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魔術の師匠はフリーター  作者: 五木倉人
決戦、ヒュグロンギルド
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狂気の狂喜

こんにちは、サラ・ミディアムスです。


ヴェルキンゲトリクスに攫われてしまった私ですが、あの後どこかの建物につれてこられたみたいです。


窓からはアヴェントの町並みが見えるので、きっとヒュグロンギルドの本部なんだと思います。


……ここならきっと、皆すぐに助けに来てくれるはずです。


特に何かされるような様子もなさそうですし、しばらくは皆の助けを待とうと思います。


思う……んですが。


「アアアァァァァァ!! 美しい……美しい美しい美しい! とても……とても綺麗な色をしてる……ああ、私のものに、私のものに……!! 私のものに!」


……前言撤回、今にも何かされそうです。


「あ、あの……」


「んん? 何? 何何何??? 何でも言ってごらん? 私がなんでもしてあげるからね? 好きなだけ可愛がってあげるからね???? ほらほらほらほら、言ってごらん?」


「……や、やっぱりなんでもないです」


「照れなくてもいいのにぃぃ! ああ、でもやっぱり美しいぃ……」


この、明らかに様子がおかしい人はノゼル・リケイド。どうやらこの人がヒュグロンのマスターらしい。


気絶していた私が目を覚ますと、牢屋に入れられたり監禁されるわけでもなく、この人の部屋にいた。


……いや、この状況、ある意味監禁されているようなものなのかな。


「あっはぁ……あなた、本当に綺麗な色をしているわ……ねえ、私のモノになって? 私のモノにするからね?? 良いわよね?? ありがとお!」


そういってノゼルは私を思い切り抱きしめた。力が強すぎて、少し痛い。


この人はなぜこんなに私を可愛がる(?)のかな。綺麗な色……とは、もしかして私の属性のこと?


混じりけのない、純粋な白属性。他の属性が少しも混ざっていないという、私の属性。


この人は、それに惹かれているとでも言うのだろうか。


「マスター」


私がノゼルさんにもみくちゃにされているところに、誰かがやってきた。


落ち着いた、低い声。来訪者は私を攫った張本人であるヴェルキンゲトリクスだった。機巧士(マシニスト)は正式にヒュグロンに所属してはいないらしいのだけれど、今はここに留まっているらしい。


「あぁん?」


ヴェルキンゲトリクスに対し、ノゼルさんは不機嫌そうに返事をした。


一瞬でさっきまでの小動物を愛でるような表情とはかけ離れた、恐ろしい顔に変貌する。


「邪魔をしたか?」


「五月蠅いね、一体何の用?」


「来たぞ、黒の魔術師たちだ」


「……! イブリスさんたちが!」


やっぱり皆来てくれたんだ。とてもいい状況とは言えないけれど、嬉しくて思わず顔が綻ぶ。


「全く仲間想いなやつらだな。敵の本陣に迷わず飛び込んでくるとは。全くの無謀としか言いようがないが」


「おい、お前にこの子と話す許可を出した覚えはないよ!」


ノゼルさんが私を自分の体の後ろに隠す。無理矢理身体を動かされるのは少し痛い。


「来たならさっさと追い払ってきなさい! そんなくだらない報告で私のサラちゃんの時間を邪魔するなんて……!」


「はぁ……悪かったな」


ヴェルキンゲトリクスはため息をついて部屋の出口に向かう。あの人も流石にこのノゼルさんの様子にはうんざりしているようだ。敵ながら少しだけ同情を抱く。


「……マスター、本当に良かったのか?」


部屋を出る直前、ヴェルキンゲトリクスが質問を投げかけた。


「ああ? 何だい一体」


「あんたの指示でそいつをこの場所に連れてきたが……顔を合わせてから明らかに様子がおかしいだろう」


「何を言ってる、私は何もおかしくない!! さっさと行ってきな!」


「……そうか、なら俺から言う事は全くない」


そう言い残してヴェルキンゲトリクスは出ていってしまった。


……なんだろう、彼から何か、悲し気な雰囲気が見えたよう気がする。


「さぁ~サラちゃん? 邪魔者は消えたからまた可愛がってあげるからねぇ~? はぁ、綺麗な色……」


……そんなことを気にしている余裕は私にはなさそうだけれど。


お願い、イブリスさん……早く助けに来て!


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