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52 雑務の一つ

お読みくださりありがとうございます!

 グリヴェールで一泊したあと、ディオたちは数日をかけてベゴニアという大きな町へと向かった。


 ディオが町の中を歩きたいと言うので、馬車を宿においてから散策をする。

 馬車の中でディオは寝ていたこともあり、次に寝るまでにまだ時間があるのでシドもディオの提案に乗った。

 それにまだ陽は高く、時間もある。


 行きたいところがあるわけでもなく、ただ単純に町の様子を実際に歩いて感じたいのだろう。

 気になるところがあった声をかけるから適当に歩いてくれていいとディオが言って散策が始まる。


 先頭を歩くのはシドで、その後ろにディオとアルド、最後尾はフランとトリスだ。


 王子という立場のディオは先頭も最後尾も歩くわけにいかず、アルドもトラブルが起きた時あまり役に立たないため真ん中だ。アルドは戦う力もない普通の子供なのでその方が安全というのもある。


 護衛という立場を持つシドとトリスがディオを前後で挟んで歩くのは当たり前で、フランは医者のような立ち位置のためにディオの変化にいち早く気がつけるようディオの後ろを歩いている。


 この町は碁盤目状に整備されているので、シドはその中の一つを一周する予定にして歩くことにする。

 おそらくゆっくり見て回ることになるので1時間くらいはかかるだろう。


「迷子になりにくそうな町だね」

「ね、最初の場所さえ覚えてれば」


 ディオが言って、フランは同意をするがフランの場合スタートの位置すら覚えず迷子になりそうである。

 区画ごとに地面の色は変わっているが、建物にそう大きな違いがあるわけではないので、()()()()()()()が広がっている。


 本人も自覚があるからこそあんな言い方なのだろうけど、自覚があるならもう少し注意をして欲しいものである。


「そういえばシド、ここってなんか見覚えある気がするんだけど気のせい?」


 半分ほど回った頃、ディオはシドに尋ねた。

 あまりに朧げな記憶は気のせいだと言われてしまえばそうだと信じてしまいそうなほどだ。


 だから、使用人として一番付き合いの長いシドに聞いた。


「あー、一度来たことはあるな。マルティナ様との食事会の会場になってからな」

「ティナ姉の?今度帰ったときにでも聞いてみようっと」


 きっと笑い話として話してくれるだろう。

 ディオはなるほどと納得をして散策に戻る。


 一つの区画を一周して宿に戻ると、食事は部屋に運んでもらい、食事を終えると一度ディオは眠りについた。


 使った食器類を片付けたシドは机の上にペンと便箋を置き何かを書き始め、トリスは今後の予定についての確認をしている。

 フランは薬作りの道具が手元にないため、ノートを開いてディオの方をチラチラと見ていた。


 商売をしていない時でもやることは多いらしい。


 やることもなく退屈なアルドは大人しく椅子に座ってシドたちを眺めていた。


 正式にディオの使用人の一員になったと言ってもやっていることは今まで変わらず、シドたちがやっていることの邪魔になることはしないように努める。

 ただただ退屈な時間だ。


 手を止めたシドはしばらく悩んでからアルドに声をかけた。


「アルド、昨日おとといの寝る前のディオの様子はどうだった?」

「え?別にいつも通りだと思うけど……」


 急に話を振られてアルドはちょっとだけ戸惑うが、ディオにおかしな点はなかったと答える。


「そうか。後は今日の散策についてだけ書くか」


 シドはペンを紙につける直前で書くのを止めると、アルドに向かって言う。


「今日の散策、アルドから見てディオの様子を教えてくれ」


 唐突な質問に顔を顰めるアルドに、シドはすまんと軽く笑って書きかけの手紙をアルドに見えるように持ち上げた。


「これはアルフレッド様たち、ディオの家族に宛てた手紙だ。ディオの様子を書いた、日記に近い」


 ディオが家を出るときに出された条件の一つで、最低でも2、3週間に一度送らなければならないらしい。

 これは本人が書いてもいいような気がするのだが、ディオ本人が書くと時に嘘を書く可能性の考慮され、シドたちが当番制でやっていると言う。

 もっとも、シドたちは陛下たちに嘘をつくことはなくても、言わないということはあるのだが。


「そのうちアルドにも任せるからな。これ自体はアルドでも出来る仕事だからな」


 文字を一通り覚えたアルドなら出来ると、近々アルドにもやってもらうつもりらしく、今後は少しずつディオの様子について尋ねていくと言う。


「なんか、大変そうだけど。やるしかないんだよね」

「まぁそうだな。旅に出てなくてもやってたことだ。内容と提出先は違っていたが」


 そう言ったシドはアルドが話し始めた内容を手紙に書いていく。

 まだしっかりとした役割もなく、ディオのそばにいるアルドは子供の視点と合わせて、シドたちでは気づかないようなことも気がついている時もあるようだ。


「こんな感じだとおもう。これでいい?」

「ああ、ありがとう。俺たちじゃ気づかないようなこともあって助かった」


 シドは手紙を書き終えるとインクが乾くのを待ってから便箋を折って封筒に入れると封をした。


 それを眺めていたアルドはなんだかスッキリしない顔をしていて、そのことに気がついたトリスが声をかけた。


「どうかされましたか、アルドさん」

「んー、いや過保護だっけ?そう思っただけ」


 もちろんディオが王子で、いくら評判が悪いとは言ってもこうして城を出てあちこちを回っているだからとも思うのだが、ディオの兄弟を見る限りそれだけではない気もしてくる。


「ディオ様はまた特殊な方ですから。ジーク様に限らずアルフ様も溺愛しているのは否めませんが」

「世間じゃあれだけど、ディオ様って結構愛されてるからね。それに身体のこともあるし」


 すぐに寝てしまうことを言っているのだろう。

 シドはエネルギーが有り余ってると言っていだが、その辺りは普通の人と違うところのようなので理由の一つなのかもしれない。


「そっか」


 アルドはトリスとフランの言葉に納得すると、ディオを見た。


 多分、シドたちよりも、ディオのことの方が色々と知っているような気がするのに、どれだけディオのことを知っても謎が増えていくばかりでまるで中身が見えない。


 アルドの視線の先にいるディオは寝相が悪いわけでもなく仰向けで眠っていた。

フランはおそらく迷子になります。

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