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果て無き少女等に大いなる洗礼を  作者: 名仮
第一章 人界編
4/4

その日世界に刻まれた…





拳が飛来していた。


そう……飛来していたと認識したのだ。


ヒュッ


頭だけを横に傾け、最低限の動きで避ける。


勘…というわけではなかったと思う。

明らかに人間とは思えない速度で飛来したものを、

私は確かに視認し、避けていた。



その襲撃者が明らかに困惑しているのが気配で分かった。


リア「すいません!カバーします!」


いつの間にか飛んできていたリアと数時間ぶりの本当の再会を果たし、

それと同時にリアが襲撃者を蹴り飛ばした。



バギャッ!


…凄いな。

大人…しかも恐らく男性だろう。

そんな相手をかなりの距離吹き飛ばしたように見え、

もろで入ったのか、かなりいい打撃音が響く。



ぽわっ



リアが手から光の球のようなものを出したかと思うと、

直後その光が周囲に散らばり空間に光を灯す。



綾愛「能力者って思ってたよりもアグレッシブなんだね」


リア「戦いにおいて近接戦闘が出来ないんじゃ話になりませんからね。

…それより、やっぱり綾愛さんも戦えるんじゃないですか。…言ってくれてもいいのに…」



綾愛「…え?やっぱり?

私は別に戦えないし、さっきのは完全なまぐれだよ」


リア「いやいや、

そんなわけないじゃないですか。

だって綾愛さん…」



そこまで言った時、

会話を遮るように別の声が部屋に響く。



襲撃者「わざわざ2人揃ってくれるとは…

協力感謝するよ」



さっきリアが吹き飛ばしたやつとは別のやつ。


胡散臭そうなスーツにガチガチに固めたオールバックの髪が全く似合っていない男。



リア「それはこっちのセリフです。

あなたの能力でわざわざ前線に出てきてくれるなんて、随分協力的ですね」



襲撃者「ほぉ…まるで私、いや私たちの能力を知っているような口ぶりじゃないか。」



リア「あなたに関しては一度食らっているんだから分からないほうがおかしいですよ。

精神干渉系。

おそらく元ある欲望を増幅させるタイプ…

もう一人は身体強化の類…どちらも小物です」



おそらく的中していたのだろう。

襲撃者…いや呼び分けしにくいし"心"と"身"と呼び分けよう。


心は明らかに不機嫌そうな表情を浮かべる。



心「ガキのわりには頭が回るようだが…

ほら、戦闘はお前の役割だろ、働け」


身「また不意打ちでもして終わらせようと思ってたのによぉ〜…まぁ変わらないか」



さっき吹き飛ばされた筈なのだが…

傷一つなく立ち上がりこちらへと歩いてくる。


見るからに鍛え抜かれた肉体。

白いTシャツの上からでもその筋肉量が分かる程であり、さらには身長180超のハゲ頭。



綾愛「見るからに…って感じだね。

私は戦えないから邪魔にならないよう下がるね。」


リア「え!?ほんとに戦わないんですか?

…まぁもとの作戦通りではあるので良いですけど」



私は戦えないと何度も言っているのだが、

どういうことなのだろうか。


とりあえず私は部屋の隅っこへと移動する。



身「話は終わったか?そろそろやってもいいんだな?」


リア「わざわざ待ってくれるなんて…

見た目に反して紳士なんですね。ハゲなのに」


露骨に煽る。

そしてちゃんと地雷だったようだで、

そのハゲ頭に血管が浮き出る。


身「殺す!!」



その巨体が信じられない速度でリアへと突っ込んでいく。

テレビでしか格闘技は見たことないが、

そんなものを遥かに超える…明らかに人間とは思えない速度。


私より背丈も肩幅も狭いリアにこんな巨体が突っ込んだらどうなるのかなど火を見るよりも明らか。


…そんな発想はすぐに消え失せた。


ッッッ


音はほぼなかった。

衝突した…と思ったのだが、

身はリアを吹き飛ばすどころか…

ふわりという擬音が聞こえる程華麗に宙へと浮かされていた。



身「は??」


この場にいた誰もが理解出来なかっただろう。

…リアを除いて。


リア「ハッ!!」


メキィッ!!


リアのその細い手足から放たれているとは思えない程の威力と音を響かせながら、

宙に浮いた身の肉体に数撃叩き込んだ。



ドゴォッ!!



端の壁まで吹き飛ばされた身。

ピクピクと身体を震わせ、痙攣しているように見えた。

頭からも出血しているようで、打ちどころが悪かったのだろうか。



綾愛「…つっよ」


思ったことが漏れてしまった。

作戦を聞いたときはかなり心配していたのだが、

想像以上の強さに驚きを隠せない。



リア「っさ、残りは貴方だけだけど…まだやる?」


残った心の方へと声をかけるリア。



心「くそっ!調子に乗るなよガキ!

おい!起きろ!早く起きやがれ!」



リアがそれを横目に身へと歩いていく。

意識の確認だろうか。


まぁもしまだ意識があったとしてもあれだけの実力差ならば大丈夫だろう。


そんなふうに楽観視していたとき、

心の表情が一瞬…嫌なものへと変わったように感じた。


嫌な予感がした。


綾愛「リアッ!!なんか変だ!!一旦下がって!!」


だめだ、よく考えたらおかしい点が多い。


一撃目の蹴りを不意打ちで受けたのに身は傷一つ受けていなかったのだ。

そんな相手がさっきのだけでダウンするだろうか。


それに心の発言はあまりにもわざとらし過ぎる。

胡散臭いの権化のような見た目の男だ。なにかある。


リア「え?」


そして一番はリアの詰めの甘さで。


リアがこちらを振り向いたと同時に身が立ち上がる。



身&心【心象操作】【制限解除】


2人の"能力"が発動したと同時に、

身の拳が、とっさに振り返ったリアの腹部へと突き刺さる。


メキィッ!!



リア「ッかはッッ!!」


先程の身以上の速度と勢いで壁へと叩きつけられるリア。


壁にはヒビが入り…吐血するリア。

あばら…少なくとも内臓にもダメージがあるのだろう。


そんなリアを私は…

どこか他人事のように俯瞰していた。



心「まぁしょせんガキ…こんなものだろうよ。」


身「これやると明日筋肉痛なるから嫌なんだが…

がきの子守は大変だ」


明らかに先ほどとは様子の違う身。

おそらく【心象操作】が心の能力で

【制限解除】が身の能力なのだろう。


それを身に併用させる事で素で高いフィジカルを更に強化する。

それが彼等の奥の手か。



心「おいおい…もう一人の嬢ちゃんさぁ…

相棒がこんなんなってるのに反応無しって…

人としてどうなんだ?

流石の俺等だって仲間が死にそうだったら動揺くらいするぜ?」



本当にそのとおりだ。

なぜ私はこんなにも落ち着いているんだ。

身体がだるい。

頭が重い。

だが心は平常…どころか調子が良いほどだ。


なんでだ?


心「だんまりか…

そうだ!おい!面白いこと思いついたぞ!

この嬢ちゃんにお前の能力を使ってガキ同士で戦わせようぜ!

俺の能力も使って抗えない状態で仲間をなぶり殺しにするんだ。いい見世物になるぞ!」


身「いいなそれ!あのガキにはまだムカついてたんだ!」



盛り上がる2人。

立ち上がろうとするも足が痙攣し、

身動きの取れないリア。


こちらへと視線を向け、何かを必死に伝えようとしているリア。



綾愛「…可愛いな」



そんな状況でも私は…ただ冷静だった。





【心象操作】【制限解除】






─────────────────


私の人生は薄っぺらい

所謂ドキュンのデキ婚によって産まれた


両親の喧騒

DV

ネグレクト

離婚


自身への失望

他者への失望

世界への失望



学校と家


子供の私にはそれだけが世界の全てで、

その全てが私にとって敵だった


理解されない現状

改善されない環境

理解してくれない他者

存在しない居場所

何もできない自分


私にとって世界は敵であり、

生きる事は死ぬ事よりもずっとつらくて怖かった


親とは同じ道を歩みたくない。

その一心で高校には一応入ったのだが…

人間関係によって半年で自主退学


今ではバイトを転々とするフリーター


…なんども自殺を試みた


絞首

刺殺

落下

溺死

投薬


だが一度もうまくいくことはなかった


別に死ぬ勇気がなくて辞めてしまったわけではない


実行した。…だがなぜか死なないのだ。


なぜなのか


世界は私の敵のはずなのに


その世界が私を生かそうとする


ならばなぜ私をこの世に産んだ


これは両親に言っているのではない


私をこの世に創った世界…

もしくは"神"が存在するのであれば…

私はお前を許さない



──ならその敵をお前が壊せ──


…だれだ?


──お前の言う世界…敵…そして"神"だ──


…死に際でこんな妄想をするなんて…

私は思っていたより女々しいんだな



──女々しい事は否定しないが、妄想ではない──


ならなんなんだよ



──灰色の夢…白髪の少女…透き通るような声…覚えがあるだろう?──


…は?…つまりそういうことなのか?



──皆までは言わない…だが一つ教えよう。

私はお前を待っている。

その為に…今はお前がその一歩を踏み出す手伝いをしてやろう──


手伝いって…私みたいな奴に何が……


──お前は勘がいい。

とっくに察してるんじゃないか?予想通りだ。

お前にはその"力"がある。

だが今は基盤が出来ていない。

だから今は私が補ってやる。覚悟はいいか?──



色々言いたいこと思ってることは山程ある…


でもどうせ選択肢は一つしかないんだろ。


やってくれ。



──そうか、分かった。

お前は…世界を嫌うお前なら、

きっとこの力を気に入るだろう。

今は存分に楽しめ…そして、いつか"俺"の元へ──




そうして私は目覚めた。








─────────────


身体が熱い。

心の奥底…思い出したくない記憶とそれと同時に怒りと絶望が噴き出てくる。


…能力の影響か


心「おいおいはやくしねぇと、ガキが死んじまうぞ」


身体が馴染んできた。


身「ちっ!めんどくせぇなあ」


全身に力が巡っていくのが分かる。

圧倒的な全能感。

今…生まれて始めて私はこの世に産まれ落ちた。


彼女はそう…本気で思った。


一本にまとめている黒い長髪が根元から順に可憐なピンクへと染まっていく


彼女は脱力し天を仰ぐ


全身に黒い稲妻が迸る


心「…おい、なんか変じゃないか?

…嫌な予感がする…もういい!早く仕留めちまえ!」


身「それじゃああのガキをなぶり殺せねぇだろ?

まぁ大丈夫だって、俺がこんなガキ共にやられるわけないだろ」


声が…存在が…全てが…世界が残響の如く感じる


あんなに大嫌いだった世界が…今は心地よく感じる



綾愛(そうか…自由なんだ…)


身体が無意識に動いた


ッッッ


身「っな!?」


光速


音もなく…

音を置き去りにして彼女は身の懐へと入り込む


身が何かをするよりも何百手先に…

彼女は…"綾愛"は刻みこむ


綾愛【例外】(エグゼプション)



世界に…神にその名を。







─────────────────




…どうなったんだろう。


朦朧とした意識の中、私は目を開く。


そこには天井が吹き抜け月下にて佇む不思議な女の子


まとめていた髪が解け…

いつの間にかピンクに染まったその綺麗な長髪は…

月光に照らされ美しく…妖艶に…そして儚さを感じさせるほどに…


リア「きれ…い…」


振り絞るように…

しかし口に出さずにはいられなかったその言葉を吐露させる。


意識が朦朧とする中…吹き抜けた穴から誰かが降ってきた。


???「おっ?もしかして危ないとこだったみたいかな?」


その誰かがもう一人の襲撃者を踏み潰す。


それを見たリアは、役割を経たかのように意識を暗闇へと落としていく。


リア(…そういえば…、綾愛…

やっぱりたたかえるん…じゃん……うそつき……)



その表情はほほ笑んでいた




性別・男

種族・人間

身長・172cm

能力・心象操作

人の過去や、強い感情、直近の感情などを表出させ、

無理やり引き出す。日に3回が限度。


性別・男

種族・人間

身長・188cm

能力・制限解除

元軍人。

対象のあらゆる制限を文字通り解除し、

限界を超越させる能力。

対象は自分以外にも他人、もしくは無機物にも有効。

しかし解除にも強弱の度合いがあり、

その調整を間違えると対象が壊れてしまう。

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