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【44】 おっ! 第7レースやっぱり『1-2』か……

レース場での観戦が初めての客(初客)が場内にやってきた。普段はケーブルテレビでレースを観ていた男だ。

初めて見る本場の迫力に興奮しながら、水面を走るボートを見つめるやいなや声を張り上げた。


初客「おっ! 第7レース『1-2』! 吉川、乙川の順で走ってるぞ!」

艇の横に大きく書かれたネームプレートを見ながら叫ぶ。

初客「くっそーっ! 1-2でカチカチだったか! もうちょっと早く着いてりゃ買えたのになぁ」


初客は買ったばかりの専門紙を握りしめ、悔しそうにつぶやく。


初客「そうだよな、やっぱ1枠の吉川で決まりだよな。うわー、ショック!!」


それを見ていた隣の常連客が、申し訳なさそうに声をかけた。


常連「ショックのところ大変申し訳ないのですが……」


初客がムッとした顔で振り返る。


初客「ああん? なんだい?」

常連「これ、周回展示ですよ」


初客「えっ……!!! ……ははははは! そうかいそうだよなぁ! ははは、1着から6着までやけに離れてると思ったんだよ! ははははは!」

さっきまでの不機嫌さが嘘のように、初客は大声で笑い飛ばしてごまかした。


常連(笑いで自分の無知を塗りつぶそうとしておる……)


初客「いやいや、これはお恥ずかしい」

常連「いいえ、私も昔、まったく同じ勘違いをしましたから」

常連客は心が広い。

初客「そうかい。そう言ってくれると助かるねぇ。フォローしてくれてありがとよ!」


初客がそう言った、まさにその瞬間だった。水面で――


爽香「あっ!!!」

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