あとがき
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
無事に書ききることが出来て、胸をなでおろしています。
主人公は、初期から二人で構想していました。
アーロンが読者と共に体験軸から世界を感じる主人公だとすれば、
マリユスは物語の構造軸、世界を読み解くもう一人の主人公です。
マリユスを表主人公でも考えましたが、どうしても正解に早く手が届きすぎてしまう性質なので、アーロンを表の主人公にして体験軸で物語を進行させることにしました。
内容の方は、最初から今の形だったわけではありません。
神話をもっと前面に押し出した、ファンタジー寄り、作風は視点の切り替わる群像劇風な物語として構想していました。
けれど、一度最後まで書き上げてみたときに、
「ここにSF要素を加えたら、もっと面白くなるのではないか」
と思ったことが、大きな転機になりました。
そこからさらに、
「ミステリー要素を足したらどうなるだろう」
「伏線をもっと深く張れないだろうか」
「世界の仕組みそのものを物語の核心にできないだろうか」
と、少しずつ、けれど確実に設定の変更と改稿を重ねていきました。
この物語を書きながら、私はずっと「意志」について考えていました。
今の時代には、努力しなくても認められる物語や、損をしないことを最優先にする価値観、理不尽な世界から距離を置く生き方が、ひとつの救いとして求められているように感じます。
それ自体を否定したいわけではありません。
現実が苦しいとき、物語が逃げ場所になることは、とても大切なことだと思います。
ただ、その一方で、逃げ場所だけでは人は前に進めないのではないか、という思いもありました。
傷つくかもしれない。
失敗するかもしれない。
損をするかもしれない。
それでも、自分の意志で選び、自分の足で一歩を踏み出すことにこそ、人が未来を変えていく力があるのではないか。
アーロンやマリユスたちは、決して完全な存在ではありません。
むしろ、迷い、間違え、失いながら、それでも世界と向き合おうとする人物たちです。
この作品を通して描きたかったのは、「選ばれたから特別なのではなく、自分で選ぶから未来が動き始める」ということでした。
人は、何者にもなれる。
けれど、それを決めるのは、他の誰かではなく、自分自身の意志なのだと思います。
誰かに決められた役割ではなく、
世界に押しつけられた運命でもなく、
自分が何を選び、何を信じ、どう生きたいと願うのか。
何度失敗しても、何かを失っても、前に進み続けること。
この物語を通して、少しでもそのことが伝わっていたなら、とても嬉しく思います。
まだこの物語は、ここで完全に完成というわけではありません。
設定を生かし、作品全体のテンポをさらに良くするために、
第1部を12話構成、第2部を14話構成へと再構成し、
さらに番外編を追加することで、最終的に全64話構成に整えていく予定です。
「64」という数字を物語全体の構造にもきちんと反映させ、
最後まで読んだときに、より深く納得していただける形に仕上げたいと考えています。
ここまで一緒に物語を見届けてくださった皆さまには、心から感謝しています。
そして、もう少しだけ、この作品の完成までお付き合いいただけましたら幸いです。
本当にありがとうございました。




