【12】 全員B級だし、勝てない相手じゃない
爽香(さあ、デビュー戦! 目標は高く、1着目指して突っ走るわよ!)
デビュー戦だというのに、爽香に気負いや緊張感はほとんど無かった。
ピットの出走ランプが点灯し、爆音とともに6艇が一斉にコースへと飛び出した。
ボートは第2ターンマーク付近へと向かう。ここで各自がどのコースからスタートするか(コース取り)を決める。
競馬と異なり、ボートレース枠番通りの並びでスタートするとは限らない。内側の「1コース」が圧倒的に有利なため、少しでも内を取ろうと熾烈な駆け引きが行われる。
しかし新人の爽香は余計な動きをせず、ゆっくりと大外へ艇を滑らせた。大きく深呼吸をする。
爽香(いよいよ始まる……落ち着くのよ自分! 全員B級だし、勝てない相手じゃないわ。私の方が体重が軽い分、直線で伸びるはず。男性陣をまとめて豪快にまくってやるんだから!)
爽香(3着に入れば松木教官からシューズがもらえる! 私が一番若いんだから、運動神経も視力も勝ってるはず。教官には悪いけど、10万円のシューズ買ってもらおうっと。へへへ。あ! 1着取った時のためにヘルメットもねだっておけばよかったなー! 失敗したー!)
一人で勝手な捕らぬ狸の皮算用をし、悔しそうな顔をする爽香。
艇はスタートラインから約270メートルの待機エリアに達した。
水面中央にそびえる大時計。スタート1分前、白い針(1分針)が滑らかに動き出す。
15秒前、14秒前、13秒前……黄色い針(12秒針)が動き始めた。
爽香はスロットルレバーを握り込み、ボートを加速させた。




