第8話 危険な目
「セバスチャン、聞いてちょうだい!!」
アレックスと別れると、早速、手袋の成果をセバスチャンに話しました。
「先生と、ペアでダンスをしましたが、それはもう上手く踊れてよ。」
「手袋をしていたら、私に怖い物などないかもしれませんわっ!!」
「なんで、セバスチャンは見ていなかったのよ!?」
「申し訳ございません、お嬢様。所用を思い出して、少し外させていただきました。」
……用があったなら、残念ですが、しかたないですわね。
あ、そうだ。
私、セバスチャンと踊りたかったのですわ。
「セバスチャン。手袋があれば平気だから、私とダンスをするのよ。」
「お嬢様。それは、執事の役目ではないと思いますが?」
セバスチャンが、顔をしかめました。
「いいの、セバスチャン。これは、命令よ」
この時とばかりに、私は権力を振りかざしました。使うのは今ですわ!
だって、今までは、セバスチャンの服しか触れなかったのです。
今こそ、たくさん触れるチャンスじゃないっ!?
そうよ。服ではなくて、肌に触れたら、セバスチャンは、私を好きになるかもしれないわ。
「さあ、セバスチャン。手を出しなさい。」
セバスチャンは、観念したように手をだしました。
と、その瞬間。
セバスチャンの目が光り、すっと細められました。
あ、このセバスチャンは……。
この目は、見たことがあります。
――スイッチが入った、セバスチャンだわ。
頭の中で、警報が響いた。
それなのに、私は動けない。
これは、危険ですわ。
「お嬢様、隙ありです。」
サッと私の手袋を取るセバスチャン。
すかさず、手をギュッと握ってしまいました。
「――っ!!」
「隙ありってなんなのよ―――!!」
やっぱりです。
あの目をしたセバスチャンは、危険でしたわ。
「お嬢様は、隙があるから、アレックス様に手を触れられそうになるのですよ」
「ほら、どうするのですか?こんなふうに、ギュッと握られてしまったら??」
握る手に、さらに力が込められます。
セバスチャン、今日は一段と攻めてこない??
私は、抵抗することもできません。
「も、もう……、離して、セバスチャン。」
「お嬢様。先ほどは、私とダンスがしたいと言われたではありませんか。」
「さあ、私と踊りましょう」
踊れるわけがありません。
……セバスチャンが、意地悪です。
何か悪いことでも、してしまったのでしょうか?
私は、フワフワとする頭で、セバスチャンと出会った頃を思いだしていました。




