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『鑑定スキルが「古紙回収」だった俺、魔導書の断片を綴じ直して伝説の賢者へ至る』  作者: rk04448
第三章『ゼノス帝国編:終焉の設計図(プロトコル)と再編の賢者』
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第八話 「無」の編集者、その矜持

荒れ狂う海上で、アルス閣下の放つ黄金の光が帝国の黒い魔力を押し返している。

 だが、私――サバスの役割は、この眩い舞台の上にはありません。

「……不作法な観客が多すぎますな。閣下の晴れ舞台に、塵ひとつ通さぬのが執事の務め」

 私は『エターナル・リライト号』の影に溶け込み、そこから直接、帝国の先遣艦隊の深部へと「転移」しました。

 私の固有スキル『虚無の編集ニヒル・エディット』。

 この力は、物理的な破壊ではありません。対象がそこに存在する「事実」を、世界の設計図から一時的に、あるいは永久に削除する。

 眼前に並ぶのは、帝国の誇る魔導狙撃兵たち。彼らが閣下の眉間を狙って「消去の弾丸」を放とうとした瞬間、私はその背後に音もなく立ちました。

「おっと、失礼。……その引き金を引くという『未来』は、今、削除させていただきました」

 私が指先を鳴らすと、兵士たちが手にしていた魔導銃が、煙も残さず「無」に帰しました。

 彼らが驚愕で目を見開く暇も与えません。私は手袋をはめた掌を空にかざしました。

「『虚無の編集・一括消去バルク・デリート』」

 私の周囲十メートル。

 そこにいた帝国兵たちの「意識」だけを、私は世界の記録から切り取りました。

 外傷はありません。ただ、彼らの魂という名のデータが白紙ブランクに戻っただけのこと。糸の切れた人形のように崩れ落ちる彼らを一瞥もせず、私はさらに奥へと進みます。

【因縁の再会:消去の同族】

 戦艦の最奥。そこに、私と同じ「虚無」の気配を纏った男が立っていました。

 帝国の『消去室』の長。……そして、かつて私が一族の記憶を修復した際に知った、私を帝国に売った張本人。

「……久しぶりだな、サバス。いや、欠番ナンバー・ゼロ。……貴様のような『出来損ない』が、まだ存在を保っていたとは」

「……欠番、ですか。それは心外ですな。……今の私は、アルス伯爵閣下の執事。掃除デリートの精度は、貴殿のそれとは比較になりませんよ」

 男が放った黒い「虚無の波動」が、私を飲み込もうと襲いかかります。

 それは触れるものすべてを消し去る、絶対の終焉。

 しかし、私はその波動の中を、平然と歩みを進めました。

 閣下が私のスキルに施してくれた「修復済みの因果律」。

「……閣下に教わりました。……『消去』とは、ただのゼロではない。……それは、新しい『真実』を書き込むための余白なのだと」

 私は男の喉元に、白手袋の指先を突き立てました。

 『虚無の編集・真実の上書き(オーバーライト)』。

 男のスキルそのものを、私は「無」へと書き換えました。

 「消去の力」を失い、ただの老人へと戻った男が、絶望の中で崩れ落ちます。

「……さて。鼠一匹、処理完了です」

 私は返り血一つない服の皺を整え、再び影の中へと消えました。

 主であるアルス閣下が進むべき道に、ゴミ一つ残さない。

 それが、忘れられし一族の末裔であり、アッシュランドの執事である私の、譲れぬ美学なのです。


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