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76 城内トラブル!

お読みくださりありがとうございます!

 アレックスが妖精石を調べ終わり正式な鑑定書を受け取ったディオたちは、面倒なことになる前に急いで馬車に乗り込んでパーチメント伯爵家を後にした。


 城に戻ったディオたちは国王であるブルーノに報告をするために移動をしていると遠くから声が聞こてくる。


「だーかーらー、……加減に…………して…………」

「何かトラブルかな、シド」

「首突っ込む必要もないとは思うが、分かった」


 喚いていている様なその声にシドを先頭にしてディオたちは近づく。


 騒いでいるのは元気そうな一人の青年で、口調からは真面目さは感じられない。彼の正面には初老の男が立っていて厳しい顔つきで青年を見ている。

 その男を挟むように若い騎士がおり、二人とも困った顔をしていてどうしていいか分からず動けずにいた。


「どういう状況?」


 アルドが零す。

 シドが動かないところを見るに大きなトラブルではないのだろう。しかし、初めてみる光景にアルドは戸惑いを隠せない。


「大臣と、誰だろ?」


 ディオは自分の記憶にはいない使用人に首を傾げる。ほとんどの使用人はシルクたちを通して把握しているのだが騒ぐ青年は記憶にない。


「あ、ライリーだ。城で働いているとは聞いてたけど、ここだったんだ」

「知り合い?」


 青年はどうやらフランの顔見知りらしく、フランが声をあげてディオが尋ねる。


「うん。ライリーのお父さんとお母さんはうちの使用人だから」

「どっちの?」

「来客用。二人とも元奴隷だよ」


 研究者か一般的な使用人かを聞けば、まともな方だとフランが答える。


「僕は忙しくてあんまり話す機会とかはなかったんだけど、ライリーってわりとなんでも出来るんだよね」


 なんでも両親から様々なことを叩き込まれているらしい。

 元奴隷ということもあり学べる環境化にいるならばと、とにかく自分たちが教えられることはどんどん教えていたようだ。


「まぁ、うちは――」

「クラウディオ様⁉︎ いいところに‼︎ 」

「あ、待て! 」


 フランの台詞を遮るようにライリーがディオの姿を認めて叫び、ディオの前まで駆け寄った。

 シドがディオの前に立ち、ライリーはそこで立ち止まると視線だけはディオの方を向いて助けて下さいと言ってきた。


「相談機関はあるはずだけど、そっちには?」


 ディオは慌てることもなくそう尋ねる。

 使用人たちのための相談機関はそれなりに優秀で、大臣に何かを言うよりもよほど問題解決ができるはずだ。


「言いました。伝えましたけど、一向に改善されないんですよ。俺はただしょっちゅう異動せずに働かせて欲しいだけなんです」

「異動? 」

「そんなにあるものじゃないはずだが」


 ライリーの言葉にディオとシドが顔を見合わせ、そこに大臣がやってくる。


「クラウディオ様、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 ディオに頭を下げてこちらで対処をすると言葉だけの謝罪をする大臣を引き止めるとディオはこの状況についての説明を求めた。


 見られたからには説明をしないわけにはいかないと、大臣はディオ相手に説明をするのはしぶしぶといった風に口を開いた。

 その大臣の様子にシドやライリーを押さえる騎士たちは瞳に嫌悪を宿していたのがアルドには感じられた。


 どうやらライリーは器用貧乏、言い方を変えればわりとなんでも出来るオールマイティらしく、一時的に人手が足りないところにしょっちゅう行かされるということだ。

 異動というと少々語弊もある気がするのだが、毎回所属が変わるため異動でも差し支えがないと言うことらしい。


「ひどいと思いません?」


 大臣が説明を終えるとライリーがディオたちに同意を求めて、ディオは軽く息を吐いた。


「うーん、確かにね。すぐに対処は難しいかもだけど、こっちでも解決策を考えてみる」

「――やった、飛びついて正解だった。信じてますからね、クラウディオ様‼︎」


 騎士とシドに立ちはだかれディオの手は取れないライリーは、ディオの代わりにとシドの手を取って上下に勢い良く振ると用は終わったとばかりにディオたちと大臣に一礼して去っていった。


「ヒューズ。後で今の、ライリーについてまとめたのを持ってきてくれる?」

「はい」


 大臣についていた騎士の一人にディオはそれを頼むとゆっくりでいいからと念を押すようにしてから国王(ブルーノ)の下へ向かった。


「えっと、これが鑑定書になります」


 丁寧な言葉を使おうとして、結局使えずにフランはアレックスから預かった妖精石の鑑定書をブルーノに渡した。


「本物の間違いないと。やはりあの家は妖精に好かれるようだな」

「うん、そうみたい」


 ディオが頷いた。

 妖精石が本物だったことからグレイ伯爵の処遇についても正当な理由となり反論は出ないであろう。

 おとぎ話の中の存在と言われつつも、妖精に対しては畏敬の念を誰もが持つこそ理由としては申し分ない。


「あ、そうだ。ブルーノ様」


 この場に相応しい話し方を早々に諦めたらしいフランは、ブルーノが何かを言う前に口を開いた。

 止めようとしたシドだったが、止めなくていいとブルーノのそばに控えるイアンに視線で止められた。 今同じ部屋にいる人たちであれば問題はないだろうと。


「ディオ様の健康診断もついでにやって異常なしだそうです。ただ、数値が変わってるから経過観察ですけど」

「そうか。生活に困るものではないんだな」

「今のところは」

「ならいいが」


 そう言ってブルーノはディオを見て優しく微笑んだ。健康というだけで安心出来るわけではないが、それでもその瞬間までディオが元気でいてくれるのならとブルーノは親として思っている。


「もう、オレはいつだって元気だからね。心配いらない! 」


 脳裏に浮かぶ不安な幻影を振り払って、ディオは震えを拳を握って押さえ込むと元気のいい声を出して笑う。

 今、この瞬間すら自分がどうなるか分からないから、とにかく虚勢を張って。


 そうだったなとブルーノが言い、ディオが帰ってきたことを聞きつけたジークベルトが急いでやってきた。


 大きなあくびをするディオを見たジークベルトは、ディオを背負うとシドたちを置き去りにしてディオを寝かせるためにディオの部屋に向かっていった。


 ジークベルトの後ろにはバートがいるため、シドたちもそこまで急ぐつもりもない。


「まったく、ジークは……。起こさないとは思うが」

「バートさんがいるので止めるくださるはずです」

「そうだな」


 ジークベルトが出ていった扉を視線を向けた後、ブルーノに引き続きディオを頼むと言われた後で、シドたちもディオの部屋へと戻った。



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