裁判編①
労働基準監督署、弁護士事務所、法テラスとここまで活動をしたが何も進展が無い期間であり、この時点で退職の八月から十一月になっていた。もちろんこの間で会社から未払いの給与の入金は無い。
さて、手始めの問題は裁判の始め方ってどうするの?という事であった。この疑問を私は法テラスで尋ねたが「裁判所のサイトに書いてありますから」という大変丁寧な回答を得ていた。読んでくだっさっている読者には一度これを読むのを止めて裁判所のサイトを見てもらいたいと思う。おおよそ申請を受け付けようとは感じえないものである。簡易な申請書はあるが、おおよそ裁判所が受け付けている訴訟の一割ほどしかカバーできていない様に感じる。このままでは埒が明かないとサイトに明記されている様に「申立て先の裁判所にお問い合せ」することにした。
思い立ったが吉日で、私は最後の法テラスに行った次の日に裁判所に赴いた。そして、また私は異文化交流の様な体験をする。
まず、裁判所に来て事前に調べたとおりに民事受付係という所に向かった。福岡地方裁判所の入り口すぐであった為分かりやすかったが、その受付にて開口一番に「それはここではなく、あちらの受付ですね」と機械的に言われたのだ。同室内で受付が分かれており、さらに入り口すら分かれていた。つまり、知らないと分からないという作りなのであった。しかし、私もこの三か月間で冷ややかな対応というのは慣れてしまっていたので、「ありがとうございます」とにこやかに答えるのである。
「すみません」
「訴状の提出でしょうか?」
「いや、民事で裁判をしようと思っているのですが、何が必要か聞きに来ました」
実に簡潔に用件を伝えたのだが、ここで予想外の答えが返ってくる。
「すみません、ここは訴状を受け付ける所でして」
「そうなんですね、ではどこで確認したらいいでしょう」
「えっと、ちょっとすみません」
受け付けてくれた事務員さんが別の方と話しに行ってしまい、その相談された方がそのまま私に対応してくれた。「ああ、これはまた非日常的対応特有のヤツだな」と察してしまった為、私は事の経緯から詳しく話し弁護士にも頼めない事と裁判所のサイト記載の方法では訴訟できない事を伝えた。
この対応して頂いた事務員さんは事務的ながら丁寧に説明をしてくれた。ただ「そういった物の申請書とかってのは置いてありますか?」と尋ねると「調べて頂いて作成して頂いてます」という素敵な回答を得た。
さて、一応の必要書類が確認出来たが、ここでまた私のなぜなに病が発症するのだ。「なぜ裁判には時間が掛かるなど言われているのに、システム的な物を解決しないのだろう」という事だ。裁判所への訴状を作成するにあたり裁判所サイトの「訴状作成上の注意事項」なるものをみると、訴状作成時の細かい規定はあるが肝心の物がなかった。レイアウトの設定である。
また読者の手と目を止めてしまうが『訴状』をインターネットで調べると沢山の訴状やその例文が出てくる。しかし、そのどれもが十人十色のレイアウトなのである。もちろん必要事項などは共通しているがその他が問題である。おそらく十件の同様の案件の訴状を並べて「これ裁判所に出す同じ申請書なんですよ」と言ったら「そんなわけないじゃん」と思えるほど違う書類に見えるのである。
これは俗にいう「日本の裁判は遅い」の一因なのだそうだ。そりゃそうである。
私は出来るだけ簡潔な訴状を作成する事にした。理由としては私が裁判の素人だからである。これは経験則だが物事の肉付けは案外容易である。有識者に指摘された事を追加していけばよいのだ。だが余計な一文や一言というのは訂正が難しい事が多い、またこと議論の場においては隙を作ることが多いのである。
そして訴状を作るに当たり、また問題があった。未払いの給与額と損害賠償の設定である。今回「未払いの賃金」と「虚偽の求人採用による失業による損害賠償」にて訴訟を起こす。
未払いの賃金であるがそもそも「労働条件通知書」が発行されていない。つまり請求する金額が不確定なのだ。一応面接時に時給千円~千七百円と提示されたが明確な決定はしていない。これは労働基準監督署でも問題になった部分である。正直な話、面倒だったので千七百円で計算をした。
さらに問題は損害賠償である。ハッキリ言えば調べても前例が出てこないのだ。もちろん不当解雇等の判例はあるが虚偽の求人での判例があまりにも無い。主な理由は私と同じと思われる、つまりその事象は多々あるが裁判にまで成ってないのであろう。だってどの弁護士もやりたくないと言うし、私の様に本人訴訟してやるとまでいく人がいないのだろうから。さらに「虚偽の求人広告」や「労働条件通知書の不発行」は刑事事件である。その話になってしまうとおそらく示談で処理され公には出てこないのである。ここもさらに面倒くさくなった為「本来労働者として働いた場合の賃金1年分」で出すことにした。これは不当解雇事例のそこそこ高い請求額がそうであったからだ。労働基準監督署で賃金請求をする際「請求する時は最高額で請求しなさい」と言われたからでもあり、私も相手会社をぶん殴る目的でやるので最高額でする事にした。
ここで最後に色々調べて面白かった記事をつづる。訴訟大国なアメリカで米国雇用平等委員会という所が行った調査で2019年に起こった「従業員から会社への訴訟」において、その訴訟の原因の54%は「会社への報復」だったそうだ。海を越えて同じ思想の人間がいる事と、やっぱり訴訟大国はさすがであるとして今回は終わる。
今回、訴状作成の際に調べていた面白かった記事を載せます。
株式会社 日本評論社さんの「訴状の作法https://www.web-nippyo.jp/19305/」というものです。




