やってきた行商人
どうも、タゴサクと申します。
桜舞い散る春というのは、気持ちの良い季節ですね。でも、たまに凄い強い風が吹いたり、急にパラパラとあめが降ったりと、安心しきれない季節でもあります。
そんな日のお話。
タゴサクは、ソワソワと待っています。今という訳でもなく、今日という訳でもなく、桜が咲き始めた頃ですから、ちょっと前からの事。
と、いうのも、この季節には、行商人がやって来るからです。日用品とか食べ物とか、必要な物は城下まで行けば手に入ります。でも、タゴサクが心待ちにしている行商人は、ちょっと不思議な物を仕入れてくるし、旅の面白い話をしてくれるのです。
今日くらい来るのかな?
そんな言葉を溢しながら、外を眺めていると、団子屋の妹が走ってくる。
「タゴサクさ〜ん、助けて下さ〜い」
何があったのか聞いてみると、団子屋の兄妹は団子を背負って、配達に向かっていたんだそうな。そこに春の突風が吹いてきて、兄の持っていた風呂敷に包んだ団子が吹き飛ばされた。必死に兄が風呂敷を掴んだんだけど、風呂敷の隙間から団子が一本二本と飛んでいく。
「お、お、お、ちょっと」
兄の風呂敷からは、ドンドン団子が飛んでいく。
そして、遂には団子は全部飛んでった。
さらに、嘆く間もなく次に吹いた大風に、風呂敷がマントよろしく兄ごとピュ〜と飛ばされた。
飛んだ兄は、壁にド〜ン。
先に飛んだ団子がトリモチのように壁と兄とをくっつけた。
またまたこれがしっかりくっついて、妹が引っ張っても引っ張っても剥がれない。
それで、タゴサクに助けてもらおうと、急いでやって来た。
「これはしっかりくっついてる」
「うちの自慢の新商品ですから。『一口でお口がパニック!くっつくくっつく3色だんご』如何です?」
一口でお口がパニックになる団子を3色で串にしているのは何故だろう。一口でパニックなら、三口食べたらどうなるの?お口が地球大戦争?
とりあえず、2人で引っ張ってみる。
「うんとこしょ。どっこいしょ」
それでも、兄は取れません。
助けを呼んで、もう一回。
「うんとこしょ。どっこいしょ」
それでも、兄は取れません。
もっと助けを呼んできた。
「うんとこしょ。どっこいしょ」
それでも、兄は取れません。
思案にくれるタゴサク。
そこで、一案思いつく。
「皆んなで団子を食べちゃおう」
おー!ってなもんで、皆んなで団子を剥がして食べ始める。
中にはお酒を持ってくる人もあって、『御花見』ならぬ『御兄見』の開催。
「とっておきの酒を持ってきたぞ〜」
「おむすび握ってきたよ〜」
「肉焼け、肉!」
「歌います!」
「私の筋肉を見るのよ〜」
「団子屋の新商品で〜す」
皆んなが酒盛りをしている中で、今だに壁に貼り付いまままの兄は泣いています。
「肉をプリーズ!」
そんな宴会の最中、また一陣、強い風が吹きました。
「うわっ!」
「きゃっ!」
皆んなが風に飛ばされる。
一瞬で舞い上がる空の上。
そこに一言聞こえてきた。
「タ〜ゴ〜サ〜ク〜さ〜ん」
ん?
「タゴサクさ〜ん、行商人で〜す」
ん?
「来〜ましたよ〜〜。さようなら〜」
行商人が飛んでった。




