42/45 背信ーいちばん得する奴
※参議院選挙に合わせてアップしたので今日で終了です。
1日前
当選確定2日後ー火曜日ー
倉田の実家のリビングで神野と倉田が向き合っていた
ナツは母親に付き添われて病院に行っているので密談にはちょうどいい
「内田さんも大胆なことしてくれたな」
神野がぽつりと言う
二人はコーヒーを飲みながら、盗聴器が拾った音声を聴いていた
もう何度も聞いているが、倉田が新しい情報を持ってきたというので改めて聴き直している
「石川がウラアカ持ってたのは意外じゃないけど、わざわざそこに参加して煽ってたとは
襲撃事件を起こすと人気が出るなんて勘違いしたのかね」
「あのおっちゃん、野次を飛ばされて喜んでたからなぁ
ドMかよwww」
倉田はゴシップを聴いてる気分で面白がっていた
「その中のアホが本気で凸って来たとしたら大問題だ
この様子だと、最初は大塚本人は知らなかったみたいだが、結局は庇ったわけだし」
「おっちゃんの暴走かぁ」
「しかし、盗聴器とはお前にしては上出来だ」
「まあね~
いちばん得する奴が誰か考えただけさ」
「これ、どこに仕掛けた?」
「応接室」
「おかしいな、他の音が全然聞こえない
この頃、事務所は選挙対応でごった返してたはずだ」
「そういえば」
「あの事務所の奥には鍵のかかる大塚の部屋がある
こんなヤバい話はそこでするだろうな」
「その部屋は知らない
え、じゃあ、これって」
「早苗さんが仕掛け直してくれたんじゃないか?」
「そうかぁ、俺への愛かなぁ」
「おまえフラれたんだろ」
「ふふん、まだワンチャンあるかもよ」
倉田はやたらと機嫌がいい
(ちっ、よっぽどいい思いしたんだな
早苗ってわっかんねえ人だ
倉田とは遊びなんだろうけど、こんなことしたらもう戻れないだろうに)
「というわけで、早苗ちゃんからのプレゼント
パスワードはメールで神野に送ったってさ」
余裕の笑みを浮かべ、倉田は指先に挟んだ小さなUSBメモリを、将棋の駒のようにパチリと神野の前に置いた
早苗と過ごした夜のことを省いているので、神野には何が『というわけ』なのかはさっぱりだが、なんとなく察しはついた
ヘラヘラと笑う倉田を(ウザッ)と思いながら神野はメモリをPCに差してパスワードを入力した
「おやぁ? これは」
覗き込んだ画面に開いたのは、古い上に画質の荒い写真データだった
「若い頃の大塚氏と早苗ちゃんだよね、銀座か六本木かな」
「問題はその隣のメガネの男と後ろのいかつい男だ」
「カタギには見えないよねぇ」
「早苗さんはなんて言ってたんだ?」
「もし、3日経っても大塚氏が何も言って来なかったらこれを使っていいって
まだ連絡ないんだろ」
「まだだ、バックレるつもりかもな
ちょっと古いからこれで失脚させるのは難しいが、脅すくらいには使えるか」
「早苗ちゃんには、こういうヤカラが付いてるってこと?」
「そうだろうな
だから大塚の出世に触りがあると思って姿を消した
この写真は古いがファイル作成日は新しい
つまり、最近になって送られてきた、彼女を脅すために…」
「じゃあ、彼女はまた水商売に戻っちゃうのかな」
「戻れればいいけど、もっと悪くなる可能性もあるな
一度、逃げたわけだし
たとえば風俗に売られちゃうとか」
「え! やだよ、そんなの
おカネでなんとかならない?」
「金額によるだろ」
倉田は立ち上がってスマホを取り出した
「兄さんに頼むのか?」
「借金、いくらまでなら貸してくれるか聞いてみる」
「待てって、そもそも全部俺らの想像なんだから確かめないと」
その時、神野のスマホが鳴った
画面に表示された発信元は大塚だった
【余計なお世話書き】
神野くん復活してます。
盗聴器の音声は本物ですが、推理はハズレです。
倉田くんのお坊ちゃま気質発動、お兄ちゃんに頼りすぎじゃないんすかね。




