【29】 女子レーサーが2着
スタンドでは――。
初客「当たった、当たった!」
常連「良かったですね」
初客「あんたのお陰だよ。あんたに言われなければ『4号艇の高足淳子』は、完全に見送っていたな」
常連「そうですか?」
初客「どうも女性ってのは信用できなくてねぇ」
常連「何か女性に痛い目に遭わされたことでも?」
初客「妻にも娘にも。取引先の女性に、町会の女性。銀行の女性に生命保険の女性。キャバクラ嬢にソープ嬢……挙げたらキリがないよ」
常連「ははははは。それは人間不信になりますね」
初客「でしょう?」
常連「でも前半のレースで、よく『6号艇の速水爽香』を買いましたね」
初客「うん、迷ったんだけどね。20歳の娘なら純心だろうし、顔写真を見ても純朴そうだった。私のハートもジュンジュンしてきて、ときめいたんだよ」
常連「ははははは。女性に痛い目に遭わされた割には、今も女性が好きなんですね」
初客「いやいや。女子レーサーが20歳だったからだよ。人間、男も女も歳を重ねたら、ただ恐ろしいだけだ」
常連「ははははは」
初客「でも驚いたね。この『2-4』が一番人気で、配当が390円とは。みんなちゃんと選手分析してるんだなぁ~」
常連「そうですね。ネットやテレビでの観戦を含め、観客は選手を良く見てますよ。当てようと必死ですからね」
初客「それに比べたら、私なんかカモネギなんだろうな。競艇場に金を落としているだけだ」
常連「ははははは」




