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22 花かんむりの

お読みくださり、ありがとうございます!

 次の村までは数日かかることもあり、今日は野営をするために日の高いうち馬車を止める。


 野営の準備さえ出来ればしばらくやることもなく、各自自由時間を過ごしている。


「こうやって巻いていくんだよ」

「なるほど」


 フランは二本の花の茎を手に取りクロスさせると横にした茎を縦の茎にくるりと回す。


 同じように花を二本持ったディオと、ディオと巻き込まれる形のアルドはフランの真似をする。


 先の2本を揃えて3本目をクロスさせるとフランはまたくるりと回し、それを見ながらディオとアルドはフランと同じようにしていく。


 それを何度も繰り返して輪っかを作っていく。どうやら花冠の製作中らしい。


 フランに教わり感心しながら編んでいくディオとは違い、あまりやる気はなさそうだが作っていくアルドは何の役に立つんだという顔をしている。


 なんで作りかたを知っているのかと疑問に思っていたアルドは表情に出ていたのかフランはクスリと笑った。


「妹たちに付き合って一緒に作ってたからね。トゲのある花で作れって言われた時は大変だった」

「確か微弱な毒のやつもなかった?」

「あー、あったあった」


 ディオの言葉に懐かしいと笑うフランは、後で家族に怒られたと言い、乾燥させたそれを薬作りの練習に使ったとしみじみと呟く。


 少し引いているアルドは一瞬自分の手元にある花を見るが、ディオは毒はないものだから安心していいと言った。


 それから時間をかけてゆっくりと編んでいき、花冠を完成させると飾る場所もないので輪投げの輪っかにして遊び始める。


 夕食のおかずに賭けにしようかとフランは言いかけたが、そばにトリスにいることと食事を渡しているところをシドに見られたらどうなるか怖いので純粋に遊ぶだけとなった。


 ディオたちの様子と周りの様子を気にしながら、トリスはディオのたちのそばで刺繍をしていて、お手本とハンカチと見比べては首を傾げていた。

 刺繍は乙女の嗜みではあるのでこうして手の空いている時に練習をしているのだ。


 お手本のハンカチは凛々しく勇敢そうな鶏の刺繍がされていて、ぴんと立ったトサカと強そうな目つきが印象的だ。


 一方、トリスの刺繍はかろうじて生き物なのだろうといった白い塊がハンカチの中で主張しているが、鶏と汲み取ってもらえるかは怪しいところだ。


 ため息をついたトリスは、ハンカチを膝の上に置くとディオたちの方を視線を向ける。


 花冠は上手く出来たようで一度だけ頭に乗せて、フランが持ってきた小物を離れた地面に置くと花冠を投げ始める。

 着飾って遊ぶ本来の用途とは違う輪投げにして遊び始めている。


 それを見てやる気が削がれたと刺繍セットを片付けたトリスは、時間をかけて料理を作ることにして馬車に向かった。


 馬車のすぐそばではシドが馬に丁寧にブラッシングをして日頃の苦労を労っていた。

 日頃からやる気に満ちている馬たちではあるが、やはり休める時はしっかり休んでいてもらいたい。


 手のかかる問題児たちと違って馬たちには感謝しかなく、この時間はシドにとってゆったりとした至福のひとときだ。


 トリスはその様子を見てから、食材ではなく弓矢を取り出すとシドの元に向かった。


「兄さん、すぐ戻ってきます」

「わかった。気をつけて行ってこい」

「はい」


 馬をひとなでしたシドは、トリスが食材を取りに行くつもりだと分かり、ディオたちの方に向かった。


 すぐに料理を作れるようにだけしておこうと準備をしているシドにディオは花冠を乗せる。


「シドには似合わないね」

「やっぱりシドには冠より鉄仮面の方がいいか」


 好き勝手な感想を言うディオとフランにため息をついて、シドは自分の頭に乗せられた花冠をディオの頭に乗せ返した。


「冠ならお前だろ」

「オレにはこれくらいがちょうどいいか」


 そう言って笑うディオにシドはなにも言わず息を吐き、トリスが戻ってくるまでにスープを作り始めることにする。

 フランを手伝わせるシドに、ディオはオレも手伝うと名乗りを上げたが拒否をされ、シドは調理器具をディオが触らないようにとアルドに見張りをさせることにした。


 ぶーたれるディオは凹むわけでもなく馬車からお菓子を運んでくると、料理中のシドたちを眺めながらもそもそとお菓子を食べ始める。

 アルドにも進めていたが、あまり食べすぎると食事が入らなくなると注意をされていた。

 その様子にしょげるディオとは違いシドは助かると言った顔をしていた。


 戻ってきたトリスの手には二羽のウサギが握られていて、フランはそれを嬉々として受け取ると慣れた手つきでさばいていく。


 アルドはフランの近くまで寄るとそれを観察していて、時折フランがやり方を教えていた。


 辺りが完全に暗くなる前に少し早めの夕食を食べると、ディオは眠いと馬車の中に入っていった。


 ディオを見送った後、トリスが口を開いた。


「もうすぐ建国祭ですが今年は何を作りましょうか」

「オレに気にせず豪華にしてってディオ様はいうけど、そんな気にならないからね」


 毎年この日の前後にディオが体調を崩すのはわかっているのでディオの体調に合うものを出したいのだが、町や村から離れておく予定なので必要なものは事前に買い揃えておく必要がある。

 

「そうだな、今年は――」


 悩んだようにシドは言ってからアルドの方に視線を向ける。


「食べたいものはあるか?もしあったら次の場所を出るまでに教えてくれ」


 シドの言葉にトリスとフランは顔を見合わせて笑う。

 今年はちょっとだけ楽しい建国祭の日になりそうだと思うのだった。

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