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【13】 ボートレースを見るのが初めての福島県民
その頃、『ボートレース戸田』の観客席。
ボートレース初体験の50代くらいの男が、隣に座る60代の常連客に声をかけていた。
初客「初めて来たけんど、でっけぇ(広い)水面だなあ」
常連「おや、初めてですか?」
初客「んだ。福島から見に来だんだ」
常連「わざわざ福島から! それは遠いところを」
初客「前から見だかったんだが、東北には競艇場がねえからなあ」
常連「そうですね、東北にはありませんね」
初客「でも韓国にはあるんだろ? 韓国で競艇やってるって聞いた時はびっくらこいたよ」
常連「よくご存知ですね」
初客「4年前に韓国の選手が日本に来てレースしたって新聞で読んだんだ。……ところで東北にないのは、冬に水面が凍っちまうから造れねえらしいな」
常連「ええ、そう言われていますね」
初客「なら、温水プールにすればいいじゃねえか」
常連「ハハハ! それなら落水しても寒くないですね」
初客「今日は暖かくて気持ちええなあ。……ところで、あのドデカい時計は目覚まし時計かい?」
初客が指さしたのは、水面にそびえる直径3メートルの「発走信号用大時計」だ。
常連「えっ? いやいや、違いますよ」
初客「あんなでかい時計見たことねえ。さすが東京だなあ」
常連「ここは埼玉ですよ、東京じゃありません」




