだね。意外と流行に明るいから買った方がいいかもね」
あまりパーティーなどに参加しないこともあって、ほとんど流行に乗らない定番ファッションで揃えているのだが、流行に敏い家に行くのならワンポイントくらいはいれる方がいいだろう。
「いつ行く、ディオ様」
「そうだね。シド、予定は?」
「そうだな、明後日くらいにするか」
手帳を開くことなくシドが答える。
「それじゃ、明後日に」
「ああ、わかった。手配しておく」
「うん。よろしく〜」
あまり城の外に出る機会がなかったディオからすると楽しみなことでディオの声は明るい。出かけるとなるとシドたちには迷惑をかけてしまうが、やはり心は浮き足立つ。
「あとやらなきゃいけないことはあったかな?」
「そう、ですね。あるとすれば、アルドさんの指導でしょうか。今回は客人として招かれるので」
ひとつずつ頭の中で確認をしたトリスは、足りないものとしてそれを出した。
今まではディオの付き添いと言う形であり、大人しくしてシドたちの後ろに付いて真似をしながら学んでいればよかったのだが、客人としてだとそうもいかない。
「ああ、それは今日からやるつもりだ。時間もないからな」
「うん。頼むね、シド」
それからディオはシルクに会いに行ってくると部屋を出る。シルクに嫌われてると言うわりには仲はいいようだ。
ひと仕事を終えたシドは、アルドに声をかけて授業を開始する。フランはなにか嫌な予感がしたのかそそくさと部屋を出ようとしてシドに声をかけられる。
「どこ行くんだ、フラン?」
「え、ほら、勉強の邪魔になっちゃうと思って席を外しておこうかなって」
「その必要はないぞ」
シドに首根っこを掴まれたフランはズルズルと引きずられてアルドの隣に座らせられる。
「え、なになに?」
「お前も一緒にやるんだよ。たまにはライバルがいるのも悪くないだろ」
「ほら、僕って1人で黙々とや――」
「アルドにだ」
フランの言葉を遮ったシドは淡々と言ってから、自分にもフランにも弱点になるディオを引き合いに出した。
「使用人の評価は主の評価に直結するが、お前はそれでいいのか」
「それは!ずるいよ、シド!」
普段からあまりマナーなどを覚える気のないフランではあるが、やる気がないわけではないのだ。
友達を支えたい想いと妖精について詳しいからだけで居られる場所でもないこともよく分かっているし、それなりに理解力もある。
ただ、フランの興味からかけ離れているために覚えていられないのだ。
「さ、やるぞ」
「うん」
「はーい」
シドとトリスが勉強を教え始めたのだがディオがシルクを連れて戻ってくると、フランはもうやだぁ〜と駄々をこねていて、呆れながらアルドが励ましていた。
ディオもフランがいないと遠くに出かけられないと応援する。
やる気を見せるも長く続かないフラン。




