幕間:3
「……」
"機関"本部の地下。故ノゼル・リケイドが捕らえられていた牢獄に、黄金色の髪をした男――"剣聖"ラディス・フェイカーの姿があった。
ノゼルの死から一週間と数日。それなりの時間が経っているにも関わらず、黒い魔力の痕跡はまだ色濃く残っている。
「――確かに」
ラディスは、その魔力の中で一人呟いた。
議会でアリムが話したとおり、確かにこの中には青の魔力の痕跡が混ざっているようだ。ただし、黒の魔力に邪魔をされてしっかりと感じ取ることはできない。ただ、漠然と"ある"と言う感覚がするだけである。
どうやら個人の特定はできない。これも、アリムが話していたとおりだ。
青属性の魔力を持つ、人間の裏切り者……その糸口は、未だに掴めていない。
ラディスは魔力の確認を終えると、ただ、何をするわけでもなく、その場を立ち去ろうとする。
「はぁい、元気かしら? "剣聖"サマ?」
――そんな彼を、呼び止める声が、牢獄内に響いた。
「……イーグル・アイ」
ラディスは振り返り、その声の主の名を呼んだ。
「何故……この場に入ってこられたのですか?」
糸目を細く見開き、イーグル・アイへ鋭い視線が送られる。
ついさっきまで、ここには確かにラディス一人だった。出入り口はひとつ。イーグル・アイは……どうやってこの場に入ってきた?
「あら、わかっているくせに。ここ、まだ使えるのよ? まあ、普段はあえて使うこともないのだけれど」
イーグル・アイの言葉と共に、黒と青の魔力がゆれる。
ここのポータルは、まだ繋がっているということか。
「ちなみに、私だけじゃあないわよ? ねえ、ルフ?」
「†残されしは我等の元へ通ずる道のみ†」
ラディスの背後、イーグル・アイと挟み撃ちになる形で、もう一人の悪魔が既に現れていた。
全身黒ずくめ。長い前髪で左目を隠し、その髪を掻き分けて禍々しい角が生えている。
その特徴は紛れもなく……『カルテット』が一人、ルフ・ザ・ロックであった。
前にはイーグル・アイ、後ろにはルフ・ザ・ロック。完全なる挟み撃ち、四面楚歌、逃げ場なし。
「さあ、剣聖サマ……一緒に、来てくれるわよね?」
イーグル・アイが妖艶な笑みを浮かべて、そう言った。





