二人の空間
美咲と他愛もない会話をしていると古着屋に着く。外観はクラシックでモダンな雰囲気の店。
美咲が先にお店に入りその後を追う、先に入った美咲は早速私に似合う服を吟味している。
お店に入ると、ビンテージな家具や内装でおしゃれな空間が広がっていた。内装を見ていると古着屋の独特な布の匂いが漂う。
辺りの雰囲気を見て美咲に視線を戻す。
「うーん、やっぱりフリフリしてる服よりこういうビシッとした、かっこいい服がいいよね」
美咲が服を漁っているのを見つめる。本当に美咲は服が好きなんだな。
「美咲、いつも選んでくれてるし、今回は自分の服を探してみようかな?」
そう何気なく言い美咲とは違うコーナーへ行って自分の服を探しに行こうとする。
…はぁ?
今回は自分の服を探してみようかな?
それを聞いて違うコーナーに探しに行こうとした綾音の腕を強くつかんだ。
力が強かったのか、痛みで顔を歪ませる綾音。今まではなかった。綾音が自主的に服を選ぼうと行動することなど。
常に私が主導権を握り彼女の手綱を握ってる、そこに綾音の自由意志はなく私の理想の彼女でいてくれるはずだった。
綾音を本当の私の彼女にさせるために、去年からじっくり私に依存するようにしていたのに、何故今日に限って自らの意志を持って行動しようとした?
「み、美咲どうしたの?ちょっと痛いよ」
「うん?あぁごめんごめん、私が選んだ服を試着してからでもいいじゃない?」
「...う、うん、わかった。そうする」
イライラしながら、まだ満足に決められてない服を綾音に渡して店員に試着室の許可を取り、綾音を半ば強引に試着室へ入れる。
イライラする。綾音が私の思い通りにならないことが非常に腹立たしい。
顔を上げて綾音が入っている試着室をジッと見る。
美咲に強引に試着室に押し込まれて、仕方なく美咲が選んだ服に着替える。
美咲の選んだ服はいつもと違い少し美咲の好みじゃない気がした。
それでも一応、美咲が選んだ服だから着替える。着替えながら、さっきの美咲の異常な威圧感を思い出す。
今まではあんな事はなかったのにどうしてかちょっと私が服を選ぼうとしただけで、あんなにも怖い形相になったのだろう。
いつもの様な優しそうで愛嬌のある美咲が一瞬で変わっていた。その一瞬の出来事だったが、私は美咲の本質が見えた気がした。
それがどんな意味を持っているのかは私にはわからない。
あの理解しがたい恐怖を感じた美咲の本質が薄っすらと見えたにもかかわらず、私は美咲と友達で居たいと強く感じてしまう。
何故なのだろう?




