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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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セラムの悩み

「わたくしがコーカデス領の開発をお手伝いさせて頂く決断をした理由は、領地開発そのものに興味があったからです」


 ミリの言葉にセラム・シンコクは首を傾げた。


「興味があったと言うのは、コーカデス子爵領の領地開発にですか?」

「え?ええ」


 セラムの言いたい事が良く分からず、ミリの眉根が僅かに寄る。セラムは首を戻して真っ直ぐにミリを見た。


「何故、コーカデス子爵領の領地開発に興味をお持ちになったのですか?」

「あ、いえ」


 セラムとの認識が違う点が分かり、ミリは少しほっとする。


「コーカデス子爵領だからと言う訳ではありません」

「え?違うのですか?」

「ええ」


 肯いたミリに、セラムはまた首を傾げた。


「あれ?どう言う意味なのですか?」

「どう言う?どう言う意味とは?」


 ミリも小首を傾げる。その様子を見てセラムの眉根が寄った。


「他の領地の開発でも良かったと言う事ですか?」

「ええ」

「なるほど。どの様な領地なら良いのでしょう?」


 なるほどと言われたけれど、どうもまだセラムとは話が合っていない事を感じて、ミリの眉根も僅かに寄る。


「特に条件はありませんので、どの様な領地でも構いませんが」

「つまりコードナ侯爵領とコーハナル侯爵領以外なら、どこでも良かったと言う事ですか」

「え?いえ?コードナ侯爵領でもコーハナル侯爵領でも構いませんでしたけれど?」

「え?・・・どう言う事ですか?」


 困った様な表情をするセラムを見て、ミリの眉尻が下がった。


「どう言うとは?」

「コードナ侯爵領とコーハナル侯爵領の領地開発に、コードナ様は既に携わっているのですよね?」

「え?いえいえ違います」


 首を左右に小さく何度か振るミリに、セラムは小さく何度も肯いて返す。


「あ、どちらかだけでしたか」


 まだセラムとの考えがズレる事に、ミリは少し可笑しく思えて来た。


「いえいえ。わたくしはどちらの領地の開発にも、関わってはおりません」

「あれ?そうなのですか?」

「ええ、そうです」


 やっと分かって貰えたかとミリは微笑みをセラムに向けるけれど、それはまだ早かった。


「コードナ様が携わっているのは、領地開発以外の領政だと言う事ですか?」


 セラムの言葉でミリの微笑みに苦笑が滲む。


「いいえ。わたくしはどちらの領地でも、何も関わってはおりません」

「え?・・・そうなのですか?」

「ええ」

「ですがどちらの領地も、ミリ・コードナ様の助言で領地が発展したのだと聞きましたけれど?」


 それが考えが合わない理由かと思い、ミリは小さく肯いた。肯いたけれど、セラムの言葉を肯定はしない。


「コードナ侯爵家やコーハナル侯爵家で、領政に付いて話す事はあります。しかしわたくしの提案がそのまま採用される事などありません」

「そうなのですか?」

「ええ。中には何かの切っ掛けになる様な事を口にした事もあったかも知れません。しかし、それ程影響は与えてはいない筈です」

「それは、私が聞いていた話とは随分と違いますね」

「どの様な話をお聞きになったのかは知りませんけれど」


 苦笑を浮かべたミリの言葉をセラムは途中で遮った。


「ですがコードナ侯爵領とコーハナル侯爵領が繁栄しているのは事実ですよね?」


 ミリは首を小さく左右に振りながら、けれどセラムの言葉を肯定する。


「それは認めますが二領はかなり以前から、それこそわたくしがまだ喋れもしない頃から順調に発展して来ていますし、それは二領以外の他の領地にも当てはまります」

「そうなのかも知れませんが、そうすると、ソウサ商会が関わっているから、と言う事でしょうか?」

「ソウサ商会が、ですか?」


 何故ここでセラムがソウサ商会に言及するのか分からず、ミリは小首を傾げた。それに対してセラムは肯いて返す。


「はい。ソウサ商会はラーラ・コードナ様の生家ですよね?」

「確かにソウサ商会は、コードナ侯爵領とコーハナル侯爵領での取引量は多いです。ですがそれは、ソウサ商会に限りません。それは二領での物や人の動きの多さが理由なのです」

「ソウサ商会は特にコードナ侯爵領とコーハナル侯爵領が有利になる様な取り引きを行ってはいないと?」

「ええ。母がコードナ侯爵家に嫁いだ事で、ソウサ家はコードナ侯爵家とコーハナル侯爵家と繋がりが出来ましたけれど、ソウサ商会の取り引きは他領と同等にしか行ってはいません」

「それなのにコードナ侯爵領とコーハナル侯爵領は栄えていると?」

「それはシンコク子爵領も同じではありませんか?」


 ミリの言葉にセラムは視線を下げ、首を左右に力なく振った。


「・・・いいえ。同じではありません」

「二領と同じ頃にシンコク子爵領も領民が増え始めましたよね?」


 そう言われてセラムは視線を上げてミリを見る。


「ご存知なのですか」

「ええ」


 肯くミリからセラムは視線を外し、顔を僅かに伏せた。


「確かに広域事業者特別税を施行した領地から、移動して来た人達が領民となって増えました」

「それに伴って、領地収入も増えていますよね?」

「そう、だったかも知れません」


 セラムの視線が更に下がる。


「しかし私が聞いている話では、人が増えるにつれて治安が悪化し、その対策の費用が今もずっと掛かっているのです」

「シンコク殿は、それは失敗だったと考えているのですか?」

「・・・分かりません」


 目を閉じて首を左右に振るセラムの様子に、ミリの眉根は寄り眉尻は下がった。


「人が増えれば何かと費用が掛かりますが、シンコク子爵領は税収も増えていましたよね?」

「コードナ様の仰る通りではありますが、今のシンコク子爵領では、新旧の領民の間で対立があったりして、どちらの領民からも不満が上がっているのです」


 目を開いたけれど視線を下げたままでそう言うセラムに、ミリは微笑みを向ける。


「それはコードナ侯爵領もコーハナル侯爵領も同じです」


 ミリの言葉に驚いた様に、セラムは顔を上げてミリを見た。

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