自慢の貴女
ちょっとした出来心といえばそれまでだ。普段自分が着ないタイプの服を着てみたいと思った。
一流も一流の職人によるもので、さらにはそれが目の前にあるのだから着てみないという判断はレナにはなかった。
だがしかし。
「う……うわぁ……」
いざ着てみるとなんともこう、恥ずかしくてたまらない。単に着慣れていないから、自国の服飾文化と違うから、であったとしても、おそらく根本的な所で似合わないのだと思う、自分は、モニカのデザインする服が。
「悔しい!!」
鏡を前にして、モニカと服の交換をしたレナは血涙を流す勢いで拳を握りしめる。
「超一流のモニカのドレスなのに、私だとちっとも似合わない!!」
モニカのデザインはレナの物より露出が多めだ。女性の円やかな曲線美を際立出せつつ、健全な色気を十二分に発揮させてくれる。
「胸元や背中もこんなに広めなのにちっともいやらしさを感じさせない……だからこそ、私が着ると! 途端に!! こう、あれよ!!」
言ってしまえば体のボリュームが足りていない。ドレスに着られている感がとにかくすごい。
「それはそうでしょ。そのドレスは私のために私がデザインした物だもの。レナが着てくれるならちゃんと貴女に似合う物を作るわ。貴女だってそうでしょう?」
「それはそう! そうなんだけど!!」
その人物が一番魅力的に見えるドレスを作る。それがレナとモニカの誇りであり信念だ。
「それでももうちょっとこう着られてる感が……いやでもやっぱりモニカのデザインと縫製はすごいわぁ……」
似合っていない悲しみと、職人の技術の素晴らしさに対する感動にほれぼれとしてしまう。くるりと背中を鏡に向け、背面の姿も堪能していると扉がノックされる。
どうぞ、と気軽に応えたのはモニカのドレスに気が向きすぎていたから。
だから、入ってきたのがエリアスだと気づいた瞬間、レナは盛大に固まってしまった。
「あら、旦那様のお迎えね」
レナどころかエリアスも両目を大きく見開いて固まっていたが、モニカのその一言で時は動き出す。
「ああああのですねエリアスこれは……!」
エリアスは大股でレナに近づくと、その手を取ってすぐにまた扉を目指す。
「エリアス!?」
「レナ、そのドレスとても素敵ですせっかくなのでこれから少し出かけましょう」
「これで!?」
「はい、それで!!」
無理ぃ!! と叫ぶレナに気付かないくらいエリアスがはしゃいでいるのがモニカの目から見ても明らかだ。
「あー……なるほど、隠すよりも自慢したいタイプ……」
着飾った愛しい人は自分だけが見ていたい、のではなく、周囲に「こんなにも素敵なんだ!」と見せびらかしたい。
「意外だったわね」
必死の抵抗を試みるレナと、そんなレナを褒めちぎりつつ早くみんなに自慢しに行きましょう! と興奮気味のエリアス。
そんな二人の光景をモニカは生ぬるい目で眺めるしかなかった。
本日、漫画版全16話がコミックシーモア先行で完結配信となりましたー!!とても素敵に描き上げていただいています!!ここまで応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました!!




