【39】 さっきの人が舟券師だよ
数分後。
思い思いの舟券を買った二人が戻ってきた。
金子「あれっ? さっきの人、いないな」
すると、近くにいた老人が声をひそめて言った。
老人「あの人は別の場所へ移動しましたよ」
金子「えっ? 俺たち嫌われちゃったかな?」
老人「いや、一人になりたかったんでしょう」
金子「そうなんだ」
老人「あの人、本人は口にしませんがね……たぶん、これ(ボートレース)だけで食ってる人ですよ」
金子「えっ!?」
栗原「えっ!?」
金子「本当かいそれ!? ってことは……」
老人「ええ、あんた方が噂していた『舟券師』でしょうねぇ」
栗原「嘘だろっ!?」
金子「ははははは!」
栗原「……」
金子「おじさん、なんでそう思うんだい?」
老人「私も隠居暮らしでヒマだからね、連日ここに来るんだが、あの人は必ず同じ場所に立っているんだ」
金子「へぇ、いつもいるんだ」
老人「うん。で、勝負するのは一日一レースか二レースだけ」
金子「ああ、本人もそう言ってた!」
老人「それで帰りは大金を持って帰るんだ」
金子「えーっ!?」
栗原「なんでそんなこと知ってるんだい?」
老人「恥ずかしい話だがね、あの人はめったにそこから動かん。だから動きを見せると、私、こっそり後ろをつけるんだよ。気付かれないようにね」
金子「ほうほう」
老人「どんな舟券を買ってるのか知りたいじゃないか」
金子「そりゃそうだ」
栗原「知りたいねぇ」




