第39話 囮り作戦
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「さてと、どうしたもんかね?」
「何、悠長な事を言ってるんですかっ!?」
エルフ達によって攻撃を受けている最中、リベルタ様がおっしゃった。
こちらから反撃するなんて事をすれば杖どころではない。
彼らの魔力が尽きるまで防衛するに限る。
「流石クラトスせんせー! これくらいなんともないのね」
「本当凄いですね……」
四方八方からの攻撃を一人で防いでいた。
これも魔力が無限である俺にしかできない芸当だ。
「くっ……!」
「族めっ!」
「人間相手に我らが後れを取るとは……」
少し時間が経ち、エルフ達の攻撃が弱まってくる。
「エルフの皆さん、誰かと勘違いしていませんか? この方はリシア帝国の皇女殿下であるリベルタ様だぞ」
彼女はこの村の名前を知っていたし、以前訪れた雰囲気をしている。
ならば村人も彼女の顔を知っている可能性があった。
「皆様、お久しぶりですね」
フードを脱ぎ去り彼女が前に出る。
顔が見えるようになると村人達は大慌てだ。
「まさかリベルタ様が!?」
「何故ここへ?」
「それに護衛がそれだけとは一体……」
普段であれば皇女であるリベルタ様はたくさんの護衛を連れてるべき。
護衛が3人なんてあり得ない。
彼らがすぐにリベルタ様に気が付くのは無理な話だ。
「先ほどの行為は許します。それで、この村で一体何があったのですか?」
「実はですね――」
一人の年老いたエルフが語ってくれた。
つい最近になって、人間の山賊によるエルフの誘拐事件が起きている事。
エルフ達も黙って見ていた訳じゃない。
人間よりも魔法に優れたエルフであれば後れを取る方がおかしいはず。
村人全員が魔法を使える上、一人ひとりの魔力量も豊富。
では何故人間の山賊に誘拐されてしまうのか。
「山賊のお頭が賢者ですって!?」
リベルタ様だけでなく、テミスやエレノアさんも驚いている。
それもそのはず。
「賢者ともあろう人が山賊に落ちるとは……妙だな」
魔導師の価値を知っている者であれば賢者の希少性を理解出来るはずだ。
仮にデニス陛下の様に理解してくれない人だとしても、魔導師として生きる道は他にもある。
「まず間違いはないかと……奴の力は我々全員でかかっても足元にも及びませんでしたから」
歯を食いりしばりながらエルフの老人は呟く。
「クラトスさん、どうにか出来ないでしょうか?」
「賢者が相手となるとそう簡単にはいかないな。それにここらで闘うとなると被害が甚大だ」
相手の力量も知らない状態で戦うの自体が間違っている。
その上、俺は予備の杖でいつもの力を発揮する事ができないし、皆を守るとなると余計に厳しい。
「あの……でしたら山賊のアジトに奇襲を仕掛けるのはどうですか?」
「エレノアさん……思ったより好戦的なんだね」
普段大人しい彼女からあり得ない提案をされた。
しかし、その場合はまずアジトを見つける必要がある。
「それなら囮りとかどうなの?」
「囮りか……厳しいかもしれないが可能性はあるな」
誰かが囮りとなり潜入し、内側から手引きをする。
囚われているエルフを助け出したところで、外から奇襲を仕掛け一網打尽。
計画としては悪くないが、問題は誰を囮りにするかだ。
「山賊が拐うのは女子供ばかりです……」
俺の考えを見越して先にエルフの老人が答えた。
相手が魔力を目的として拐っているなら俺が囮りになれた。
だが、狙うは女子供であり、俺は対象外だ。
そうなれば村に残っているエルフの人か、ウチの生徒。
安全を保証する事ができない以上、この作戦を決行するのは躊躇われる。
「だったら私が行きます!」
村人の中から女性の声が響く。
そちらに視線を向けると、ストロベリーブロンドの髪をした若いエルフがこちらに向かってくる。
「私はこの村に住んでるグラチア。その囮り作戦の囮役をするわ」
「本気なんだね?」
彼女に意志を確かめると、強く頷いた。
「私の友達が何人も拐われているんだもの。このまま黙って見てられない!」
「……わかった。君に囮りの役目を頼みたい」
目に強い意志を感じる。
彼女にやめろと言っても無駄だろう。
「なら言い出した私にも責任があるし、私も囮り役をするわ」
続いて立候補したのはテミスだ。
この作戦の立案者である以上、責任を取りたいと言う。
「それはダメだ。君の任務を忘れたのか?」
「で、でも……」
俺と彼女の任務はリベルタ様の護衛。
山賊のアジトを襲撃するとなれば、俺はリベルタ様の所を離れる事になる。
その際、テミスには彼女の護衛を任せる必要があるため、囮りにはできない。
「でしたら私がやります。リベルタ様やテミスさんと違って私は平民ですし」
テミスの代わりに囮りを買って出たエレノア。
正直言って、身分で人を差別するのはよくないが、それもまた事実。
「エレノアさんにお願いをする。でも君が平民だからって訳じゃないんだ。君はリベルタ様やテミスよりも魔力量が優れている。そこを見て決めたと言ってもいい」
「はい、そう言ってくれるだけで十分です。でも私は何も心配してません。クラトス先生なら絶対になんとかしてくれると信じてますから」
彼女は笑顔で口にした。
絶対に失敗できない作戦が幕を開ける。
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