御花見
昔むかしのお話。
ある城下町の外れをちょっと行った所にタゴサクという者が住んでいた。
「タゴサク〜。花見に行こうべ」
「タゴサクさ〜ん。お団子いっぱい持ってきました~。お花見行きましょ〜う」
やってきたのは、幼馴染の団子屋の兄妹。
山のようなお団子背負って、お花見へと繰り出した。
桜の咲き乱れる河川敷は、人でいっぱい。
沢山の屋台がお花見に来た人達の目を鼻を刺激しています。
適当な所に腰掛けて、桜を肴に団子をぱくつく三人。そこで、ちょっと気が付いた。
団子しか持っていない。
確かに桜には団子ではあるが、団子だけでは喉が渇く。タゴサクは、3人分の飲み物を買ってこようと屋台を覗きながら歩き出す。
「桜に似合う美人は、峠の茶屋の看板娘だろう」
「いやいや、蕎麦屋の娘もなかなかだ」
「いや、俺は損料屋の姉さんを推すぜ」
人々が、誰が一番美人かで騒いでいた。
「いや、うちの妹が一番だ!」
なぜか団子屋の兄も参戦。
気が付けば、桜娘コンテストが開かれていた。
「いやぁ、解説のタゴサクさん、盛り上がってまいりましたね。遂に2人までに絞られました」
「そうですね、この城下にこれほどの器量良しが居たのかと驚きましたが、これは順当でしょう」
舞台上では、2人の町娘が手を振っている。1人は恥ずかしそうに、1人は愛想を振り撒きながら。
「ちょおっと待ったぁ!」
そこに響く野太い声。
「そこにわたしが呼ばれないのは、可笑しいんじゃありませんこと」
そこに現れたのは、女装した筋骨隆々の男。その名をゴンザレス。
彼(?)の主張は、ミスコンは性差別、男女の垣根を飛び越えて、真の美しさで選ぶべき。
言うなり舞台に並ぶゴンザレス。
舞台上は異空間。
恥ずかしげに胸元で手を振る団子屋の妹。
両手を上げて大きく振る茶屋の看板娘。
上半身を脱ぎ、ポージングを決めるゴンザレス。花柄のニップレスが煌めいている。
「恥ずかしです⋯⋯」
「投票よろしくお願いねぇ」
「さあ、わたしの筋肉美を堪能しなさい」
そこに手を上げる、鋳掛屋の大将。
「美と言うなら内面も観るべきだろう。俺は萬願寺の住職を推すぞ!」
舞台に上がる、プルプル震える老住職。
「待て待て、そこに可能性も観るべきよ!」
舞台に上がる、桔梗屋の幼い娘。
「いやいや、立場ってやつも大事だろう。だからこそ、殿様が一番だぜ!」
「だったら俺も凄いぜ。毎日毎日日が昇る前から働いてるんだぞ。働き者だ」
「そんな旦那より早く起きて朝ご飯を作ってんだから、わたしこそ見てほしいわ」
ワァーワァーと、みんなが騒いで舞台に上がってくる。我が我がと自慢大会。
皆が笑顔でプチ自慢。
「春限定の御花見団子、販売中で〜す」
「みんな〜峠の茶屋に来てね〜」
「わたしの上腕三頭筋を見るのよ〜」
「うちの妹が一番だぜぇ!」
「釈尊は仰られました────」
「娘は足し算もできるのよ〜」
「イチたすイチは⋯⋯ニィ」
「殿がこのような場に来るはずなかろう」
「はぁ、ジジイ、何だって──って、あそこに殿いるじゃん?!」
「んなあああぁあああぁ、殿ぉぉぉ」
「わたしの僧帽筋も見て〜」
「毎朝毎朝、起きるの辛いんだぜぇ」
「それを起こすのは、もっと辛いわ!」
「僕ね、僕ね、引き算できるよ。三ひく一は、ニィ」
「うちの団子は日本一!」
「うちの妹も日本一!」
「みっなさ〜ん、茶屋で待ってるよ〜!」
「わたしのハムストリングよ〜!」
「脱ぐな〜!」
「般若心経速読いきます」
「鼻から焼酎呑みま〜す」
「わしは、ヘソで茶を沸かしま〜す」
「俺は────」
「あたいは────」
「────ま〜す」
「さぁ、解説のタゴサクさん、これはどういう状況でしょうか?」
「そうですね、悪ノリです。いき過ぎた悪ノリですね」
「では、ゲストのタゴサクさんの新曲披露を挟みまして、審査発表といきましょう。タゴサクさん、歌のほうをお願いします」
「悪ノリですね」
「⋯⋯⋯⋯審査結果をお願いします。審査委員長のタゴサクさん」
「何役させられるんです?」
で、誰が優勝したって?
そんなの、皆んなが全員凄いんだ。
全員揃って優勝さね。
って言うか、こんなん審査できないよ。




