第40話 山賊の紅蓮団
レブルー村を襲っている山賊達は自らを【紅蓮団】と名乗っているらしい。
彼らが村へやってくる間、グラチアさんから詳しく聞いた。
「数週間おきにやってきては一人か二人を連れて行くの。今の所十人ほど連れて行かれてるわ」
「十人か……助けるのには少しばかり大変そうだな」
「私たちも協力しますので大丈夫ですわ。ねぇテミス?」
「はい! クラトスせんせーとリベルタ様がいれば大丈夫ですって」
村で待機していろと言っても二人は聞いてくれなかった。
勝手に動かれるより、連れて行った方がいいと判断する。
「私もちゃんと囮りができる様頑張ります」
そう意気込んでいるのはエレノアさん。
この作戦において、グラチアさんとエレノアさんの二人が成功の鍵となる。
二人には囚われてもらい、中から魔法を使って合図をしてもらう。
きっと魔導師様の拘束具が使われるだろうから、魔導具を利用する方がいい。
今回使うのは持ち合わせの魔石と魔導ランタンの光る部分。
夜になればきっと光を照らし、居場所を特定できる。
大雑把ではあったが、作戦はこんな感じ。
そして数日後、紅蓮団を名乗る山賊がレブルー村へやってきた。
◇
「なんでこの村に人間がいるんだ?」
「そ、それはですね、この者が旅人でこの地を訪れたからです。極めて高い魔力量だったので捕らえておきました」
既に拘束された風に見せかけたエレノアさんと、今回の生贄としてグラチアさんが差し出されいた。
その様子を俺たちは近くの小屋からじっと見ている。
「ねぇせんせー。この場でやっちゃダメ? 分かっててもエレノアさんが連れて行かれるの見たくないの」
「気持ちは痛いほど分かるが、我慢してくれ。そうじゃないとアジトにいる奴らを一網打尽に出来ないんだ」
我慢が出来そうもないと言うテミスに俺も本音を吐露した。
それに比べ、リベルタ様はと言うと――
「っ!……」
静かに歯を食いしばっている。
皆が同じ様な気持ちのまま、エレノアさんとグラチアさんが連れて行かれるのを見つめた。
「もうそろそろいいだろう。慎重に尾行するぞ」
「ええ」
「はい!」
レブルー村を離れて行くのを確認した俺たちは気付かれない様、後をつけた。
日が傾く頃にようやく到着したみたいだ。
森の中には簡易的な家が建っていた。
家の周りは塀で囲われ、それなりの防衛は出来ている。
「いいか? 合図があるまでは絶対に行動するんじゃないぞ?」
「「分かっています」」
俺たちは塀の中を覗ける様、近くの木に上っていた。
少しばかり遠いが、中を見るには十分な場所だ。
夜になり、山賊達が寝静まった頃に作戦開始。
それまでは俺たちも待機だ。
◇
「おら、さっさと入れ!」
「乱暴しないでください!」
「ちょっと、今変なとこ触ったでしょ!?」
山賊達によってエレノアとグラチアは牢へと入れられた。
森の中で作った簡易的な屋敷であるため、地下に牢がない。
外も確認できる牢であった為、作戦はうまく行きそうだった。
「グラチア……グラチアなの?」
牢の端っこにいたエルフの一人が声を発する。
薄暗い郎の中、そのエルフはグラチアのもとへ向かった。
「その声はアウラ? アウラなの?」
「ええ、アウラよ。貴女はやっぱりグラチアなのね」
お互いが確認を取れたところで、再会を喜んだ。
しかし、囚われていることに変わりないと思い出し、アウラは落ち込む。
「グラチアも捕まっちゃったのね……」
「大丈夫、私は潜入のためにきたの。アウラも他のみんなも助けるよ」
助けると言う言葉にアウラを始めとしたエルフは喜びに満ちた顔をした。
「じゃあお家に帰れるの?」
「アウラお姉ちゃんほんとーなの?」
幼いエルフ達も帰れると知り元気が湧いてくる。
そんな様子をエレノアは見て、絶対に助けると心の中で誓った。
暫くしてからグラチアはみんなにエレノアを紹介する。
「よろしくねエレノアお姉ちゃん!」
「よろしくー」
幼きエルフ達が彼女の元へやってくる。
そんな子供達をエレノアは優しく抱きしめた。
エレノアも含め、全員には足枷が付けられている。
これは特殊な素材で出来ていて、魔導師であると魔法を一切使えなくする。
この状況で、どうやって脱出するかを精一杯考えた。
幸いにも見張りはいない。
足枷があれば魔法を使えない事を理解しているからだ。
魔法の使えない魔導師やエルフなんて脅威にはなりえない。
(これならなんとかクラトス先生に知らせられる。問題はその後……)
居場所さえ分かればクラトスがやってくるが、牢にはエレノアを含めて11人もいる。
壁を破壊し退路を確保できても自分たちは魔法を使えない状況。
逃げ切れる可能性は低い為、敵を殲滅する必要がある。
クラトス達が殲滅をしている間、どこかに隠れる事で難を乗り切る。
エレノアは時間が来るまで必死に思考を巡らせた。
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