【16】 初日、第1レースの結果
実況「スタート10秒前……5秒前……スタートしました!」
大時計の針が0を指す直前、爽香はスロットルレバーを全開に握り込んでいた。
爽香(4秒前、青白の空中線通過! 2秒前、黄白の空中線通過! ゼロ秒少し前、赤白の空中線通過!……よし、スタート正常!)
大時計を過ぎ、直線150メートルを全速力で駆け抜ける。艇の上に伏せ、風の抵抗を極限まで減らす。目指すは第1ターンマークの赤白ブイだ。
残り30メートル、20メートル、10メートル……。
内側の5艇が一斉にハンドルを切り、ターン体制に入る。
爽香(あっ! ハンドルの切りが遅れた!)
爽香の艇は膨らみ、ターンマークから大きく離れた15メートル奥でターンを描いた。
爽香(ダメだ! 周りの様子を見すぎた! 遅い!)
ボートレースは水面を3周して順位を競う。
爽香はダントツの最下位のまま1周目を終えた。
2周目の第2ターンマーク手前、早くも先頭集団が折り返して迫ってくる。
爽香(げっ! 2番、3番、1番の順!?)
爽香は出走表の顔ぶれを頭に浮かべた。
1号艇:赤塚(44歳)
2号艇:立野(64歳)
3号艇:芝田(47歳)
爽香(先頭が2号艇の64歳のおじいちゃん!? 嘘でしょ、1号艇は何やってるの!? ひょっとしてこれ、年齢が高い順に走ってるの? 64歳、47歳、44歳……ボートレースって年功序列なの!? 実力の世界って聞いて入ったのにー!)
周回を重ねるごとに差は広がり、スタートから2分後、レースは終了した。
結果は6着。5着からも大きく離された大敗だった。
ピットに戻った爽香は、先輩たちのボート陸揚げを手伝い、艇旗の交換や片付けに追われた。落ち込んでいる暇すらなかった。




