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【30】 『勇気』と『無謀』は紙一重
選手宿舎の食堂。夕食時、田並浩次と速水爽香がいつも通り並んで座っていた。田並が今日のレースについて静かに口を開く。
田並「やはり5コースから行くのは難しいな」
爽香「先輩のようなベテランでも、1マークは突っ込んでいかないのですか?」
田並「車で言えば、横殴りの雨の中、交差点をかなりのスピードでノーブレーキで通り抜けるようなもんだからね」
爽香「うんうん。先輩でも突っ込んで行く勇気はないですか?」
田並「『勇気』と『無謀』は紙一重だからな」
爽香「……」
田並「艇と艇の間を確実に通り抜けないと、大ケガにつながるからね」
爽香「うんうん」
田並「イチかバチか、みたいなレースは出来ないよ。競争相手にも迷惑をかけるしな」
爽香「そうですよね……」
田並「1マークへ突っ込むには、それ相応の技術力と判断力がないとダメなんだ」
爽香「……」
爽香は静かに頷いた。
爽香(もっともっと練習しないと……)
胸の奥で、小さく、けれど固く誓った。




