91国の歴史と精霊
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「精霊の泉って言うのは……」
部屋に戻る途中で会ったアルフレッドの専属使用人であるティファナが淹れたお茶を飲みながらディオは説明をする。
「城の中にあるんだけど父様、国王の許可がないと行けない場所なんだ」
「大事な場所ってこと?」
ディオは大きく頷く。
「うん。精霊の住処って言われてる場所でね、大昔は
そこから溢れた水がこの国中に流れてたんだって」
「この国中……」
国中に水が流れていたと聞いて、アルドは国の全てが水浸しになっている想像をしてそれは違うと振り払う。
なんとなくアルドの考えに予想がついたのかディオは笑うと、城の庭などにある白い溝があるでしょと言って、そこにかつて水が流れていたのだと説明をする。
「……あの溝そんな意味があったんだ」
「知ってる人も少ないけどね。歴史的価値とかがあるとかでそのままにしてあるみたい」
もう流れることはないから取り壊すと言う話もあったようだが、精霊のことを忘れないように言った意味もあるらしくずっとそのままにしてあるという。
「もう流れることないってどういうこと、ディオが言う信仰心とかが足りないとかじゃなくて?」
「それも理由の1つではあるんだろうけどね、最大の理由は精霊の大樹が切られたことなんだって。だよね、フラン」
そう言ってディオは、ティファナの淹れたお茶に舌鼓を打ちながらポットの茶葉を眺めているフランに確かめる。
フランは同じ茶葉なのに味が違うことで悔しいのか、違いを探しているようだった。
急に話を振られた形になったフランは何の話とディオに聞き返して、ディオはもう一度同じ話をする。
「そうだよ。大樹っていうのは精霊とか妖精の世界とこの世界を繋ぐ役割を持ってるから、それを切り倒されちゃうとエネルギーの流れが滞るみたい」
フランは専門じゃないからそれほど詳しくはないけどと言って続ける。
偶然なのか、大樹が切り倒された影響なのか、大樹が切り倒されたと思われる年から数年間、自然災害が尽きなかったと言う。
それはこの国の歴史から見ても類を見ないほどの災害数で、明らかな異常であり本来なら起こることがないものらしい。
「僕が分かるのはそれくらいかな」
「ありがと、フラン。で、そういうこともあって精霊の泉はほとんど枯れちゃったんだよね」
現在は泉を保護する観点から厳重に管理されているため、気軽には行けない場所になっているとディオ。
「でも人間じゃなくて妖精が申請するならすぐに許可は降りるけどね」
だからといって、精霊の泉に行きたいと言う妖精も少ないらしい。わざわざそこまで行かなくても城内にいれば精霊の意思は分かるからとのことだ。
「シルクは時々行きたがるんだよね。オレもあそこは好きだけどね、なんか懐かしい感じがして」
「ディオ様はそういう感じなんだ。神秘的とかじゃなくて」
「神秘的?」
普通は精霊の泉をみると神秘的に見えるらしいのだが
ディオにとっては違うらしく、それを興味深そうにしたフランはアルドに精霊の泉の様子について説明を始めた。
張り切って教え始めるフランですが、シドとトリスが止めに入りました。




