奇襲と転送?
あれ?1事件に何話かけてんだコレ?反省。
化け物を薬局に閉じ込め、その場を離れた。
奴らがシャッターを叩き、引き裂こうとする音が商店街に響く。あの薄いシャッターじゃ長くは持たないだろう。
奴らが脱出する前におばさんを倒さないといけない。
「ぐっ...!」
レコード店の奥から軽いうめき声が聞こえた。そっと道をのぞき込む。
おばさんが手に膝をつき、息を荒くしていた。その奥ではおじさんがあの赤い化け物と戦っている。
「頑固な爺ねぇ...!とっととくたばりなさいよォッ!!!」
彼女は包丁を振り上げおじさんに殴りかかっていく。おじさんはそれを斧で受け、弾いた。
「きゃっ!?」
おばさんが大きく姿勢を崩す。
ー好機。
「もごっ!?」
私はおばさんに背後から組み付きその口を押えた。左腕でしっかりと首を抱き彼女が逃げられないよう力を込める。
「大人しくっ...してください...!」
激しく暴れる彼女の腕が私の体を殴打する。軽い痛みが断続的に私を襲った。
「このぉっ!」
身体が左右に揺らされる。おばさんが体を振って抵抗しているのだ。思わず彼女を抑える腕に力を込めてしまう。
「ちょっと!抵抗...!しないで...!くださ...きゃっ!?」
おばさんと私の足が絡まり体勢が大きく崩れた。背中を壁に叩きつけられ肺から空気が漏れる。
おばさんの首から腕が離れ、地面に手をつく。
「うっ...げほっげほっ」
喉の奥からむずむずとしたものがこみ上がる。げほごほと激しくせき込んだ。
地面に写る私の影に新たな影が重なる。
「あなたもいい加減に...」
彼女が再び肉切り包丁を握り締める。
「うざったいのよ!!」
それは天に向かって振り上げられた。俯いて目をぎゅっと瞑る。
ーぐちゃ...と嫌な音が路地に響いて、消えた。
包丁が地に落ち、カランカランと喚く。
同時に熱い物が私に降り注いだ。
「...?」
顔についたそれを手で拭う。赤く温かいそれが手にまとわりつく。
目前に立つおばさんがアスファルトに倒れこんだ。
「ひっ!?」
引き攣った声が口から漏れる。
おばさんの頭には赤い消防斧が深く突き刺さっていた。頭から血が流れ、そこに血の海を作っていく。
あまり快い景色ではなかった。冷や汗がこめかみを伝う。
ザッザッと足音を立ててその斧の持ち主が死体のそばに立つ。
「あぁ...ったく。これで俺も人殺しか...」
レコード店のおじさんはそれを無表情に見下ろしている。
「あっ?う、わ。えっ...」
思考がうまくまとまらない。
「まぁ、こりゃ仕方ないよな。今まで助けられなかった分の罪滅ぼしだ」
生々しい音を立てて斧がおばさんの頭から外された。脳の一部っぽいものがべったりとくっついていて、とても見ていられない。私は少し吐き気を覚えた。
「ウシャァァァァァ!!!!」
大きな叫び声が、場の空気を劈く。
おじさんが焦ったように振り向いた。その彼に化け物が飛び掛かる。
赤い斧が化け物の爪とせめぎ合った。
それが私の思考を再び動かす。
(と、とにかく...バッグ!)
そもそもバッグを奪うために行動していたのだ。
鈍い打撃音など、おじさんと化け物の戦闘音が響く。
「シュゥゥゥーッ!!」
バッグに手を伸ばした私の耳に、ひねり出された空気の唸りが届いた。
そちらへと顔を向ける。
「っ!」
商店街を背景に2匹の化け物が私を見つめていた。その爪には鉄くずがこびりついている。
シャッターは破壊されてしまったらしい。
赤い皮膚に覆われた眼孔から放たれる視線が私を刺す。
緊迫した空気がその場に漂った。
カメラを取り出し、カードを入れる。それだけ。
足元まで広がった血の海に冷や汗がぽとりと落ちた。
「......!」
伸ばしかけて止めていた手を伸ばす。
「ガッ!!」
化け物たちも地を蹴った。
化け物の爪と私の指先は互いの標的へ近づく。
私の指先は、バッグのボタンを弾き飛ばした。
零れたカメラをつかみ取る。化け物の方にそれを向け、血に濡れた左手でカードを差し込んだ。
画面が青白く光る。
ー繝?Ξ繝昴?繧ソ繝シ インストール中. . . 。
・・・完了。
「グァッ!?」
何かが化け物を弾き飛ばした。
飛び蹴りの様に飛び出たそれは壁を強く擦って止まり、アスファルトに軽く着地する。
「アダムさん!?」
暗闇に立ち上がるシルエットが浮かぶ。
「ようやく出番か。ない方がいいがな」
彼はサッと振り返った。
「怪我は?」
「少し...」
赤色の瞳が私を見つめる。それは私の隣に倒れたおばさんを気にしつつ、私の右肩にとまった。
「肩か。大丈夫か?」
血の海に踏み込んで彼は私の前にしゃがむ。そして来ていた服を私の肩に巻き付けた。
「止血にはなるだろ。立てるか?」
左手の前に彼の手が差し出される。その手を取り立ち上がる。
「ありがとうございます...」
「あいつらにやられたか」
彼は再び化け物と向き合った。化け物も立ち上がり臨戦態勢で構えている。
「俺の後ろにくっついとけ」
彼の背中に手を添えて立つ。念のためカメラを手に持って。
ー爪
彼の腕がねじれ、鋭い爪をこさえた小手が形成される。彼は顔の横にそれを構えた。
「早く来いよ。野良犬」
その一言を合図に化け物が動き出した。2匹は爪を食い込ませ壁を駆ける。
奴らの爪が彼の頬に迫った。
キィッンと甲高い金属音が響く。奴らの爪とアダムさんの爪がぶつかり合った。
化け物は続いて連撃をかます。彼は達人じみた動きでそれを捌いていた。爪がぶつかるたび、甲高い金属音が響く。それは素早く繰り広げられ、私ではどちらが攻めているのかさえ分からない。
私は完全に蚊帳の外だ。
何をするべきか分からず、彼の攻防をぼんやりと眺めることしかできない。
そんな時、化け物の片方に一瞬睨まれた気がした。
「シャッ...!」
化け物がもう一方に向けて鳴いた。
了解したと言わんばかりにもう一方は壁を蹴る。
奴は曇り空に浮かんだ。
「...え?」
気付けば、私の目前に爪が迫っていた。
「ひッ!?」
「っ!待てッ!」
アダムさんの爪がそれを食い止める。しかし、すぐにぐちゃっと嫌な音が響く。
「アダムさん!!」
彼の背中には化け物の爪が刺さっていた。血が彼の体から滴る。
悪態をついて彼は身体をねじった。2匹の化け物の体に彼の爪が刺さり、それらは投げ飛ばされる。
「クソッ...」
彼の背中は深く抉られていた。
「すみません...傷が...」
「大丈夫だ。この程度なんでもない...」
彼は無表情でそう言う。そんなはずはない。彼の肩は荒く上下しているし、傷はかなり深く見える。人であれば致命傷だろう。
「クソッ、決め手に欠けるな..」
揺れる背中の向こうで彼が呟く。
(私にもできることは...?)
彼を怪我させた罪悪感を拭うため、何かできないかと考える。
ー私が今、やれることは。
握り締めていたカメラに目が留まる。
「アダムさん。蹴りに自信はありますか?」
SCP-1290 メタタイトル「未完成テレポーター」
safe
テレポートできる機械。でもぶっ壊れててテレポートしたものが(方角の)東に向かって毎秒930mで飛んでいく。




