↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/43

第20話・自然身体強化と強種族の因子




第20話・自然身体強化と強種族の因子



Side~フィアリス=スノウレール




ネストは殆ど一人であれこれと競技会の準備に飛び回っているため、私とナードは学校に必要最低限顔を出して、後はずっと鍛錬していた。

半年。

その程度でどうにかなるなら騎士だってもっと体得してる人は多いと思うけど、元々戦闘訓練を主としていることと…


壊れたら治せばいい、と言うレベルの薬剤の揃え方をしての鍛錬のお陰か、徐々に体が変わっていった。


実際、肉離れとか骨折は何度したか記憶にない…シイルが作ってくれた薬が無かったらとてもじゃないけどやってられなかった。


けど、その甲斐はあって…


「はっ!やっ!」

「っ…っと…」


短剣からの回し蹴りを下がって回避され盾で防がれる。

私は風の速射魔法を併用して跳躍。木の枝の根元に着地して、近場の枝を左手で掴みながら右手を地上のナードに向ける。


「これでっ!!」


速射の氷の針の連射。

連射と言っても工程を省いて魔法を構成して放っているだけのため、単発が少し短い間隔で飛ばせると言う程度で、さすがにあたってはくれなかった。


「上からは、少し、面倒だっ!!!」


器用にかわしたり盾で捌いたりしていたナードは、死神の剣を振り上げながらブースターを吹かす。


「え、ちょ!」


器用に使うようになったなぁ…なんて思ってる場合じゃなく、私の立っている枝が切断された。落下の衝撃を風の速射魔法で殺して着地して、上を見る。


「…って!それは勘弁してよっ!」


ナードは、もう一つの死神の剣を振り下ろしてきていた。

あんなもの高高度から落下の勢いのせられて食らったら治る怪我じゃ済まない。


どうにか転がって回避した私は、着地したナードがいるだろう位置に向かって氷の針を放つ。

転がりながらだから殆ど勘。

だけど、方向は当たっていたみたいで、剣を盾にして氷の針を受けていた。


「…ふうっ。」

「はぁっ…」


私とナードは息を吐いて武器を納めた。


「意外と何とかなるのね。」

「何とかした…って言うほうが適切だけどね、コレだけできたらどの程度なんだろう?」

「さぁ?でもオークと力比べくらい出来るんじゃない?これつけての体重多分同じくらいだろうし。」


私達は腕を上げて手首を見たり、足を上げて足かせを見たりする。

かなりの重量だけど、それなりに試合っぽいことにはなった。

当初は動く事すらままならなかったもんなぁこれ…


「とりあえず普通の依頼に顔出してみない?いい加減リリィに任せっきり過ぎるし。」

「そうだね、足りなければ重量増やしてまたやればいいか。」


時々こそ手が足りないと回ってきたものを家で作ったりしてたけど、基本的には殆ど依頼には関われてない。

モノにできてきた以上いい加減少し位顔を出すべきだ。



「お二人ともお久しぶりですね、少し遅すぎます。」

「まぁまぁユリア、リリィさんは元々ここを引き継ぐつもりでやってるんだから。」


うん、顔を出すべきだったらしい。

来て早々ユリアから刺々しい対応をされた。

シイルがフォローを入れてくれるが、それよりも他に人がいないことが気になった。

リリィが招いた新入生とかも数人いる筈なのに…


「遅すぎるって?」

「スタアさんから何れって言われてた依頼の調査に向かったの。リザードドレイクと鉢合わせになった鉱山道の護衛の辺り?」


ナードの問いにすんなり答えてくれるシイル。

けど、私はちょっとピクリとした。緊張って言うか、つい肩に力が入ったと言うか。


「…僕達も追おうか、馬車が一本遅れても護衛と調査をやってれば追いつけるだろうし。」

「そうね、ゴメンね二人とも。」


ナードも同じなのか、割と真面目な声で誘われた。

杞憂ならいい。けど、珍しい鉢合わせとは言えリザードドレイクと会った場所だ、リリィ一人と新入生じゃアレに会っただけで危険なはず。

私達は久しぶりにシャツと手足を重りを外して部屋の隅に置いてから部屋を出た。







馬車に乗ってシエントに着くとそこからは駆け足気味で目標の山林へ向かう。

身体は嘘のように軽くてまるで疲れを感じなかった。

さすがに近場までは工事の人が開いた道を進んでいるはずと、鉱山に向けて整備されている道をひた走る。


と、木々の中からかけてくる数人の人影が見えた。


「あれ!?スタアさん!?」


顔と名前の一致しない二人の後からかけてくるスタアさん。

前の子達は半泣きで、私達の姿を見つけると縋るように崩れ落ちた。


「こ、この奥…リザードの群れ…リリィさんが…時間稼ぐって…」

「二人とも、少しスタアさんをお願い!」


さすが研究者。

息が切れて片言ではあったけど、必要な情報は全部すぐにくれた。


泣いてる子達に悪いけど私とナードは全速力でスタアさんが指差したほうへ駆け出した。





やがて、囲まれないようにしながら全身に傷を作って木々の間を駆けずり回っているリリィの姿を見つけ、私は走ったままで跳んだ。


「はっ!!」


飛び込んでリザード…リザードドレイクの一体を蹴り飛ばす。

驚くほど身が軽い…まさかリザードドレイクを跳び蹴りで吹っ飛ばせるとは思わなかった。


「これなら何とか…勝負になるかなっ!!」


死神の剣を両手にリザードと斬りあいに入るナードも、ブースター無しで勝負になっている。

けれど…


「この数はっ!洒落になってないっ!!」


リザードドレイクだけで4匹。他も含めると20近い数になるんじゃないだろうか?

しかも、結構な数が武器を持っている。


そんなに距離も無かったのに泥だらけで傷だらけのリリィの姿を見るに時間を稼ぐ為に槍で応戦しながら戦っていたらしい。


「リリィ!私たちで時間稼ぐから」

「馬鹿言うんじゃありませんわっ!!」


槍を手にリザードの斬撃を辛うじてしのいでいるリリィ。

くっ…こっちだって余裕があるわけじゃないのにっ!!


「このぉ!っ!あぐっ!!」

「フィア!くっそぉっ!!」


一匹吹っ飛ばしてリリィを庇おうと思ったら、背後から迫ってきていたリザードに尾で撥ね飛ばされた。


「っえぇいっ!!!」


と、私の前に立って左腕で槍を一閃したリリィ。

凄まじい力で、私にトドメを刺そうとしていたリザード二匹を弾き…


槍を振り抜いたリリィの指から血が弾け、その腕が垂れ下がり、滑るように槍が離れる。


「ば、馬鹿!」


咄嗟にリリィが何をしたのか察する。

身体強化。

ロストリミットなしに戦闘中にやろうとすると『こうなる』から、私はナードとずっと無茶な訓練をしてきたんだ。

けれど、無視するように槍を蹴りあげたリリィは、無事な右手で槍を掴む。


「高貴なる者の…リーダーの勤めです。末席とてコンダクターに名を連ねる私が、一人で先に引くなど有り得ません!!」


一喝。それは数でも力でも勝るはずのリザード達を一瞬押し止める程の気迫を持っていた。


「キシャアアァァァァ!!!」


本能か意図があったのか、先頭のリザードドレイクが叫ぶと同時に、再び一斉に動き出す。

くっ…負けられない





リザードドレイクがいきなり全員倒れた。




一瞬見えた影。

それの所業なのは何となく分かった。

姿は見えなかった。

でもそれが誰なのかは何となく分かった。


「ネスト…」

「悪い待たせた。さてと…まだやるか?」


リザードたちは動かない。

それはそうだろう。自分達のリーダー枠の強いことをよく知っている亜種のリザードドレイクが一瞬で全滅したんだ、言葉なんかわかんなくたってやる気に何てなる訳がない。


ネストはしばらくリザードたちが動かないのを見て、倒れたリザードドレイクを順番に指差すと、手を扇ぐように振った。


連れて帰れ。を、ジェスチャーでやったのだろう。


恐る恐る倒れた仲間に近付くリザード達に、ネストは頷く。やがて少しして、仲間を引き摺るようにしてリザード達は逃げ出した。


「ふぅっ…皆大丈夫か?」

「…身体はね、かなり修行したのに一瞬で片付けられてへこんだけど。」

「そっか。ま、俺も無茶したからな。」

「ちょ、ちょっと待って!リリィが」

「うるさいっ!!!」


片腕が大変なことになってる上に全身ボロボロのリリィ。

とても大丈夫と言えない様子の彼女は私を突き飛ばすように離れると、ネストの前まで行って、汚れもなにも気にせず地面に膝をおった。


そうして頭を下げようとしたリリィ。

けど、ネストはそんな彼女を通りすぎ…


「ほいっと。」

「ひゃぁっ!?」


襟を後ろからつかんで背骨をついただけで彼女を立ち上がらせた。リリィは慌ててネストを振り返る。

私に背を向けていたリリィ。振り返るとその顔が涙でぐしゃぐしゃなのが見えてしまう。


ネストは腰から瓶を抜くと、リリィの顎をそっとつかんで瓶の中身を口に流し込んだ。


「んぐっ…ぷはっ…い、いきなり何を…あ…」


さすがに動揺してか左腕をつき出すリリィ。

…左腕、治ったの?今の薬で?


「あー…その…なんだ、お疲れ様。ごめんな遅くなって。」


顔をそらして謝るネスト。

呆然とそれを聞いたリリィは顔を覆って泣き出してしまった。

リリィの家も名家なんだ、結果をしょうがないとか言えないんだろうなきっと。


でも…いつも通りっぽいネストを見てなんだかホッとした。




SIDE OUT




俺がスタアさんと約束してた依頼出た話を家のポストに手紙だけ置かれてるのを発見して慌てて駆けつけたが…いやビックリした。まさかリザードドレイク複数体が指揮する群れに襲われてるとは。

さすがに居ない所で死人が出てたら俺でもどうしようもない。

ユリアって大事な人がいるリリィを下手に撫でたりとかするのもどうかと思ったので、それ以上は触れずに俺はフィアとナードを見た。


ナードに睨まれてた。


あ、アレ?珍しいな?何でだ?


「ネスト…この半年ずっと交流協議会の為に飛び回ってた筈だよね?何でそんなやたらと強くなってるのさ。」


さすがにナードが怒る理由が分かった。この半年、詳しく何してたかまで聞いてないが、あの重さの鍛錬器具を見れば結構頑張った事位は分かる。

事務っぽい事してたのにいきなり俺も強くなってたらそりゃ怒るか。

俺は、手を握ったり開いたりしてみる。…うん、普通にも強くはなってるみたいだな。


「細々とした移動の時に出来る限りロストリミット使ってたんだよ。どうせ報告とか把握とかで飛び回る必要あったし、屋内とかで乗り物使えないからな。」

「ごめん、拗ねて…って言うか、むしろ馬鹿なことはやめなよ本当に…」


謝るのを通り越して心配交じりに怒られた。

システム任せに身体をバランスよく強化するが、代謝や処理系統が追いつかなくて身体がまいるロストリミット。

そのロストリミットの状態の方に…消耗速度に身体の方を慣らしてみた。

上位騎士達も戦闘を繰り返す中でそれが必要だと身体が感じる事で身体が力を使う状態に持っていくと自然に身体能力に反映させられるようになる。

治りが追いつかないと単に故障者になるだけだが、そこは薬品でブーストした。


「フィア、俺は先に行ってるから三人でコレ採取してきてくれ。」


俺は適当に使えそうな植物をメモった紙をフィアに手渡し踵を返し…





「って訳ですみません!皆も危険な目に遭わせてごめん!」


先行して街道に待機していたスタアさんと新入生達に頭を下げた。

人型の天災指定受けた時の備えとリリィに主導を任せたものの、だからって加わらな過ぎた上に俺との約束だった依頼をリリィが引き受けてくれたんだ。

挙句あんな強敵に殆ど単騎でやらせるとかありえない。


「い、いえそんな!リザードドレイクについては聞いた上で来ましたし、そもそもあの数は異常です。あの…リリィさんは…」

「大丈夫、採取を頼んだので少ししたら来てくれます。」

「そうですか…無事なんですね、良かった…」


ホッとしてくれるスタアさん。

いや、護衛しくじったような状態なのに…優しいなスタアさんも。


「えっと、こっちの調査ですよね?何なら必要なデータあるなら俺が行ってきますけど…」

「いえ、実はリザードドレイクに鉢合わせたと言うだけで結構大きな情報なので。」

「え…」


にこやかに告げるスタアさんの反応を見る限りそれは間違いではないのだろう。

が、それなら逃がしたのは失敗だったかもしれない。

サンダーイーターのクローンの一件であった、何だかんだ結局殺してるのは一緒だって話が引っかかって、どうにでも出来る相手の皆殺しに気が引けてしまった。

だが、そもそも今回の数も狙って集団行動してなきゃ揃わない数だ、逃がすのに後々の不安がないわけではないし、今からでも追撃…うーん…逃がしてそれは外道が過ぎる気も…


「半年前のリザードドレイクの素材がまだ残ってるから、それ要りますか?血液は薬品に使っちゃったんですけど…」

「本当ですか!?それは是非…あ、でも素材という事は皆さんも必要なのでは…」

「いや、皆殺しを避けただけで倒すなら倒せたんですよ…調査だって事は分かってたのに…俺の手落ちなんで。」


考えながら浮かんだ妥協案に喜ばれ、あえて逃がしたと謝ると、スタアさんは意外そうに俺を見る。

歩み寄ってきたスタアさんは、両手で俺の手を取った。


「それは謝らないで下さい。きっと大事だと思いますから。」

「…すみません。」


研究者となれば邪魔な気持ちかもしれないが、俺の手を取ってそう言ってくれるスタアさん。本当ありがたいな色々と。






戻った俺達は、とりあえず疲れてる新入りの二人を返した上で、家にあるリザードドレイクの皮や肉のいくらかを持ってスタアさんの所属する研究所へ顔を出した。

リリィは肩身が狭そうだったものの、スタアさんたっての希望で同行していて、スタアさんは研究所にあった分布図を見せてくれる。


「一年前にいきなり竜に遭遇、そしてそう遠くもない山林にはリザードドレイク。こんな人が近い場所でコレは明らかに異常です。」

「確かに、そもそも人が簡単に倒せない相手の傍に村だの町だの作らないからな。」


俺達と去年竜にあった場所と、今回のリザードドレイクとの遭遇場所の記載に、別の資料を比較するように机に広げるスタアさん。

どうやら昔の分布図らしかった。少し見かけた生命体が変わってて、俺達が開拓を護衛してた鉱山への道っぽいものもない。


「20年程前の近隣の生態では、リザードとの遭遇率もそこまでではありませんでした。オークと虫派生の魔物が中心で…」

「竜種って僻地を住処にしてるんだよな?そんなに数もうろついてないって認識だけど…」

「はい、ですから異常なんです。生息域を変えているのか数を増やしているのか、どちらにしても…」

「人里が危険って事ね。」


締めくくったフィアの言葉に頷くスタアさん。

本来の竜種の生息域はこの間開拓した鉱山よりももっとずっと奥の山の方だと言われている。

言われてるってのは、そんな場所まで行く馬鹿は基本帰って来れないし、帰ってこれるような人型の天災指定を受けた連中は今度は好き勝手できない。


「あんなのと会いやすいんじゃ危険だよね…科学国でも普通の銃じゃどうにもならないだろうし。」

「一応ミルアークさんには報告したのですが、人型の天災指定の関係か歯切れが悪く…竜相手に普通の部隊に向かってもらうと何人犠牲になるか…」


スタアさんの重苦しい言葉の通りで、反省しているリリィだが実力に不足があるってわけじゃない、あんな物普通は相手に出来ないんだ。正規騎士団でもリザードドレイク一体にすら何十人要るやら分からない。

本物の竜種が近場で増えていれば大事だ。


「それで、皆さんにもこのことは知って貰うだけ知っておいて欲しくて。研究所で情報だけ揃えても、結果誰にも使えなかったら意味がないですから。」


俺達を見回して告げるスタアさん。

…だから、リリィも連れて来たんだろう。いつ何がどう問題になるか分からないが、リリィは魔法国名家コンダクターの一人娘。

町や人に危険が迫ったなら助けに行けるだけの力の一つではあるから。


「分かった、覚えときます。さすがに単騎で竜種どうにかできるとは思えないですけど。」

「よく言うよ。」


重めの空気がアレだったので軽口っぽく返すと、ナードに一言で切られた。

いや、よく言うって…と、全員を見回したが、フィアには目を逸らされリリィには睨まれてた。

あ、あれ?リザードドレイク殴り飛ばしたのも一応苦労した修行の成果なんだけど…

何か俺超人枠にされて無いか?田舎出の学生なんだけどなぁ…







交流競技会の準備で会う機会の多い俺は、スタアさんからの話の翌日ミルアーク先生に気になった事を聞いて見る事にした。


「なぁ、ひょっとしてミルアーク先生竜種発生の件に絡んでたりする?」

「あ?」

「時期が20年程前と違うって話で、成竜になるまでにも期間いるかと思って。」


そう…20年程前には無かった一件で、ミルアーク先生が規正される前。

不老化を課題に出されてた先生なら、例えば手持ちの竜の因子をリザードに組み込んで増やすとか考えてもおかしく無い。


「…無関係と言い切れんかもしれん…って程度さね。」


渋い顔で、先生は少しだけ肯定した。


「竜素材は生命関係に高い効果を発揮する、不老の身になれって課題を受けた際に縄張り近くまで遠征して探してたのさ。かさぶたや鱗の一枚でも拾えれば足しになるし、襲われても返り討ちにするいい訳になる。」

「そりゃまた…酷いな。」


気の毒な話だった。勿論竜に。

縄張りに知らん奴が来たら襲って当たり前だし、まして竜種だ。

草食動物じゃないんだから逃げるって選択肢はそう無いだろう。


「でも、それかえって減るんじゃないか?」

「普通はそうさね、ただ、減ったら増やさんかね?彼等数が少ないのは生む生命力が無いからじゃなく、固体単位で長寿が過ぎる上に巨体だから増やしてないってだけだし。」


言われて思う。

確かに個体数の少なさから、繁殖力が少ないと思われているが、出産程度で死ぬわけも無ければ生まれた子供にしても下手したら生まれたときから他の種族より命として強いだろう彼等が子供を増やす力が無いというのは見当違いが過ぎる。

良く死ぬ魚とかが滅茶苦茶な稚魚を生むのと反対で、そうそう死なないから数増やして無いだけと見るのが妥当なら…


「そっか、生命力の塊みたいな種族が子供生む力だけ無いわけないよな。…上手く伴侶が見つかるかは別だろうけど。」


殺しても死なないだろうが子供は出来そうに無い人を見ながら苦笑い。

薬巻を素手で握りつぶした先生は目を吊り上げて俺を睨んでくる。


「あたしを見て言うんじゃねぇクソガキ。自分は女はべらせてるからって。」

「え?」


前半はともかく後半については訳が分からなかった。

シイルはナードのファンでリリィはユリアと結ばれてて、実家の幼馴染は振り切ってオルミクスへ来た身。

フィアは家戻りたいわけだし、はべらせてるって俺関係ないん…じゃ…


「な、何ですか?何で睨んでくるんですか?」


自分周囲の状況を全部省みていたのだが、何かさっきより先生の目が厳しくなって…


「…地獄に落ちろクズ野郎。」

「何でっ!?」


ぐしゃぐしゃになった薬巻を顔面に投げつけられた。

なんか俺、理由も分からない所で怒られてる事が多い気がするな。




Side~レイナード=マーシナルス




訓練の成果はとりあえずモノになっている事が確認できたからよしとするとして、それとは別にやっぱり銃が壊れたままなのは僕には問題らしかった。

一応死神の剣で応戦してみたけど、いつ何されるか分からない近距離でぶんぶんと振り回し続けるのは気が気じゃない。


「銃が無いとやっぱり厳しいかな…そもそもアレは射撃で倒せたとは思えないけど。」


机に置いた、壊れた雷撃銃を眺めながら紙を弄る。

リビングでやっていたからか、部屋から顔を見せたフィアが覗き込んできた。

隠すものでもないけど、未完成品の案を見られるのもなんか皮算用覗かれてる様でむずがゆい。


「設計図?」

「うん。」


紙を見て、不思議そうに指差すフィア。

二つ書かれている銃を指差しながら、二つの案ではなく、それで一つの案なのだと気づいたらしい。


「二丁マテリアルウェポン、双雷銃。」

「複雑すぎて何がなにやら…くっつけたり外したりして魔力正常に送れるの?」


仮の段階だから名前も仮だが、フィアの言う通り二丁の銃を組み合わせて扱う事ができるハンドガン。

組み合わせた際に二丁にチャージした分の魔力を纏めて単発で打てるように…したいが、そのための精霊石の配置は僕には分からない。

フィアの言う通り、魔力の伝達経路とかそのロスとかは僕の専門外だ。神秘の計算とか出来るか。


「精霊石の機能に関してはちょっと僕も保障が…パーツはともかくこの辺はネストに見て貰いたいけど…」

「さすがに今は忙しいよね。」


交流競技会にせいを出しているネストにまさかこんな話を振る訳には行かない。

そもそも、ネストが平和に忙しいなら強敵用の準備なんて考える必要は無いんだけど。


「後は…コレかな。」

「今は一回爆発起こすと強度的にもたないんだっけ?」


BDSを組み込んだ金属の靴。

初手では爆発加速のために組み込んだ精霊石ごと砕けて壊れる高コストの使い捨てになってしまい、加減した今でも爆発加速時に機構周辺がひび割れ、精霊石以外は壊れかけの靴に成り下がる。


「いい加減もつ金属に変えようと思う。身体はもう壊れないだろうし爆発自体強化しても大丈夫だろうし、チャージできるようになれば魔力が持つ限り使えるようになる。」


今回の修行で爆発受けても多分簡単に足首を壊すような事にはならなくなってると思う。

あの修行用の重りで動いて跳んでも身体壊れなくなってるし。


…追いつく気でいて、引き離された気すらするからな、今。


リザードドレイクを一瞬で四体吹っ飛ばした挙句全員生きて返すなんて芸当をして見せたネストの事を思い出し、僕は拳を握る。

楽じゃないのは分かってるけど、楽でなくてもついてけないのは想定外が過ぎる。

何とかして…


「フィアの方はどうなの?装備とか、魔法周りの新調は。」


一人思いつめかけた所で、フィアが傍にいることを思い出して思いつきで話を振った。

思いつきすぎて自分でもどうかと思う。魔法の新調って…


「装備はともかく魔法の新調って…そう簡単に言わないでよ。」

「そっか、神秘性とかで大事にしてるんだっけ?」

「それもだけど…」


あんまり便利とかで話を振るのは魔法国では推奨されてない。

それで渋ったのかと思ったけど、フィアにはまだ別に理由があった。


単純に強化するだけなら炎魔法を修得すると言う手があるから答え辛いんだ。


少し考えてみると、名家の凄腕の人は得意属性の弱点を使われた際のフォローにその弱点をサブで修得しているらしい。修得にそれほどの不都合が無いとも聞く。

フィアの身体は炎に馴染んでいて、氷が弱点で扱い辛く、氷の弱点は雷になるから…


「…いっそスパークファング使えるようにしたら?氷強化するより楽だろうし。」


僕の案にフィアが意外とばかりに目を丸くする。

炎か氷かばかりで、他を身につけるって考えた事が無かったのかな?

近接戦闘慣らしてたときには跳躍の補助とかに風の速射魔法使ってたりしたのに。

応用…って頭はあんまり無いのかもな。利便性とか追求するような場所じゃないから。


「それはリリィに怒られそうだからやめとく。」


唐突に頬を引きつらせたフィアは目を閉じてそう言った。

興味を引けたかと思ったけど、フィアの言葉にスパークファングを使うフィアを見たリリィの反応を想像する。

…確かに煩そうだからやめておいたほうがいいかもな。



SIDE OUT



竜因子を持った生き物が傍に生息…喩ると、公園の傍の森に羆と恐竜がって感じでしょうか…絶対やだろうなぁ民間人(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。