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55話 ボスの登場

「(しまった!思わず声が出てしまった・・・!)」

仲間が目の前でやられ、装備している銃を探して構えようと上半身をあたふたとさせていた。


「(こ、こんなにやばいやつが相手なんて・・・!)」

ビルでの襲撃、人質の誘拐などで多少のターゲットの戦闘力は聞いていたが、生き証人がいなかったため、噂におひれはひれがついているものだと思っていたが、そんなことはなかった。

男達は暴力を前提にした裏の仕事を生業にしており、いわば自分達をアウトローだと自負していた。しかし、自分達以上の理不尽な暴力を目の当たりにし、自分たちの実力を勘違いしていたことを痛感した。


「声を出してしまった時点で敵に居場所がバレたと考えろ。すぐに武器を構えないと死ぬぞ」

先ほどまで3mほど奥にいたターゲットが真横から話しかけてきていた。


「わぁーーー!!!」

幽霊のような得体の知れない物に襲われたかのような恐怖にかられ、悲鳴があげられた。


「な、なんだ・・・!どうなってる?!」

倉庫の入り口付近を固めていた男が仲間の悲鳴と銃声がどこからともなく聞こえ、動揺していると、


「ぎゃあぁぁーー!!」

また別の場所から悲鳴が聞こえ、まさに阿鼻叫喚の空間と化していた。

また1人、そしてまた1人と小さな老人に仲間が次々とやられているこの現状に現実味を感じられずにいた。


「おいおい・・・!相手は伝説の殺し屋とはいえたった1人なんだぞ!なんで好き勝手にやられてるんだっ!!」


「それはお前さん達との仕事の質が違うからだ」

独り言で言ったつもりが、その問いに対して後ろから回答が返ってきた。


「っ!!!」

急な声に対する答えに驚き後ろを振り返ると、ターゲットが棒立ちでこちらを見ており、その様子に驚き腰が抜け、尻餅をついてしまった。


「お前さん達は抵抗しない相手ばかりを仕事にしている。俺はお前さん達のような同業者を相手にすることが前提に仕事をしているんだよ」

尻餅をついている自分に向かってジリジリと歩いて距離を詰めていた。身体は小さな老人であったが、声は明らかに中年ほどの若く、迫力のある声をしていた。


「お前さん達はリスクを追わずに金を稼ぐことしか考えていない。俺はリスクを負ってでも夢を叶えたくて仕事をしてきた。普通の人間になるという夢だ」


「く、来るなぁ!」

近づいてくるターゲットの表情は見えていないが、ただ淡々と業務をこなしているような雰囲気が伺え、それが逆に恐怖感を高めていた。


「楽はしたいがリスクは負いたくない。そんなお前さん達に俺は殺せん」


ガッ!

そして、何か側頭部に重い衝撃が走ると、そのまま目の前が暗転した。

それと同時に今までやってきた自分の裏の仕事がどれだけ楽で簡単なことだったのかを痛感していた。平和な日本でやる裏の仕事をこなしてきた自分たちと、餓死や紛争などが日常的にある大陸で殺すか殺されるかの仕事を当たり前にこなしているこの伝説と言われた小さな老人。どちらが勝つかなんて考えなくても分かることだと、今更ながらに気づいた。


「・・・これで全員か」

持っていた銃のグリップで殴って気絶させてからそう独り言を言った。なるべく殺さずに敵を処理していたのは桃子の要望になるべく答えるためなのと、敵を殲滅させるというこの戦いに対して少しでも難易度を上げる、つまりゲームとして楽しむためという自己満足のためという理由もあった。


「ふぅ〜・・・今の俺も楽しむために戦っている。根っこはお前さん達の金目当てと本質的にはさほど変わらんか」

そう言いながら、気絶した男を見ながら思考を巡らしていた。この男達は欲張らずさえいなければ一般的な生活が当たり前のように手に入る。それなのにも関わらず、ただただ大金のためだけに自ら進んで後戻りのできない裏の世界に入っていった男達に、少なからず嫉妬していた。


「なぜ自ら捨てる・・・普通の生き方を・・・」

平和に生きることは無料ではないことを長く生きてきて痛感してきたからこそ、この男達を見ては苛立ちを隠せなかった。


「こいつらは平和ボケしてるのさ・・・普通というのは、こいつらにとってはつまらない世界なんだよ」

背後から声が聞こえたのと同時に右肩に激しい痛みに襲われた。


「仕事中に独り言を言っているなんて、お前らしくないじゃないか。隙だらけだったぞ、ファースト・・・」


「出不精のお前が自ら現場に立つようになったなんて、成長したな・・・R」

左手には負傷した右肩からの出血が付着しており、矢が肩に突き刺さっていた。

右肩を左手で抑えながら後ろを振り返ると、30m以上先にマントのような黒いコートを着たRがクロスボウをこちらに向けて立っていた。生気が感じられないくらい顔には肉がなくガリガリとしており、目は窪み、ガイコツのような顔でニヤリと小さく笑っていながら、のそりのそりとこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。


「さすがのお前も利き腕がやられちゃ銃が使えないだろう・・・」


「・・・」


「やっとお前を殺せる時がきたんだな・・・ここまでの準備は苦労したよ・・・」


「そうか?それはまた随分と暇なんだな。俺は普通の生活を送るために忙しかったよ」


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