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その日、糸ちゃんとも話し合ったお母さんは、あたしと一緒に暮らせる準備ができたら、お父さんと迎えに来ると約束をして帰っていった。
「ごめんね、糸ちゃん」
夕食を囲んで、あたしは糸ちゃんに言った。
「どうして謝るの?」
糸ちゃんはにこやかな顔であたしに言う。
「だってあたしがいなくなったら、糸ちゃんまたひとりになっちゃう」
あたしがつぶやくと、糸ちゃんは笑った。
「わたしのことなんか気にしなくていいんだよ。もともとひとりだったんだし。つぐみちゃんはやっぱりお父さんとお母さんと暮らしたほうがいいよ」
「でも……」
あたしは「今は本当に彼氏なんていらないの」と言った糸ちゃんの言葉を思い出す。
糸ちゃんだって寂しいんじゃないのかな。
お兄ちゃんのせいでこんなことになってしまって……糸ちゃんがずっとひとりでいることになったら、あたしは嫌だ。
「糸ちゃんも一緒に暮らさない? あたしとお父さんとお母さんと一緒に」
糸ちゃんはまた笑って、あたしに言う。
「ありがと、つぐみちゃん。でもわたしは本当に平気だよ。それよりあと少しの時間楽しもうよ。まずは土曜日!」
糸ちゃんがいたずらっぽい顔であたしを見る。
「つぐみちゃんの人生初の、路上ライブを成功させなきゃ!」
「う、うん」
なんだかすごく緊張してきた。あたし上手く歌えるかな……。
「上手くなんか歌えなくていいんだよ」
あたしの気持ちを察したように、糸ちゃんが言う。
「つぐみちゃんは歌い始めたばかりなんだから、上手くなくて当然。でもつぐみちゃんには、何かを伝える力があると思う」
「そんなの……」
「あるよ。レイジと歌ってるつぐみちゃんの歌聴いて、感動しちゃったもの。それにつぐみちゃんの声はすごく綺麗。まるで小鳥が空を飛びながら歌っているみたいなの」
「小鳥が?」
糸ちゃんが笑ってうなずく。
「自信を持って大丈夫だよ。レイジと響くんもついてるんだし」
「……うん」
あたしも糸ちゃんの前でうなずいた。
「あたし……やってみる」
糸ちゃんはあたしに「応援してるよ」と声をかけてくれた。




