第55話 最終対決
ついにやってきた魔王城、そして四天王を倒し今、魔王と対峙する。
その魔王の姿は、一見すると普通の王、髭を生やし王冠を載せている。
しかし、その身にまとう空気はまがまがしく膨大な魔力をまとっている。
「あやつらを、ああも簡単に倒してしまうとは、やはり元が悪かったようだな」
俺たちが魔王の前に立つと突然そんなことを言い出した。
多分、俺たちが倒した4人のことだろう、その表情には部下を倒された怒りより、俺たちに倒さるほどに弱かったと、部下に対して怒りを持っているようだった。
「お前が魔王か」
俺は一応目の前に男に確認をした。
「ほう、われが魔王と知った上で来たというわけか、やはりただのネズミではないようだな」
「ああ、そうだ、かつてお前を討伐した2人の後始末をつけに来た」
俺がそういうと魔王は目を見開いた。
「なに、まさか、貴様らは、あの者どもの」
「冥土の土産に自己紹介をしてやろう、俺の名はファルター、かつてお前を討伐した魔法使いマグルの子孫だ」
「私は、フィーナ、勇者様の子孫よ」
「フッフッフッ、フハハハハ、ハッーハッハッハッハッハ、まさか、やつらの子孫とは、まさか、われのかつての雪辱を晴らす機会があろうとはな、よかろう、われ自ら相手してくれよう」
魔王は笑いの算段活用を用いてひとしきり笑った後、やる気に満ち溢れている。
「われを前回のわれと思うてくれるなよ」
そういうと魔王はいきなりどこからともなくまがまがしい剣を取り出して俺たちめがけて突っ込んできた。
「それに関しては、俺たちも同じだ。俺たちを浩平やマグルと同じだと思うとあっさり蹴りが付くぜ」
俺はさらにそういって挑発しながら魔王の攻撃を軽くよけた。
「ほう、魔法使いのわりにいい動きだ。だが、これはどうだ」
そういって、さらに切り込んできた。
さすがは魔王、普通なら無理な体制での攻撃だ。
「よっと、あいにくだが、俺はただの魔法使いじゃないんでね」
少し驚いたが、それをおくびにも出さずにそれを強化魔法で無理やり体をひねってよけた。
「おりゃぁ」
とここで、スキを見つけたフィーナが全力で殴り掛かった。
「なめるなぁ」
さすがによけることはできなかったようだが、フィーナの全力の突きを見事に受け止めていた。
「くっ」
「ほぉら」
魔王は、フィーナの手をつかむと思いっきり投げ飛ばしていた。
「ふぅ、やっぱり、強いな」
「魔王だけあるってわけだね」
「強い、強い」
俺が感嘆の声を漏らすと、愛美とエニスもまた感嘆していた。
「フハハハ、まさか、強化魔法を使いこなすとは思わなんだぞ。貴様、やはりただの魔法使いではないな」
どうやら、魔王も俺に感心したようだ。
「まぁな」
「なるほど、転生者か」
魔王は気が付いたようだ。
「よくわかったな、なら、教えてやるよ、俺の前世の名は、上森僚一、かつて、お前を倒した勇者浩平と同じ一族にして、祖先」
「な、なに、祖先だと」
「ああ、浩平は、前世での従弟の子孫、あいつは過去に飛ばされたのさ。そしてお前を討伐したというわけだ。それから、1ついいことを教えてやる、我が一族のいて浩平はいまだ未熟、それに対して、俺はすでに免許皆伝を受けている。強さはけた違いだぜ。それにだ、ここにいるの俺の妹、正真正銘上森の血を引く娘、その才能も力も浩平とよりも上だ」
「ほぉ、それはいい、ならば貴様らを倒せばわれの雪辱も晴れよう」
俺の正体を明かしたことで魔王は驚愕していたが、よっぽど浩平に対して恨みを持っていたんだろう、すぐに嬉しそうにしていた。
「ちなみに、言っておくが、残りの娘もまた俺に妹だが、強いぜ」
それからさらに激しい戦いが起きた。
俺が魔法と武術を併用し、そこをフィーナと愛美、エニスの3人がさらに合わせる。
そんな俺たちの攻撃を魔王は何とかよけつつ、時には食らっていた。
そうして、しばらく続いていた戦いだったが、ここにきて戦いに変化が起きた。
「はぁ、はぁ、はぁ、やっぱり強いな」
「う、うん、強すぎ」
「まさか、ここまでだったとはね」
「お母さんより強い」
みんな息切れを起こしながらの戦いだった。
「ふははは、よくぞ、戦った。ならば、我が最大の技を見舞ってくれる」
どうやら、魔王が相当強力な技を使ってくるようだ。
俺は、それを聞いた瞬間、魔法で障壁を張った。
「くらえぇ」
そういって、魔王が出してきた技は、一言でいえば、とんでもないものだった。
なにせ、この空間に充満していた邪悪な魔力が魔王に集まり、なんと魔王の体内に吸い込まれていった。それだけではない、その後魔王は自身の魔力と合わせて、極大の魔力弾を作り出した。そして、それを圧縮、野球ボールのぐらいの大きさにまでなった。
それを思いっきり投げ飛ばしてきたのだ。
「やべぇ」
俺は思わずそうつぶやいた、それほどの破壊力のある攻撃だった。
ドゴォォォォン
魔力弾は着弾と同時に大爆発を引き起こし、魔王城をほとんど吹き飛ばしてしまっていた。
俺たちはというと、さすがに無事とは言えなかった。
フィーナたちは俺の焦りを見てから何とか全力でブースターを使って離脱したが、爆風に巻き込まれて吹き飛ばされ、俺はというと障壁を張っていたために前にいた。その影響を受けて、爆風をもろに受けた。
「くそっ、まじか」
俺は満身創痍だった。
「ほぉ、今のを受けてまだ、生があるとは、しぶとい奴らよ」
魔王は、若干驚いているようだ。
魔王もあれを俺っちが受けきるとは思わなかったんだろう。
とはいえ、俺の体は、かなりの傷を負った。普通なら重症レベルだ。
だからこそ、俺は上級上位の回復魔法、フルケア相当の魔法を放った。
「ふぅ、アブねぇ、死ぬかと思ったぜ」
「回復魔法が、つくづくふざけたやつよ」
その後、俺のそばに戻ってきたフィーナたちにも回復魔法をかけて、第2戦を始めることにした。
こうして始まった第2回戦だが、魔王も先ほどの技で魔力を相当使っていたし、俺たちもかなり疲れ果てていた。そのため、お互いそう長くは戦っていられないだろう。
そこで、俺たちは最後の賭けとして、上森の最終奥義たる技を放ちすべてを終えることにした。
「フィーナ、愛美、エニス、あれ、やるぞ」
「そうね。やるしかないか」
「うん、そうだね。エニス、大丈夫」
「う、うん、大丈夫」
上森の最終奥義、といっても、これは俺がこの世界に来て魔法を身に付けてから構想を練って、フィーナと出会い、愛美がやってきて、エニスに愛美とフィーナが上森の技を教えたことで完成した。いわば、上森の技に魔法を組み合わせたものだ。
俺の合図とともにフィーナたちはそれぞれ散って魔王を囲んだ。
それを見た俺は、水の超級魔法を唱えつつその魔法を圧縮、それを刀にまとわせる。
その後、風、火、土の上級上位魔法を3発、魔王に向かって放った。
当然、今更魔法はそれを受けることもせずよける、俺はもちろんそれを見越していた。
その証拠に俺が放った魔法は、3人をめがけて飛んでいったからだ。
フィーナに向かったのは風、愛美に向かったのは火、最後にエニスに向かったのは土魔法だ。
そして、それを、3人がそれぞれの武器で受け止めた。
こうして、俺たちの武器にはそれぞれの属性魔法がまとわりつくことになった。
そう、これで準備は整った。
あとは、それぞれがその武器で魔王を斬る。それだけだ。
俺たちは、特に合図もせずに一斉に魔王に向かって斬りかかった。
「うぉぉおうう」
「いけぇぇぇぇ」
「食らいなさい」
「いくよぉ」
俺たちは気合を入れて魔王を斬った。
「ぐぉぉぉぉぉぅ」
さすがの魔王もたまらず叫び声をあげた。
それはそうだろう、今魔王には地水火風、4属性の攻撃魔法と斬撃、まぁ、エニスは突きだが、それが当たったのだからたまらないだろう。
そして、その瞬間俺たちの武器の浄化も働いた。
それにより、ついに魔王は倒れた。
「よ、よもや、われが倒されるとは、それも、貴様等、人類によって、やはり、われは、いらぬ存在というわけか」
魔王はそうつぶやいていた。
多分、魔王はかつてマーラムだったころの記憶を語っているのだろう。
「セペリウス様が言っていたぞ、確かにお前ら白い肌と碧眼の者たちは俺たちの祖先この大陸にもとから住まうものたちが戦争のために作った存在であり、その力が弱かったことや戦争が終わったことで必要がなくなった存在でもあった」
魔王は、もうろうとした意識の中で聞いていた。
「だがな、お前を開放した研究者はお前たちに自由を与えるために上司の命令に背いて開放したそうだ。そして、生まれはどうあれ、神であるセペリウス様にとっては、お前たちもまた人類とおっしゃっていた。今回俺たちはそのセペリウス様からの依頼により、お前を憎しみから解放しに来たんだ」
「おお、なんと、神が……」
最後に魔王、いや、マーラムが微笑みながらその生涯を閉じたのだった。
多分、俺たちの武器についた浄化が働いたことで、マーラムの魂が浄化されたのだろう。
「終わったな」
「う、うん」
「長かった」
「疲れた」
こうして、俺たちの魔王討伐は終わった。
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タイトル「剣と少年」です。
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