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80 道中にて

お読みくださりありがとうございます!

 手持ち無沙汰なディオは退屈だと言わんばかりに地面に寝転んだ。


「おい、ディ……」


 いつも通りの注意をしかけて、シドは途中で言葉を止める。

 さすがに商人としての姿ではないし、何よりその関係性は周知されるべきではないので、今は王子という扱いが必須である。

 特にディオの事情を知らない騎士ジェイクがいる前では。


 まあ、今回は代わりがいるのでシドも安心はしているが。


「ディオ兄さん、せめて用意されたマットの上で寝転んでください。それもよくはないですけど」


 呆れたようにディオにいうのはダニエルだ。

 読んでいた本を閉じると、ディオの隣にしゃがんで動く気配のないディオにため息をつく。


 ディオを引きずれるほどの力もないので、動いてくれるのを待つことしかできないのだ。


「こうやってさ、草の上に寝転ぶのも気持ちいいよ。よくシルクとやるんだよね」

「それで城内のあちこちにいるわけですか」


 ダニエルが城までディオに会いに行けば、ディオは自室ではなく城内のどこかにいることが多い。


 大抵はその場所で眠ってしまっていて、シドたちはそのまま寝かしている時もあれば、部屋まで運ぶ時もある。


「ダニエル様、椅子をお持ちいたしました」

「ありがとうございます」


 ナサニエルがディオのそばでしゃがむダニエルのために椅子を持ってくる。

 ダニエルからすれば用意された場所があるのでそちらに行けばいいと思うのだが、ディオはそうでもないらしい。


 足の痺れに負けたダニエルが椅子に座り、その様子にディオは笑い、ナサニエルは痺れたところは軽く叩くと早く治るとダニエルに伝えている。


「ご飯できたよ〜。団長さんとシドは先に食べたからナサニエルさんたちも一緒にどうぞ」

「いえ、私たちが同じ席につくわけには」


 どうやら真面目らしいジェイクは断ろうとするが、ディオは一緒の食卓を囲むことを悪いとは思っていない。


「みんなで食べた方が美味しいし、団長たちもそのつもりだったんじゃない?」


 毒味も兼ねているだろうが、先に食事を済ませたシドたちのことをディオはそう評価する。


 それに料理は冷え切ったものより出来立ての温かい方が美味しい。

 そのことをよく知るディオだからこそ余計にだ。シドも分かっているからこそ気を使ったのだろう。


 それでも躊躇うジェイクはフランが手を引いて巻き込み、すでに用意された食事はアルドから渡された。


 ジェイクをよそにフランはディオより早く食べ始め、アルドもナサニエルも当たり前のようにディオと同じ食卓を囲んでいる。


「ジェイクさん、ディオ様ってこうだから諦めて」

「ちょっと、フラン!」

「ディオ兄さんは誰かと一緒の食事が好きですからね」

「ああ、だからオレたちをいつも巻き込むんだ」


 フランが口を開くと次々と誰かが口を開し、ディオはうーと唸るがディオを分かっているので誰もまともに気にするような人もいない。


 それにしてもこれが王族の食事かと思うと()()騒がしい。

 しかし、正式な食事会ではないことの証拠でもあり、ディオ個人として求めているものなのだろう。


「いつもこうなのか」

「はい。ディオ様は時間の短縮も兼ねていると言われますが、1人での食事の寂しさもよく知っていますから」


 ディオたちをみてジェイクが呟けば、ナサニエルがそうだと小さく笑う。

 ディオの事情のことについては話さないが、それでも十分伝わるだろう。家族が多忙となれば、ディオは1人での食事は常だったろうから。


「ナサニエル、ジェイク。助けて‼︎」


 チクチクと口撃されているディオが騎士たちに助けを求め、ナサニエルが困ったような笑みを浮かべて間に割って入る。


 これがシドだったらディオに味方はいなかった。


「ありがと、ナサニエル」

「ディオ様のお役に立てたのなら光栄です」


 珍しく援護者がいる環境にディオはニコニコとしているが、飴と鞭を兼ね備えたシドはその様子をチラリと見てため息をついた。


「ディオ様は変わらずお元気そうだな。安心した」

「空回りしなきゃいいんですけどね」


 護衛として周囲を警戒しながら隊長とシドも 会話をする。


 楽しそうにしているディオに対して団長が子を見守るような眼差しを向けているのは、ディオを産まれた時から知ってるがゆえだろう。

 シドとはまた違った視線である。


「心配性だな、シドは。はげるぞ」

「不安になるようなこと言わないで下さいよ」


 父が最近薄毛になってきているという話を聞いているシドからすれば少々冗談ではすまないらしい。


 団長は笑って食事を終えたナサニエルたちと護衛を交代すると、食事の後片付けをしてからまたシドが御者を務める馬車を走らせ始めた。


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