第21話・交わる競技会と交わらぬ家族
第21話・交わる競技会と交わらぬ家族
今回主に使われる競技場から宿泊施設までの出展込みの露天スペース!
数日もしくは週単位で行われる競技大会とそれに応じたスコア表示!
魔法国からの許可も経て科学国の取材撮影出版の許可!
逆に機械的なエネルギー消費の無い道具の魔法国への販売許可!
で、これだけだと魔法国だけ妥協しっぱなしだから代わりに燃焼系の発電施設の一部停止による環境汚染速度の減少提携!
「完璧じゃないかコレ!?」
「完璧な訳あるかいアホ。」
一通り揃った環境と状況をさらって随分理想的な流れだと思ったが、ミルアーク先生に一蹴された。
アホって…いきなり激変ってのは無理がある中でここまで出来たら結構じゃないのか?
「競技場外枠に更に席を増やす工事費やら国から予算出てるのに大通りは露天スペースに使ったからオルミクスの人の商業機会にはなり辛いし、清浄発電施設を別に考えんと科学国が困るし、魔法国にもどうしたってゴミが出来るし。」
「待て待て待て!他の人の店丸ごと動かしたりするわけにもいかないし、配置とか限界あるだろ!ってかそこは文句言っていいレベルの話なのか!?」
出展の店を解体不可能な形で作ってしまえば普段その店どうするって話になるし、ここでの開催と言うだけで商業的に一番有利だから両国の商人にも機会をとメインの通りにしたってのにそこに文句つけても始まらないだろうに。
「ま、人集めに成功してれば収益はそれなりに出るだろうし…完全にしくじったらアンタの負債な。」
「国家予算の負債!?」
「はっはっは!まぁ後は盛り上げ役として頑張んな!」
さらっと恐ろしい事を言い残して去っていくミルアーク先生。
ったく…冗談過ぎるっての…いや、失敗して財政が傾いたら冗談で済まないんだけど。
まぁともかく、連絡だの調整だのはやってきたし、後は当日から広告塔として目立ちつつ業者さんとかの質問要望等に対応していけばいい訳で、開始まで間が…
「っと…そう言えば…」
今の今まであれこれと作業に追われて忘れてたが、ナードの銃壊れたっきりになってたんだった。
机に広げていた資料を纏めて、変わりに設計図なんかがまとめてある資料を開く。
と、二丁銃と脚部装甲の強化素材について検討されている欄があった。
「へぇ…」
A2マグナムの素材に使われてた超硬金属なら強度は足りるだろうし、銃二丁って言うのも中々面白い。
ナードは装備ないと不都合極まりないし、全部間に合うかはともかく、一つずつ手をつけてこう。
Side~フィアリス=スノウレール
「護衛依頼もあるのにそんな情けない事でどうしますの!」
ギルドルームにて、リリィの叱咤を受けて顔を見合わせている新入生の二人。
戦技会に参加する為の三人として、リリィが二人を連れようとしているが、二人は気乗りしていないと言う状況だ。
リリィの言う事も分かるは分かる。護衛依頼受けるなら戦うの怖いはちょっと情けなさが過ぎる。
ただ…ついこの間殺されかけたばっかりなのに戦おう!ってなる人も中々珍しいと言うか…
「無理矢理引きずり出してもトラウマになるだけだって。どうしても出るなら私が付き合うから。」
「あ・な・た・がっ!敵でなくてどうするんですか!」
いきり立ってるなぁ…そんな詰め寄られても私別にリリィを倒したいとか言うわけじゃないんだけど…当然ながら倒されたいわけでもないし。
「私とナードが付き合うからそれでいいじゃない。ガイズ先輩が今年どうなるのか知らないけど、万一アレと新入生当たったらそれこそ…」
「そ、それは…」
「本当にどうにかできる相手だけならともかく、リザードドレイクと鉢合わせにさせた子供をすぐさまあんな大会に出す気?」
私が出来るだけ触れないようにしていた名前をあっさりと言った挙句新入生を子供扱いするナード。
全員が沈黙する。く、空気が重い…こうなるから触れたくなかったのに触れない所か余計重たい弄り方するなんて…ナード容赦ないなぁ。
「出たいなら僕とフィアが付き合うって。何だったら指揮の練習したかったら君の作戦で動いてもいい。」
言う事に容赦は無いけど、対応はこの上ないほど優しいものだった。
それが分かるのか、リリィも文句を言えずに、それでも不満そうにナードを見る。
「…貴方達、去年二人で準決勝まで勝ち進んだの忘れましたの?私が加わったら勝負にならないでしょうに。」
リリィの言葉に確かに、と思う。
ネストやガイズ先輩みたいな並外れの例外でもいない限りは逆にまともに勝負にならない。
魔科学戦技会は派手なイベントだが賞金があるわけでもなく、得とすれば優勝したと言うことによる名声。
護衛依頼等を受け持つ際の評にもなるが、それだけだから企業やギルドの人たちが全財産つぎ込んで優勝を狙う大会じゃない。…そこまでやってたらもっと怪我人酷いだろうし。
参加が学生限定ではないのに学生ばかりが上位なのは企業が散財してまで参加するものじゃないからでもある。私達が三人で出たら並の人相手じゃ勝負になるとも思えない。
「それじゃ出ないの?」
「むぅ…分かりましたわよ!出ますわ!優勝してやりますわよええ!」
「自棄だなぁ…」
ガイズ先輩が出てたらアレを倒さないと優勝できない事になるんだけど…それはそれでリリィ分かってるんだろうか。
…ネストについて行く気なら弱腰じゃ駄目だな。私はその予定で居よう。
SIDE OUT
「はぁ…っ…」
何の気なしに練成した石を手に、俺は釜の傍でぶっ倒れた。
…ミスリルの時もそうだが、思いつきで半死半生まで消耗するのはいい加減やめたほうがいいかもしれない。
頭がぐらぐらする…もう寝てしまおうか…
「あー駄目だ…コレだけは組み込んじゃってららら…あー…」
思考を言葉にも出来ない。
話にならないから、冷蔵庫に保管してある飲用マジックポーションを煽る。
市販品の安物だから回復はしないに等しいが、倒れるか起きていられるか程度の差にはなった。
「うー…くっそぉ…中級魔法一発分程度なら回復できるはずなのに…」
逆に言うとそれだけ回復したとしてもまともに頭が働かない最大量消耗したという事で、ロストリミットに慣れるって訓練の結果成長してるのかも知れないが、その結果がコレか。
いい物になる程高コストなんだなぁ…自分の体すらとは。
「ちょ、ちょっと!ふらふらじゃない!」
フィアの声がして目を向けると、帰ってきていたフィアとナードが俺を呆れたように見ていた。
「全く…気づくと無茶してるねネストは。一体何を作っ…」
ナードの視線がさまよい、途中で止まる。
「これ…完成形の…」
「あー機構はそこまで難しくは無かったんだが…これに手こずって。」
ナードの装備を整えるのに作っておいたパーツ一式。
まだ組み立てて無いそれらを眺めるナードに、俺は今作った二つの石を見せる。
「陽精石と陰精石…半分賢者の石?…未完賢者の石?」
「…は?」
俺の傍に寄って来ていたフィアが呆けた声を漏らす。
賢者の石って名前のせいだろう。
「賢者の石は…一つにして全てになる代物。全部の力を持ってる代物。この二つの石は、光側の4属性と闇側の4属性を内包してる石。フィアで知っての通り、隣り合う属性は相性がとてつもなく悪いから…混ぜるのは片側ずつが限界だった。」
「は…はは…なんだろ…消耗して無いのにめまいが…」
ふらついてる俺を支えにきてくれたはずのフィアから力が抜けた。
陽精石には光炎雷風の『動』の力を、陰精石には闇氷地森の『静』の力をそれぞれに込めてある。
驚くのも無理も無いかもしれないな、市販品で副属性のものなんてまず見ないし。
「文章にしたら単純な話に聞こえるけど、賢者の石って名前にネストのこの状態を見る限りミスリルより異常な代物なんだよね、それ。」
魔法関連に聡くないなりに知っている情報と俺の状態から異質なのを感じ取ったらしいナード。
「これを銃に…双精銃、雷撃弾じゃなくなったからな。」
「っ…僕…用…なの?」
「あぁ、後は組み込むだけ…駄目だ、眠い。後任せていいか?」
「…うん。」
回復したはずなのによく頭が回らない上に意識が重い。
雑にならない程度に二つの石をナードに受け渡した上で、俺は自室に入った。
もう着替えとかいいからとりあえず寝よう…
Side~レイナード=マーシナルス
設計図の元は僕が作ったもの。
パーツが完成して纏められていれば、多少改変してあっても組み立てることは出来る。
まずは新調されていた脚部装甲を組み立てる。
片方組み上げたところで一息吐くと、フィアがやたらと真剣に陽精石と陰精石を眺めていた。
多分、目でと言うより魔力の流れだか神秘性だかを見ているんだろう。未だに練成作業自体が出来ない僕にはまだよく分からないが。
「フィア、やっぱり凄いのそれ?」
「うん…本当に四つの力が死なずに混じってる。」
「宝石としても、『元の宝石』ってモノが分からない状態になってる。陽精石と陰精石って名前をつけていたけど、そう呼ぶしかない新種だね。」
他の精霊石みたいに、成分分析をかければ何か分かる既存の宝石に力が宿ってるだけなら宝石の種別が分かるが、少なくとも手持ちにあったものとは別物としか思えない輝きだ。
どれか、にしたら、そのどれか宿る一つの力しか残せないから、全部残る構成で作ったんだろう。
言葉にしたらそれだけだけど、詳細は全く分からない。
しかも、それだけじゃなかった。
「他のパーツもこれ…スターチタニウムだ。」
「鉄じゃないの?」
「今更馬鹿な質問しないでよ…未だに金属全部鉄だと思ってるの?」
「何がどう違うのかまではさっぱりよ、悪かったわね。」
組み上げたもう片足の装甲を見ながら拗ねるフィア。
僕は席を立って、工具から量産型のナイフを取り出す。
普通の人間の域からは外れるようになった今の力を以って、全力でそのナイフを組み上げたばかりの装甲に叩きつけると、粗雑な鉄で作られたナイフは甲高い音を立てて刃が砕けた。
「うわ、欠けた。」
「とんでもない圧力とか熱とか…特殊な条件化で出来る金属だけど、見ての通りその辺の金属じゃかすり傷にもならない。ミスリルより堅いかは知らないけど、魔力の通りを除けば張り合えるんじゃない?」
叩きつけてあっさり使い物にならなくなったナイフを見て、今更ながらに思う。
「…こんなものどうやって加工したんだネストは?」
接合部が脆くては話にならない。
その為、接合部のようなパーツも同じ素材で出来ているのだが…板状の装甲部程度ならともかく、接合用のパーツの加工なんてどうやったのか。
この強度じゃ削るのも曲げるのも無理だろう。ましてや精密になんて。
「多分だけど、これになる前に成形しておいたんだよ。で、練成で『形状をそのままに』スターチタニウム?に、したんだよ。」
「練成で…ね。…じゃぁこのふざけた金属を作った上で陽精石と陰精石を作ったことになるのか。」
若干きつめに言った僕の意図を察したのか、フィアは心配そうにネストの部屋の扉を見る。
高度な練成作業に必要な集中力や消耗はミスリルの時に分かっている。
それ以上の代物を二個、用意する前にも高難度の金属を作って…
ロストリミットの多用による修行と言い、本当に無茶が過ぎる。
「…フィア、料理と回復薬の準備任せてもいいかな。」
「う、うん。…料理は怒らないでよ?」
ここまでされて置いて組み立てずに放置も無いから、僕は残る銃の組み上げをしなきゃいけない。
つまり、フィアにネストが起きたときに身体にいい物を用意しておいて欲しいという要望。
けど、料理をしてこなかったフィアはこの家に移ってからも、必修にあったテントでの野営料理がせいぜい。
…あの姉共にいいようにされてた時に家事を身につけていた僕に出す自身が無いんだろう。姑じゃあるまいし、僕がそんな事でいちいちけちつける訳…ん?
「丁寧にアドバイスしてあげようか?」
「お願いだから勘弁して…」
ネストには美味しいほうが女子力的な意味でポイントになるかと思って聞いてみたが、凄く嫌そうに止められた。
…よくよく考えたら三人で食べてるときに駄目出ししたらただの公開処刑だな。
頭を下げて断るフィアに苦笑しながら、僕は残る銃のパーツに向き直った。
SIDE OUT
俺とコンファート先輩が戦技会から展示会までの運営についた為、戦技会に俺も出ないことが確定している。
俺は別にいい。そう、『俺は』…
「貴様ら揃いも揃ってこの俺に恨みでもあるのか…っ!!」
「いやいやそんなつもりはちっとも!全く!!」
二年連続決勝で負かされた相手に試合を避けられる結果になったガイズが俺とコンファート先輩の元に来て大剣を握り締めていた。
打ち合わせって言うか最終確認って言うか、競技場周辺を見回っている最中だが、この人なら最悪こんな場でも剣振り回しかねない。
「ほらほらガイ君、そんな無茶言っちゃ駄目だよ。」
「勝った傍から不参加になりやがって…」
「実はね、絶対不服だろうからってガイ君には特別な役割を用意してるんだ。」
「何?」
「前回の死闘をもう一回やられるのも増えたお客さんに悪いし、折角両国からの招待枠を広げた事もあって、エキシビジョンを用意してるんだ。前年一騎打ちで優勝者と準優勝者を決めた二人に対応して貰うのがいいんじゃないかとね。」
ガイズを宥めるコンファート先輩の持ち出した話は俺も聞かされてないものだった。
エキシビジョンって、そんなもの企画してたのか?
「勿論、今回なら優勝できるって普通に出場するなら」
「はっ!面白くない事を!貴様らどっちも出ない大会で勝って何になる!借りを返す意味もある、そのエキシビジョン引き受けてやろう!」
「それでこそガイ君!」
今なら優勝できると挑発するコンファート先輩。
当然、そんな形はごめんだと言わんばかりに大見得を切ってくれるガイズ。
「…手馴れてるなぁ。」
「別に乗せられておらんわ!!」
思わず呟いてしまった俺をガイズが睨んでくる。
自覚あるのか?コンファート先輩にきれ辛いからって俺に飛び火するなよ。
「それにしても、俺すら聞かされて無いんだけどエキシビジョンって誰なんだ?」
「それは秘密。でも魔法国と科学国からそれぞれ一人ずつお招きしてるよ。」
楽しげに言うコンファート先輩。
少し背中が寒くなった。…虫の知らせとか言う奴か?
「…どっちでもいいんだよな?」
「うん。」
「俺の相手魔法国の人でいいか?」
俺の問いにコンファート先輩はガイズを見る。
そりゃ俺とガイズが戦うのなら、もう片方はガイズが請け負う事になるのだからガイズに相談振るべきだとは思うが。
「俺はどちらでも構わん。」
「そう?ならそうしておくけど。」
特に否定もされずに決定してくれる。
いや、俺も詳細わからないからなんとも言えないが…
頑張ってくれ、ガイズ。
Side~レイナード=マーシナルス
結局リリィに付き従い、僕とフィアが戦技会に出る事になったのだけど、僕達が全員で戦ったら並の相手はあっという間に片付いてしまうと言う事で…
「く…っ…」
『あぁっと!さすがはあの盛大な告白を繰り広げたリリィさん!リトルフェアリーのサブリーダーとしてたった一人で準決勝まで勝ち進んだぁっ!!』
リリィ一人に戦わせて、僕とフィアはリリィが負けたら参加しようと後方で見物を決め込んでいた。
中級魔法の雷撃でレベルの低いものなら魔法陣展開から撃つことが出来るようになってるリリィをまともに止められるやつはそういなかったが、雷撃には対処法が多い。
去年ネストが一人で瞬殺した、キングフェンサーズサブリーダーが率いる三人を相手にまで勝利したものの、彼女は全身ボロボロで座り込んでいた。
疲れた上にボロボロのリリィに肩を貸すフィアと並んで歩く。
「いい修行になって良かったね。」
「さすがリリィ、おめでとう。」
「釈然としませんわ…っ…」
フィアと僕の言葉を聞いて、表情を歪めるリリィ。
確かに全員で行ったら修行にならないと言ったのは自分だけど、だからって見学してた僕らにボロボロでよかったと言われても困るって事だろう。
「はっ!戦技会ってのも大した事無いな。」
と、僕らの前に唐突に三人組が立ちはだかった。
セリフから察するに、戦技会の参加者にして多分決勝の相手なんだろうけど…
「この声は…」
「…お前何してる?」
先頭にいたパワードスーツに声をかけると、フェイスシールド部分を開く。
パワードスーツを着ていたのは、声で気づいた通り、僕の義姉であるフレシアだった。
「ガイズ様が今回は出られない事になったので、今回此方にいらしている彼女と偶々組むことになりまして。」
「まさか貴様を潰せるとはな、引き受けた甲斐があった。」
「あぁそう。」
こんな性悪を一体どういう経緯で組み込んだのか…面倒なことを進んでする事も無いだろうし、多分アルミスさんが絡んでるんだろう。
交流競技会の先陣を切るイベントだからな。
「知り合いですか?」
「ただの変態だよ。」
「ナード、それはお父さんのほうじゃ…」
「てめぇら…」
一人よく分かってないリリィの問いに適当に返す。
フィアのツッコミも合ってはいるけど中々辛辣なもので、思わず笑いそうになった。
品の無い話題を進めたくないのか、リリィはわざとらしく咳払いをする。
「コホン…ま、まぁレイナードさんのご友人という事ですね?」
全力で寒気がする事を言われた。
こんな奴と友人!?冗談じゃない!!
「「違う!!!」」
「ナード、私とリリィみたいになってる。」
「う…ぐっ…」
僕は全力で否定すると、偶々タイミングが合った挙句にフィアに指摘された事で初めて会ったリリィの事を思い出して俯く。
くっ…憎い相手と仲いいとか言われるのって中々苛立つんだな…今後は気をつけよう。
「まぁいい、明日覚えてやがれ!」
「お二人には昨年煮え湯を飲まされましたからね。」
「今年は勝たせてもらう。」
それぞれに捨て台詞を吐いて去っていく三人。
内一人の弓を見て、そう言えば去年ガイズの傍にいたとか言ってた事を思い出す。
BDSで倒した弓使いの氷魔法使いか、やっぱり強いんだな。
「…とりあえず、レイナードさん。貴方に彼女のお相手は任せますわ。」
「え?」
昨年の因縁もあるだろうしあの先輩に付き合ってフレイアの相手をリリィにでも押し付け…任せようと思っていたのだが、リリィに名指しでそう言われた。
今回の参加に辺り、『指示は任せる』と言っている。まさかわざわざ言われるとは…
「科学国でどうかは知りませんが、宣戦布告には真っ向から応えるべきですわ。」
騎士がいて、決闘がある魔法国。その名家の一人娘のリリィ。
出来れば関わりたく無いんだけど…約束を破って彼女の望む在り方のようなものに傷を付けることは無いだろう。
「先輩達もまずまず強いしね、私とリリィで引き受けるから、姉弟喧嘩頑張って。」
「あら、姉弟でしたの。だから仲の悪い知り合いだったのですね。」
事情を把握しているフィアまで呑気にリリィと会話する。
全く…好き放題言ってくれる…
でも、まぁ丁度いいか。
パワードスーツ相手に太刀打ちできないからと無茶な修行をしたんだ、アイツ相手なら丁度いい実験にはなるだろう。
そして…翌日の決勝戦。
「っ…」
僕はフレシア姉さんに振るわれる剣を腕の装甲で受ける。
並の金属ならそれで斬れるだろう振動剣だが、さすがに最強格の金属だけあって、剣の方をへし折った。
が…パワードスーツでの斬撃。
腕の装甲強度はもっても、腕自体が押されて肩に少し食い込んだ。
「あ?テメェどうなってやがる…」
へし折れて吹っ飛んだ剣を手放していぶかしむフレシア。
パワードスーツの出力を『とめられる』生身の人間何てものがそもそもガイズみたいな筋肉馬鹿でもギリギリ位だろう。装甲強度も相まって驚いたらしい。
「修行の成果だよ、財力馬鹿。」
「は!この剣砕ける装甲で何言ってやがる!!」
パワードスーツと振動剣を持ち出してきた事への皮肉を呟いたつもりだったが、ネストの力に頼った金属装甲という意味では言い訳できない返しをされる。
叫びながら攻めて来るフレシア。
左右の拳を素早く繰り出してくるが、攻撃力とダッシュは早いもののスーツの重さで初動はそこまで速くない。僕でも見切って防げる。
が…強い。
ジャブみたいに軽い速度なのに、受けたら体がよろける。
直撃を受けるわけにも行かないが、僕だって全部を完全回避も出来ない。防ぐしか…
防いでいた腕を掴まれた。
「らあっ!!」
引き寄せながら後方に倒れるフレシア。
倒れる勢いをそのままに足を振り上げてきて、僕の鳩尾目掛けて吸い込まれ…咄嗟に空いていた左腕を間に挟んだ。
そのまま、地面に寝そべったフレシアの頭上に吹っ飛ばされた僕は、どうにか空中で姿勢を整えて転がって落ちる。
投げ技…舐めてたな、色々身につけてるんだ…
「ぐっ…さすがに…」
落下でのダメージはそう無かったが、ガードした左腕が痛んだ。
装甲はもっても、パワードスーツと直接力比べが出来るほどではないらしいな。
ただの人間なら腕相撲で腕が折れる相手だ、勝負になってるだけマシなんだろうけど。
「双精銃…使わせてもらうよ。」
僕は腰の二丁の銃を抜いた。
…射撃なしで勝てる相手じゃない、使わせてもらおう。
「は…新品用意してもらってご満悦ってか!そんなもんで!!」
駆け出してくるフレシア。
動きが速いのは速いが、動く的も狙える僕には見える。
綺麗なダッシュ。その足の着地点目掛けて僕は…
陰精銃から『氷』の弾丸を放った。
着地点が凍って、氷を思いっきり踏んだフレシアは足を滑らせ転ぶ。
転んだ所で、僕は陽精銃から『光』の弾丸を放った。
正面より少ない装甲の隙間に吸い込まれるように入った光の一閃が、スーツに穴を開けて足を焼く。
「あぐっ!な…馬鹿なっ!?」
「陽精石と陰精石…凄い代物だな。」
『な、な、なんだぁっ!レイナード君の両手の銃から別々の属性弾が!?』
倒れて悶えるフレシアを他所に、僕は銃を腰にしまった。
手元での弾丸選択で射撃の属性をそれぞれに選べる双精銃。
どう変換してるのか知らないが、射撃前に操作しておけばチャージの間は何の調整も要らない。と言うか僕に魔力の調整が出来ないけど。
「くそ…っ!道具便りにこんな奴にっ…」
「そんなものまで使っておいてよく言うよ…ま、格闘術上手かったけどね。」
最初BDSだけであっさり倒せたから大したこと無いのかと思ったけど、フィアと修行したのと実戦位でちゃんとした体術を学んでない僕よりは器用だった。
随分手間取ったけど、他はどうなってるのかと見回して…
無傷で先輩を取り押さえているフィアと、何本もの矢が刺さった身体で倒れた先輩に槍を突きつけているリリィの姿があった。
「な…何故…こんな…身体能力…」
「怪力って事になっちゃうよなぁ…リリィ、終わった?」
「や、やかましい…ですわ…」
『あーっと!リーダーのリリィさん以外ろくなダメージも無いままに試合終了!!強い強い強いっ!リトルフェアリーの三人が優勝だあっ!!』
見事に対照的だな…フィアはもう中級魔法を使える高位騎士みたいなものだから何してもそうそう倒せないだろうけど、リリィにしたって戦闘名家の一人娘なのにてこずる辺り、やっぱり先輩達も鍛えてたんだろうな。
僕達が競技場から退場してくると、見知った顔が待ち構えていた。
やたら着飾った小柄な少女…ムーン。
「あ…」
「…何で僕の方に?」
「あ…の…」
フレシアが居た位だ、妹の彼女も一緒に来ていて不思議は無い。だけど、足を焼いて医務室行きの姉のほうでなく僕達の前にいることが不思議で問いかける。
だが、胸元を手で押さえたムーンは俯いてしまう。
フレシアを倒せる今の僕には強気に出れないか、情けない。
「喋りたい訳でも無いんだけど、用なら」
「ナード…」
早く言って通らせろ。
そう言うつもりで、フィアからの声に僕は言葉を止めた。
若干悲しげな、それでも僕の気分も察してか無理には口に出来ないといった感じのフィア。
「…先行ってて。」
僕は溜息を吐いて、フィアとリリィを促した。リリィにしたって医務室に行かなきゃならないし、午後にはネストも出るエキシビジョンがある。
二人が離れ、僕とムーンだけが通路に残る。
「あの…科学国のテロ…鎮圧したのが…皆さんだと…」
「だから?」
「う…」
たどたどしい言葉に苛立ちつつ抑えて本題を促そうとしたが、それだけで俯いてしまう。
くそっ…何なんだ今更怯えて…いや、いい。
「…何を喋っても止めそうだから黙ってるんだ、好きに喋っていいから。」
話を促す事が目的なんだ、怒る理由は無い。怯えているなら尚更だ。
「レイちゃ…レイナード様…は…私達に…酷い目に遭ってきた筈なのに…お姉さまを助けて先陣を切って下さったとも聞いていて…その…ありがとうございます…と…」
今更よく言う。と、二重の意味で思った。
一つは怒りで、もう一つは、そうなると普通に考えて誰でも思う筈なのに、わざわざ出てきたことに対する感心。
「フィアリス=スノウレールは家族に追い出されてる。それでも、家の人を好きらしい。」
「え?」
「魔法国はそういうものを尊ぶらしい。ネストも優しいし、僕はリトルフェアリーの一人として、牙をむき出しにする事を選ばないと決めたんだ。」
叱責、罵声を想定して怯えているんだろう彼女に、僕は浮かんでいるそれらを抑えて『光』を語る。
リトルフェアリーの一員だから怒らないと。そして…
「君達の事は関係ない。」
「っ…」
怒らない理由に、君の意思など関係ないのだと。
「…余計冷たいかもね、でも、だから冷静に認めるよ。フレシアが一応鍛えてる事も、君がそんな怯えながらわざわざ顔を出した事も評価する。だから話も聞いた。」
「ごめんなさい…」
謝る彼女に、僕は何も言わなかった。
気にするなも違う、許さないとも言わない、そうなると、言える事がなくなってしまうから。
「…オルミクスには孤児も住めるような地区がある関係で治安が良くない場もある、護衛つきで町を回りたければリトルフェアリーに顔を出せば良い。手が空いてたら貸すよ。」
だから、用事があるなら普通に応対するとだけ告げて、僕はその場を離れた。
通路を進んで…
曲がり角の影に、フィアとリリィがいた。
こういうの出歯亀と言うんじゃないだろうか?全く…
「貴方…アレでは歩み寄りとは到底」
「いいの、い、行こうナード。」
渋い表情のリリィを止めて、医務室へと手を引くフィア。
フィアはアレでも僕なりには対応したと思ってくれたんだろう。
…まぁ、不幸を願うのは止めておくさ。
怒りも憤りも無い訳じゃないが、先に告げたとおり他に大事なものがある。
この都市を作り僕を連れ戻してくれた校長先生に、彼女を追うと決めて僕に救いをくれたネスト。
二人が願いを叶える力を提唱しているんだ、人の不幸は願える筈がないから。
SIDE OUT
ナード、懐広いんだか狭いんだか、冷たいんだか優しいんだか(苦笑)。




