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57 実際はゲストなんだけどね

お読みくださりありがとうございます!

 シルクに協力を仰いだ翌日――。


 ディオはジークベルトの相手をトリスとフランに押し付け――頼んでシドとアルドだけを連れて公爵家に向かった。

 ディオの会開催を知らせるためだ。


 ジークベルトの専属たちも彼の性格はよく知っていても、()()()()()()()()のはバートとイアナくらいなので、ディオもそれを考慮したらしい。

 シドやフランなど遠慮がなさすぎる関係性も珍しい。


「ディオ、よくきてくれたな」

「ゆっくりしていって下さいね」


 公爵家にディオが訪れると公爵夫妻は大歓迎で迎えてくれた。


「今日はディオの会を開くから、それを伝えにきたんだ」

「ふむ、ダニエルも呼ぼうか」


 公爵が近くにいる使用人にダニエルを呼んでもらおうとしていると、ディオはそれを止める。


「――ダニーはちょっと待って」

「何かあるのか?」


 ディオは一度大きく頷くと、グレイ伯爵家について知っているかと訊ねた。


「グレイ伯爵家についてはおじさんたちも聞いているよね」

「ああ。家に上げた愛人がのさばっているというものだろう」


 端的に言ってしまえばそうだ。否定のしようもない。


 公爵がグレイ伯爵家の現状について知っていたので、ディオはそのまま話を進めた。


「それで、カトリーヌをしっかり分かってる母様たちに確かめてもらうっていうのが一つ」

「なるほど。二つ目は?」


 ダニエルにこの場に呼べない理由にならないと、公爵はディオの会の他の目的についてを訊ねる。


「本人だってことは目星がついてるから、ダニエルとカトリーヌの顔合わせをって思ってるんだけど……」


 ディオの声がだんだんと小さくなっていく。

 勝手なことをしていると考えなくもないが、会う機会を設けないと永遠に出会わない気すらしてしまうので仕方がない。


 元々、この婚約の話自体は持ち上がっていたらしいので公爵夫妻も知っていたはずなのだが、ありがた迷惑なのではとディオはやっていいことなのか自信がなく公爵からそっと視線を逸らした。


「ほお、それはいい考えだ」

「ええ、その様子次第で話を決めましょうか」


 公爵夫妻は楽しそうに笑って、ディオの案に賛同した。


「いいの?お節介かと思ってるんだけど」

「もちろんですわ。放っていたらきっと会うことなんてありませんもの」

「それなら確実に2人が出会うこともできる」


 不安は杞憂に終わり、ディオは胸をなでおろす。

 というか、公爵たちがノリノリすぎてダニエルが心配になったのだが、ディオもダニエルに関しては何かを言うつもりもないようでそのままにしておく。


「上手くいくといいわね」

「それでカトリーヌを連れ出すのはどうする?」

「シルクがいるから大丈夫。この前のパーティーで見せてるからね」


 カトリーヌを連れ出すための方法を聞いて納得をして公爵は、ディオの会の日のために予定を空けておかなくては仕事にやる気を見せた。


 ディオがダニエルの部屋に向かおうと客間を出ようとして、引き止めたシドは公爵に何かを話し、公爵はそれを了承していた。


 ダニエルに部屋に行き、久しぶりの再会に喜ぶダニエルに開口一番にディオの会に参加してほしい言う。


「来月、ディオの会開くからダニーを誘いにきた」

「今度は誰を呼ぶんですか」


 おそらくだがゲストを呼ぶのだろうと考えたダニエルはすぐに参加を決めずにゲストについてを訊ねる。

 どうやらゲストによって参加するかを決める予定らしく、まさか自分がゲストにされているとは露とも思っていない。


「カトリーヌ・メル・グレイ」

「行きませんよ」


 その名前は聞きたくないとでもいう風に即答でダニエルは断る。

 彼女はあまりにもダニエルの常識から外れていて、扱いに困る。そんな人をゲストにするなんてディオは何をしようとしているのかとダニエルは思ってしまう。


 ダニエルの考えを無視したようにディオはそのまま続けて喋る。


「本物のカトリーヌ・メル・グレイ。まあ、確かめてもらうのが今回の趣旨なんだけど」

「まだ何かをあるんですか」


 本物のというは気にかかるが、ひとまず続きがあるようなのでダニエルは続きを促した。


「彼女、妖精に好かれてるからさ、妖精の声を聞くのはオレよりダニーの方が得意でしょ」

「妖精の声を聞くのならディオ兄さんだけで事足りる気がしますけど」


 確かにダニエルは妖精の声はしっかりと聞き取れる。代わりに姿についてそれほどよく視ることは出来ない。


 ディオとの差がどれほどなのかは分からないがディオも妖精の声はハッキリと聞き取れていたはずだ。


「そうでもないよ」

「え?でも、昔――」


 ダニエルが何かを言いかけて、ディオはそれを被せるようにして遮った。


「声を聞くのは昔から苦手だよ。ダニーが一番聞き取れるんじゃないかな」


 ジークベルトは妖精の姿がぼんやりとしか視えず、陛下と公爵は姿がジークベルトよりしっかり視えるだけ声は聞こえないらしい。

 アルフレッドはハッキリと妖精が視えていて、声については聞こえてはいるがなにを言っているのかまでは分からないという。


 ディオは両手を胸の前で合わせると上目遣いでダニエルを見た。


「だから、お願い。限られた人しかこないから、ダニーの負担も少ないでしょ」


 それ以上なにも言わず、ディオはダニエルの返事を待った。


「まあ、そうですね」

「頼んだ、ダニー」


 トドメのもう一押しをダニエルにディオは言って、頼りにしていると笑って訴えた。


 すると、ダニエルはそっと息を吐いて拗ねたようにもらす。


「ディオ兄さんはズルいです」


 なんだかんだ結局はディオの話を断ることは出来ずにいて、いつもディオの思惑通りというか手のひらで転がされてる感じがしてならない。


 言葉の意味を図りかねて一瞬キョトンとしたディオは、それを褒め言葉と受け取り照れるとダニエルにお礼を言う。

 後ろで聞いていたシドは呆れた顔をしていたが。


「それで、どうやって連れて……もしかして、シルクですか」

「当たり。シルクなら見分けがつくからね」


 ダニエルが予測を口にして正解だと笑うディオは、自身のポケットを開けるとシルクを()()()()()()


 のほほんと言ってのけるディオとは対照的にダニエルは顔をひきつらせて二の句が告げないようだったが、わずかな時間をおいてディオに突っ込む。


「……ちょっと、妖精をポケットに押し込まないで下さい。精霊の使いですよ⁈」

「シルクとは一心同体?特別だから、大丈夫」


 建国に大きく携わる精霊とその使いとして存在をする妖精は、人間より遥かに高位の存在のはずで……。


 本来、神聖なものとして扱うべき存在なのだが、ディオは妖精との関わりが大きいからなのか時折妖精に対しての扱いが雑すぎることがある。


 ダニエルは大きなため息をつくとディオに説教を始め、ディオはシドとアルドに助けを求める視線を向けるが救いの手は差し伸べられなかった。


 妖精のことに関しては視えないのでシドもあまりとやかく言うつもりもないらしく、大人しく歳下(ダニエル)の説教を受けてもらうことにする。

 まぁ、ポケットに押し込んで連れ行くのはどうかとは思うが。前回と違いふたがあったあたり、生き物を入れるべきではないとは思う。


 ダニエルの説教はディオが眠気に負けるまで続くのだった。

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