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74 パーチメント家の分類

お読みくださりありがとうございます!

 用意された客室に移動したディオたちは、いつものように一つの部屋に集まっていた。


 まあフラン以外は一つの部屋で寝泊まりするつもりではあるが。

 アルドは別室でもよかったのだが、先ほどのアレックスの様子から一人ではいたくないと同室となった。


 パーチメント家はディオの事情を知っていることもあり比較的安全ではあり、研究者として情報流出など危険から家の警備などは意外にも万全だ。


 しかし、ディオを一人部屋に置く理由にはなりえないのだ。

 彼らはディオを研究対象として見ていて、どこでどう狙っているかは分からない。シドは護衛として離れるわけにはいかなかった。

 たとえ、妖精石の研究に集中していても。


 ディオは眠いといって眠っていて、フランは二人分のお茶を淹れるとアレックスが呼んでいると部屋を出て行き、入れ替わるようにしてデイジーがやって来た。


「アルド様は退屈かも知れないと思いまして」


 そう言ったデイジーは数冊の本を机上に置いた。子供向けの絵本と童話集のようで、フランにも頼まれたらしい。


「あ、ありがとうございます」


 アルド様と呼ばれるのにいまだに慣れないアルドはわずかに顔をしかめながら礼を言って、シドに軽く注意をされる。


「気持ちはわかってしまうし、話も聞いているからアルド君と呼んだ方が良いかしら」

「その方がいいです」


 フランからの手紙でアルドのことも聞いているとデイジーは言う。

 それを知っていて自然体のデイジーはアルドの目には奇異に映ったが、フランもそんな感じだったと思い出す。


 そんなアルドの考えがわかったのかデイジーは優しい笑みを浮かべてアルドに理由を教えてくれる。


「我が家の使用人は奴隷出身者が多いのよ。孤児だった子たちも大勢いるわ」


 パーチメント伯爵家は研究ではなく、研究費を稼ぐ目的で作った商会にそういった人を積極的に雇うことで一定の教育が行き届き、その功績から爵位を賜ったらしい。


「ねぇ、シド。もしかして、ディオのところで働くって言わなかったらさ――」


 パーチメント商会のことにも驚いたが、デイジーの話を聞いて浮かんだのは、ディオについていかなったとしても暮らしていけるようにするといっていたシドの言葉だ。


「ああ。パーチメント商会で働いてもらうつもりだった」

「そうだったんだ」


 そこにフランが戻ってくる。

 なんだか少しやつれていて、使用人に捕まっててとソファにだらしなく倒れ込んだ。

 先ほどの使用人を見る限りはそんなに疲れるようなことをする使用人たちには見えなかったが。


「うちの使用人はざっくり言うと二つに分かれててね。家のこととか来客対応する人と、研究を手伝ってる人がいるんだよね」


 研究を手伝ってる使用人は、妖精などの話を聞いているうちに自身も妖精についてのめりこんでしまいそうなったらしい。

 考察の幅が広がると当主たちは歓迎しており、パーチメント家の伝統ともいえるものだ。

 そのせいか、奴隷としての年数を過ぎてもそのままこの家で働いている人も多いようだ。


「だから、なにかあった時は来客対応の人たちに言えばいいよ。顔がいい人を選べば大抵そうだから」


 家の人間がわりと自由なために、相手を不快にさせることも多く、せめて使用人だけでもと昔の執事がそうしたらしく、今も続いているという。


「おはよ〜」


 いつの間にか目を覚ましていたディオの明るい声が部屋に響き、全員がディオの方を向いた。


 フランはディオに飲み物を用意する前に忘れないうちにと自分の用件を伝える。


「あ、ディオ様、ご飯の後で父さんが一度診たいから呼んでって」

「え〜、フランがやってるからいいと思うんだけど」


 嫌そうな顔をするディオだが、フランを首を横に振り、デイジーも声には出さずにフランを賛成している。シドは自分の分野ではないので口出しせず見守っていた。


「僕は本職じゃないから。それに一年以上診てもらってないからちゃんと診てもらった方がいいよ」

「はーい。フランが妖精側だったら楽になるのに」

「残念だけど、僕は薬学の方だから。片足は突っ込んでるけどね」


 二人の会話にイマイチ理解ができていないアルドにシドがお茶を淹れなおしながら解説をしてくれる。


 どうやらパーチメント家で二つに分かれているのは使用人だけではないようで――パーチメント家では研究者と言っても妖精と薬学で二つに分かれているらしい。


 フランは薬学専門ではあるのだが、ディオに仕えるにあたり妖精のこともある程度叩き込まれているという。


「だから問題ないと思うんだけどね」


 シドとアルドの会話が聞こえていたらしいディオがそう零すが、フランははっきりとそれはできないと言い切った。


「僕は妖精に関して全部勉強してるわけじゃないから。それに医者なのは父さんだけだから無理だよ」

「はーい。まぁ医者としては真面目だからいいけど」


 面倒そうに返事をしたディオはベッドから下りて、お茶を一気に飲み干した。


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