77 処遇とトリスの提案
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妖精石についての報告を終えた翌日、ディオはブルーノから呼び出された。
騒がしいパーチメント家から帰ってきてゆっくりとしたいところだが、どうやらゆっくりとさせてもらえないようだ。
「話って?」
寝起きのディオはまだ少し眠いのかウトウトとして、部屋に着くなりすぐに椅子に倒れこむように座り込んだ。
シドはディオが椅子から落ちないように目を光らせておくようにフランに伝えると、自身はアルドを連れてイアンとレベッカがお茶を淹れているので手伝いに行く。
「ねぇ、シド。雰囲気が穏やかじゃないんだけど」
「そうだな。あの二人は……」
部屋の雰囲気が悪いことにすぐに気がついたアルドはシドに小声で伝えると、シドは分かっていてここに来たらしく特にこれといった変化はない。
そこではどちらがお茶を淹れるかと争っていて、他の使用人たちは余計な口出しをせずに二人のことを見守っている。
だからこそ、シドはディオをフランに任せてここに顔を出したのだ。
「アルドを見学させても構いませんか」
「ええ、もちろんです」
「構いませんよ」
見学の許可を得たシドは茶筒を手を取るとレベッカの方に差し出した。
「初めて挨拶に伺ったときにイアンさんの技術は見せて頂いているので、今回はレベッカさんにお願いしても構いませんか」
一瞬ムッとしたイアンも、それならとシドの発言に納得をしてレベッカにお茶に淹れる役目を渡すと、自身はそのサポートに回る。
他の使用人たちはホッとした様子だ。
動き出せば息のあった連携を見せはじめるイアンとレベッカは、テキパキと準備を進める。
アルドはその様子に呆れながら、シドの解説付きでその様子を眺める。
そうして無事に淹れられたお茶はディオたちの元へ届けられた。
その頃にはディオもしっかりと目覚めていて、商人としてみて来たグレイ伯爵家の様子をフランとともに話していた。
「ふむ、そうか。処遇については伯爵に対してだけで問題なさそうだな」
「そうなの?」
「ええ。あの家ははリサの生家だもの」
グレイ伯爵家の血を引いているのはリサであり、現グレイ伯爵ことフラヴィオは婿養子だ。
そのため、王家を騙したとフラヴィオとその愛人であるベアトリーチェを処罰すればいい。
王家の処遇とは別にエルザは個人的に何かやろうとしているようだったが、ブルーノは常識的な範囲でなら止めるつもりもないようだ。
リサに関しては被害者であり代々妖精に好かれる家なので国としても目の届く範囲にいてもらいたいというのも事実である。
「問題は子供の方か」
「そうね。まずは伯爵と血が繋がっているのかどうか」
貴族の血が流れているかどうかで少女の向かう先は違ってくる。
そのためにも少女のことを調べるようにとブルーノが指示を出そうとしてディオが口を挟んだ。
「あの子は……」
視線を全員から向けられたディオは困った顔をして頭をかいた。
今から自分のやることに多少の後ろめたさもあるけれど、真実を明らかにするばかりが正しいことだとディオは思っていない。
そんなの嫌だと思うほどにディオは見てきている。
おそらくあの父娘に血の繋がりはないと、ディオは妖精伝いでなんとなく分かっている。そして、彼女にとっての日々の暮らしも。
だから、情状酌量の余地もあるとは思う。
「もし、二つの家に断られたら、フォブルの町に。完全にってわけじゃないけど可能性はあるから」
二つの家とはグレイ伯爵家と、フラヴィオの実家である男爵家だ。
ディオの出した答えは、ベアトリーチェの連れ子はグレイ伯爵の子供の可能性があるだった。
フォブルの町とは、ディオが助けたヒタキ男爵家のエルのように行く場所がない下級貴族を集めた小さな町である。
放置しておくにも貴族のプライドを捨てらないものや、再び返り咲こうと暗い道に堕ちていく者もいるので、監視も含めそういう町がつくられている。
また、市井にいきなり放り出されても家の家事などを使用人に任せきりで暮らしてきた彼らにまともに生活が出来ないであろうことは明白なので、そう言った意味合いもある。
そこにアルフレッドが遅れてやってくる。
トリスから近況報告の手紙届いたらしく、ここにくるついでだとアルフレッドが預かってきたという。
「ディオ、トリスから手紙だ」
「ほんと?ありがとアル兄」
受け取ってすぐに封を開けたディオは手紙を読み始める。
トリスらしい癖のない文字で書かれた報告は淡々と現在のグレイ伯爵家の様子が書かれている。
読み進めながらディオは困ったように呟いた。
「問題はない、のかな。トリスらしく効率的だけど」
「どうしたんだ」
シドの問いかけに対してディオは手紙を渡すことで返事とした。
トリスの業務報告の手紙を受け取ったシドが手紙を読み始めると、その横からフランとアルドも手紙を覗き込む。
そこに書かれていたのは、向こうで全体の現場監督を務めているため業務過多になっているので増援を送って欲しいというものだった。
領地経営に関して、ダニエルにまかせることは可能かどうかと書かれている。
「あいつは……だが悪い手じゃない」
「あはは、トリスらしいね」
「笑える話じゃないと思うんだけど」
手紙を読んだ3人はそれぞれに違う反応を見せた。
シドは呆れながらも将来を見据え悪手ではないと、フランはさしたる問題はないと笑う。
そしてアルドは身分の高いダニエルにそんなことをさせていいのかと、割と常識的な反応を見せていてアルフレッドたちはその初々しい様子に微笑んでいた。




