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式神使いのVRMMO漫遊記  作者: ナイアル
序章:チュート(はんぱに)リアル
12/19

11.里帰り

 京の北、ミカゲの先導で静かな山間の林を歩く。

 ハルナさんに連れて行かれた時は一瞬だったけど、こんなに遠かったのか。すごいなカリョウちゃん。

 僕らの後ろをおっかなびっくり付いてくるトキワさんが、しきりに首を傾げるのが気になった。

「どうしました?」

「いえ、こんなとこ地図にあったかなあと」

「……地図?」

「京周辺は詳細地図作った人がいるっすよ。でも……さっきから地図にない道を歩いてる気がするっす」

 道と言っても獣道とか道なき道とかそう言うレベルの踏み分け道なんだけど、そういうものまでその地図は網羅してるんだろうか?

 そもそも、こんな山の中で位置関係とかどうやって把握してるのやら……トキワさんはたまに侮れないから困る。

「んー。仙道ー」

「招かれざる客には道すらわかぬ結界よの。はぐれれば二度と帰れぬぞ」

 なにそれこわい。

「いえ、主様は大丈夫ですが」

「ん。公主様のお気にー」

 慌てて取りなした二人の言葉に、トキワさんの腕が背後から僕の腰を締め上げる。

「ちょ、なにするんですか」

「は、はぐれないようにするためなんだからね!」

「なにそのとってつけたようなツンデレ演技!?歩きにくいんだから放してくださいよ!」

「いーやー!置いてかないでえええ」

 無理矢理ふりほどいたら、へたりこんで泣き叫びだした。ああもうめんどくさい。

「はい」

「ふえ?」

 差し出された僕の右手に、きょとんとするトキワさん。

「はぐれないため、ですよ?手を繋ぐくらいなら邪魔になりませんし」

「う、うん……ありがとう」

 妙にしおらしくなったトキワさんが僕の手を取る。クレハとミカゲの殺気が増して、トキワさんの危険はむしろインフレが止まらなくなった気がするんだけど……本人妙にうれしそうだし、黙っておこう。

 ……鳥の鳴き声まで聞こえなくなったのは……き、気のせい気のせい。

「――繋いでいたと思っていた手が、いつのまにやら人ならざるモノの手に……」

「ひぃぃっ?」

「あ、あだだだだだ!?こら、クレハ!」

 クレハがぼそっとつぶやいた怪談風の脅しに、トキワさんの手が万力みたいなパワーで僕の手を締め上げた。

「からかうのは良いけど、僕に実害がないように!」

「申し訳ございませぬ」

「ええっ、そっちっすか!?」

「……手、離しますよ」

「すみませんっしたあ!」

 ふりほどかれまいと握りしめようとして、でもここで握りしめたら余計にふりほどかれそうだし……と、あわあわし始めるトキワさん。

 はっはっは、かーわーいーいー……はぁ。



「よう来たのう」

 洞府に入ったと思ったら、そこはもう白楼公主さまの部屋だった。

 この間来たときのような怪しげな洞窟を降りる道なんてなかった――この洞府の物理的な接続は一体どうなっているのやら。

 ずるりと鎌首をもたげる公主さまは……えっと、前よりだいぶ大きい気がするんですが。

「どうもこのたびはお招きにあずかりまして……ご覧になっていたんですね?」

「妾の用事でそこな子狐が泣いたとあっては、いかにも寝覚めが悪うてのう」

 責めるような口調で見上げると、公主さまが実に愉快そうに目を細めていた。

 子狐呼ばわりされたクレハはというと、平伏しつつも何やら不満げにしっぽをはたりはたりと揺らめかせている。気持ちはわからなくもないけど、さすがに洞府の主と事を構える勇気はないようで一安心?

「しかし、しばらく会わぬうちに面白いものを手に入れておるようじゃ、のう!」

「うひぃぃぃっ!?」

 高さが自分の身長ほどもある顔を間近に寄せられて、さっきから腰が抜けてたトキワさんが悲鳴を上げる。

 横から見てるとにんまりという感じに口角の上がった口の先から、二股に分かれた赤い舌がちろちろと見え隠れしている……楽しんでるよなあ、あれ。トキワさんは生きた心地してないみたいだけども。

「のお、小娘。式神のなんのとう言うても妖異怪異の類に過ぎぬ。相棒とやらが長じて妾のような化け物となっても、お主はそうして怯えるのかや?」

「あ……く……」

 何か反論しようとして、それでも声にならずに口をただぱくぱくと開け閉めするだけのトキワさん。

「友と信じ主と目した人間に怯えられ、拒絶された式神は、どれほどつらい思いをするかのう」

 ぐくう、と喉を鳴らしたのは、笑いをかみ殺してるだけだと思うんだけど……ブレスでも吐かれると思ったのか、トキワさんは顔をかばうように両手を持ち上げた。

 

 クレハやミカゲ、シラハギが化け物になって――という姿がまず想像できないんだけど、例えば今の公主様みたいに大きくなったとして……怖いかっていわれると……ううん、まず公主さまの姿を怖いとは思ってないしなあ。

 でも、何かの事情で彼女たちを拒絶するようなことになったとして。

 想像するのもいやだけど。

 友とも相棒ともいえるみんなを失って、つらい気持ちになるのは僕――式神使いのほうも同じなんじゃないかな。

 

 

「いい加減なぶるのはやめておけ。儂らを見て恐れぬほうが稀よ――まして、そこの小僧のように、目を輝かせるようなのはな」

 地鳴りのように響く笑い声で公主さまを諌めたのは、いつの間にやら地面に寝そべっていた一匹の狼?

 素直に狼というにはちょっとサイズがかなり異常というか、地面に伏せた状態ですでにやたら巨大化してる公主さまのとぐろと同じくらいの大きさで、首周りにはまるで襟巻かライオンの鬣のように、真っ赤な炎が纏わりついている。

 何よりも目を引くのが、その毛並。呼吸とともに波打つ真黒な毛並が自らの炎を照り返して艶やかに輝いてる様子は、上質の絹織物を見るかのようで……撫でたい。いやしかし、下手に触ると火傷しそうな……ぐぬぬ。

「赤揺山の洞主、煉牙大公よ。うちの弟子が世話になっておるようだし、ちと挨拶にな」

 赤揺山といえば、以前もちらっと聞いた名前だ。たしか、クレハの実家……だっけ。

「師父におかれましてはご機嫌麗しゅう……」

 平身低頭しすぎて平面になるんじゃないかってくらい頭を下げたクレハががくがく震えながら挨拶してる。耳としっぽまでべったりと伏せられ、なんというか見る影もない。

「はっはっは、そんなにかしこまらんでもよい。いつものように『おとうちゃまー』とでも呼んでくれ」

「そのような『いつも』は記憶にございません!」

 怒りだか羞恥だかで顔を真っ赤にして起き上がったクレハは、その勢いで緊張が解けたらしい。くっくっと毛皮を波打たせて笑う「おとうちゃま」に頬を膨らませているのが確かに子供っぽい。

「気ぃ良くやっておるようで何よりだ。これなら問題もなかろうて」

「師父!」

「……問題?」

 かわいらしく怒ってるクレハを無視して、こっちに目をやる大公さま。

「そこの婆さんが言うたろう。儂らの姿を見て怯えるようなら、この先共に修行していくにも故障がある。他にも、式神を蔑ろにする使い手などもおるからな。符を預けてからは暫し様子を見て、相応しからぬようであれば――」

「契約を破棄する?」

「まあ、坊主には関係なさそうだが……これは、孫の顔を見る日も近いか?」

「しいいいいふううう!?」

「いやさ、赤揺山の。それはまだちと早かろう」

 ……がるがると牙をむき出して唸り始めたクレハを見かねたか、公主さまが大公さまを止めに入って――

「うちのミカゲめのほうが先であろうよ」

「ん」

「ちょ、亀え!?」

 ――くれなかった。

 公主さまの言葉にミカゲが鷹揚にうなずくもんだから、クレハの怒りと混乱もマックスに。

 キッとミカゲのほうに振り返るけど、さすがに二人もの洞主の前では掴み掛るわけにもいかず、ふうふうと荒い息を吐くだけに抑えている。

「いやしかし、名を受けたのはうちの娘が」

「子狐めは本性を受け入れて貰っておらぬのじゃから、ミカゲに一日の長ありよの」

 洞主二人の代理戦争がヒートアップ。最強魔獣ふたりの会話なんて、この場の誰も止められそうにないしね!

 そういやミカゲは亀の姿――黒い宝石のような甲羅が美しかった――を見てから契約した。それに対してまだ「狐」としての姿を見ていないクレハのほうは、いわば「仮契約」ってことなのかな?だとすれば、どっちが先というのも……うーん。さらにここにシラハギとユウまで加わると、優先順位とか言ってる場合じゃない気も……いやいや、子供がどうとか祝言がどうとか、考えてませんから!

 硬直したまま周囲のグダグダな状況に置いて行かれてるトキワさんに思わず合掌……むしろ僕もこっちの仲間入りをしてたほうが幸せだったのかもしれない。


「ふん、ではとっとと本性を見せてしまえばよかろう」

「し、師父?……きゃあっ!?」

「クレハ!?」

 大公さまにぷうっと息を吹きかけられたクレハがゴロゴロと床を転がり……どべち。壁に衝突して止まった。

 そこにのびていたのは、いつ変化が解けたものやら、まだ小さな子狐。

 耳としっぽの毛並でクレハだってことは簡単に見分けがついたけど、目を回したままピクリともしないのは不安だ。早く駆け寄って撫で……いや、息があるか確かめないと。

「そこで思わず毛皮に手が伸びかけておるのはいかがなものかのう」

「愛されておるには違いあるまい。それより、始まるぞ?」

 大公さまの声に首を傾げたと同時。

 ぼっ、とクレハのしっぽに炎が灯った。

 そのまま、ゆらゆら、ふわふわとしっぽの周りを漂う様子は、彼女の〈狐火〉を思わせる。

 揺らめきながら、時折ぼっぼっと、小さく吹き上げるように瞬いて――

 ひときわ強くぼっと弾けると、尻尾から全身へと体の表面を駆け抜けるように炎が走り、その航跡を濃いオレンジに染め上げる。

 幾筋もの炎が駆け巡りながらクレハの首筋へと集まり、最後に、耳の先に小さな炎がぽっと灯っておさまった。

「う、くうう」

 呻きながら伸びをしたクレハの全身は、赤やオレンジのグラデーションで炎の絵が描かれ、尻尾と耳の先に纏わりつくように小さな鬼火が踊っている。

「……はっ!?」

 ようやく、驚いたように見つめる僕の視線に気づいたらしい。大きく身震いすると、ぽんという煙とともに再び人化した。

「お、お恥ずかしいものを」

「いや、綺麗だった……きれいだ」

 変化した緋袴の裾にも赤とオレンジで炎の模様が入り、袖の裾も淡いオレンジのグラデーションに染まっている。

「き、きれ……!」

「うーん、でもこれじゃモフれないなあ」

 僕の言葉に身をよじりかけてたクレハが、続くセリフに肩を落とす。

 彼女の耳としっぽには本性同様に鬼火が点っており、下手に触ったりしたら火傷しそうだ。

「もうっ!主様はそればっかりですか!」

「なあに、気を許した者を焼くほど無粋な炎じゃあらんわい」

 頬を真っ赤にして怒るクレハの様子に、大公さまがからからと大笑いする。

「ということは、大公さまの炎も……」

「儂を従えられよう程に修業を積めば、焼かれることもなかろうなあ。その時は思う存分『モフる』が良いわ」

「主様!師父!」

 もうっもうっ!と牛の鳴きまねを始めたクレハに、僕と大公さまの笑いが増した。



「さて、いい加減身にしみたかや」

 どろんと人型になった公主さまが、手にした扇でトキワさんの額を軽く小突く。

「う、うう……」

 額をおさえて涙目で見返すトキワさんは、まだ言葉を発せられるほどには回復できてないようで、ちょっとかわいそうかもしれない。

 その様子のどこが気に入ったのか目を細めた公主さまが、ぱちりと開いた扇で口元を隠して小さく笑う。

「ま、あちらほど馴染めとは言わんがのう」

 微妙にふかふか感の増した気がするクレハのしっぽを撫でてた僕に矛先が向いた、らしい。

 恐る恐る触ってみた炎は本当に熱くなく、ひと肌よりちょっと温かいぬるま湯にでも手を突っ込んだみたいだった。

 ちなみに尻尾の持ち主は、大公さまと延々嫁がどうだの孫がどうだのと不毛な言い争いを続けている。

 ……僕は何も見えない聞こえない。うん、クレハのしっぽは気持ちいいなあ。


「と言うて、ここまで来て何もなしではお主も納得せぬわな」

 こくこくと頷くトキワさんは、意外に根性が座ってるんじゃないかって気がしてきた。

 ……あの明らかに何か企んでますよーって感じの悪い笑みが、トキワさんには慈母の微笑みにでも見えてるんじゃないかとも思うけど。

「妾の洞府からやることはできぬ故、諏訪にある知り合いの洞府に口をきいてやるわえ」

 虚空からひらひらと舞い落ちて、トキワさんの両手に収まったのは、お札より若干分厚く大きい――書状?

「すわ……」

「どうせ帰り道じゃろう?」

「!……はい」

 おうむ返しのトキワさんに公主さまが言葉を重ねると、目に見えて動揺したのがわかる……何か問題でもあるんだろうか?

「んぃ」

 その横で様子をうかがっていたミカゲが、小さく不快そうな声を漏らした。

「……どうしたの?」

「んぃ。諏訪の蝦蟇、嫌ー」

 その言葉に凍り付いた者が約二名。

「いーやーじゃー」

 泣き出すクレハに、

「が、がま……」

 ぷるぷると生まれたての小鹿のように震えるトキワさん。

 カエルの卵にトラウマ植えつけられちゃったクレハはともかく、トキワさんには一体どんな嫌な思い出が……いや、詮索してはいけない気がする。


「ん!よし!が、ガマは想定の範囲内っす!」

 ほっぺたをぱしぱし叩いて空元気を振り絞るトキワさん。無理はしないほうがいいと思うんだけどなあ。

「くくく……此度のような態度では難しいと知れよ?」

「ううっ。が、頑張るっす……」

 公主さまの言葉で意気消沈するあたり、まだまだ覚悟が足りないと思うんだけど。




「そんなに怖がらなくてもいいのに」

「むむむ無理っす!怖いっす!」

 苦笑交じりに言った僕に、トキワさんが必死で首を振る。

 

 洞府を出てしばらく歩いてたどり着いた街道脇の茶店。なぜかデジャブを感じる店内に、真っ赤になってぶつぶつつぶやき続けるクレハと、頑として僕の膝の上からどかないミカゲ、それを僕の頭上から眺めてくすくす笑ってるユウの三人連れ。

 まだ式神使役のレベルが足りなくて、シラハギを呼べないのがちょっとかわいそう……本人はせいせいするとか言いそうだけど。トキワさんとの相性最悪だし。

 うららかな日差しがやけに温かく感じるのは、洞府の中が思ったより寒かったのかもしれない。


「だってどうあがいたって勝てないじゃないっすか!」

「そりゃ勝てそうにないけどさあ」

 ぽっくりの下駄をつっかけたユウの素足がトキワさんの頭をぺしぺしと蹴るふりをしてるのは見ないふり見ないふり。

「まあでも敵になるわけじゃないんだし」

「え?」

「え?」

 ……なんでそんな意外そうな顔を返されるのかがわからないんだけど。

「そもそも勝てそうにないとか通り越して、僕ら程度が喧嘩売ったところで相手にもされないと思うんだけど?」

 洞主の方々にしてみれば、アリがこぶしを振り上げた程度にすら感じないだろうし。

 今日のトキワさん相手にしても、顔を見て取り乱すような失礼な態度を取ったのにからかうだけでおさめて下さってたわけで……いやむしろ公主さまはあれを見たくて呼びつけた節があるけれど。

 大公さまときたら、延々嫁談義孫談義で「娘」をからかっていらしただけだしなあ。

 基本的に気のいい方たちなんだから、敵に回すのも一苦労だと思う。

「でも勝てないっす」

 そう説明してなだめても、トキワさんは頑なに首を振るばかり。

 ……いや待て。トキワさんのロジックが微妙におかしい気がする。

 

「えっと、勝てないから怖いの?」

「はいっす」

「シラハギは?」

「隠れて不意を突けば倒せなくないから怖くないっす」

「……負けてたじゃん」

「あ、あれは忍び寄ってる途中で転んじゃっただけで!」

 逃げてる最中にも転んでたよね、そういや……もしかして、トキワさんってドジっ子?

「クレハは?ミカゲは?」

「うーん、まだ何とか勝てそうだから平気っす」

「ダンジョンのボスとかも強そうだけど」

「メンバー集めて数で押せばなんとかなるから大丈夫っす」

「……ユウは?」

「〈見鬼〉ないし、有効な攻撃手段もないので怖いっす」

 よし、大体わかった。

 つまり……「怖いか怖くないか」の判断基準が「倒せるかどうか」、と。

 予想以上に脳筋だったらしい、トキワさんの思考回路に思わずめまいが。

「でも、弓といえば破魔矢とか……なんか、そういうの追い払う儀式とかなかったっけ?」

「破魔矢も〈鳴弦〉も、弓術師じゃなくて巫女さんたちのスキルが必要なんすよ」

 そういえば術の適性が一切なかったんだっけ……。

 ……いやむしろここは、数押ししてもどうにもなりそうにないという洞主のほうが異常なのか?

「それにしても、トキワさんも相手の力量とかよくわかるねえ」

「じいちゃん……えっと、あっしの師匠でもある祖父なんすけど、『まずは相手の力量を見極める目を養え』って叩き込まれたっす。強い相手からはとっとと逃げ出すのが一番賢い護身術だ、と。……あー、でも、勝てそうにない相手は敵に回さないようにしろとも言ってたっすね。言われた時は逃げるのとどう違うの?と思ってたけど……なるほど……」

 腕を組み、真剣な表情で何やら考え込むトキワさんは、こうしてれば美少女で通ると思う。しゃべりだした瞬間台無しだけども。

 しかし、トキワさんのおじいさんは中々いいこと言うね。

 敵の強さを見極められれば、無理に戦って負けることも減るだろうし、三十六計逃げるに如かず、かわいい孫娘にまずなにより徹底的に身を守る術を教え込んだその姿勢は尊敬する。

「一度お会いしてみたいなあ」

「会えるっすよ?」

「……え?」

「じいちゃん、β時代からこのゲームやってるっすから。『修練の成果を仮想世界とはいえ実地に試せるまたとない好機!』とか言って、いそいそハードとソフト買い込んじゃって……はまりすぎて超廃人になったからお目付け役としてあっしが巻き込まれたっす」

 はあっと深いため息をつくトキワさん。ワイルドかつファンキーな「じいちゃん」に色々苦労しているらしい。

「何せ題材が戦国時代ってことで、時代劇好きなお年寄りとかが意外と多いらしいっすよ?……まあ、あっしも和弓が使えるってんで渡りに舟という話ではあったんすけども」

「木乃伊取りが木乃伊になった、と」

「それは言わないお約束っすよ」

 軽く突っ込んだら、はっはっは、と乾いた笑いが返ってきた。

洞府=ダンジョン、なので、洞主=ダンジョンのボス、なわけですが。


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