第56話 ようやくのノンビリライフ
本日で完結最後は2話投稿です。
苦労した魔王討伐から1か月がたった。
現在の俺はというと、領地であるシタナエールに戻り、領地運営にいそしんでいた。
といっても、元平民であり、冒険者であり、前世でもただの高校生であった俺に領地運営なんて仕事できるわけがない、そこで、マドリスに家宰として働いてもらい、俺の仕事はもっぱら書類にサインを書くというあまりにも地味な仕事だ。
まぁ、そのほかにも気晴らしで街の中を歩いて(視察として)回っている。
相変わらず魔物などは多く出ているが、ようやく平和な毎日を送っているというわけが、ここまで来るのには少し大変だった。
何せ、魔王討伐した後、現地にいた、味方からは歓声が上がり、敵からも一部ではあるが歓声が上がった。
それから、すぐに和平交渉が行われ、締結、宴会となった。
もちろんその主役となったのは俺とフィーナ、愛美とエニスの4人、おかげでシュミナ王国の貴族はもちろんジュラム・ガルブの生き残りなどからひっきりなしに挨拶された。
おかげで精神的に疲れた。
これなら魔王と戦った方が楽だったような気がする。
とまぁ、そんな、宴会を乗り切ってシュミナ王国に戻ると、そこでは国王への謁見、またまた祝勝パーティーがもようされた。
そこでは、再び挨拶にきた連中の相手をさせられたのだった。
しかも、ただあいさつに来ればいいんだけど、そいつらは薄人だけあって、もちろん原住民である俺たちに頭を下げるなんてことはしない、鷹揚な態度をとりながらも下手に出ようと心がけているというなんともよくわからない態度をとっていた。
そこでもやはり疲れた、ほんと、魔王の相手の方がましだ。
そんな、シュミナ王国で数日滞在を求められて、侯爵の願いでもあったことで仕方なくまた、貴族やや国王の相手をさせられて、数日後ようやくの帰国であった。
帰国したときほっとしたのを覚えている、やはり、薄人の国、俺たち原住民はどこまで言っても奴隷という下に見る民族ということだろう。しかも、少し面倒なのが、俺たちと同じ原住民からもあまりいい目で見られなかったことだろう。彼らからしたら、自分たちと同じ民族でありながら、自分たちは奴隷としてさげすまれ、俺たちは英雄としてもてはやされる、これが気に入らないんだと思う。ほんと面倒なことだ。
でも、実は、趣味な王国の国王や貴族から今後は、奴隷制度を廃止して、原住民を奴隷から開放することを約束してくれたのはその数日間でおいての朗報と言えるだろう。
まぁ、だからといってすぐに彼らも解放されるわけではない、薄人も貴族は約束してくれたが、平民はそれに従うだけこれまで長くに渡り奴隷としてきた彼らをいきなり解放し、自分たちと同じ平民として扱うなんてそうそうできないだろう。
それは、俺も地球の歴史で知っていた。
だから、まぁ、それについてはのんびりと待つことにする。
そんな中、ようやく帰国したわけだが、そうなると余計に英雄として、歓迎され、王都では凱旋パレードが行われた。
そして、王城に入ると早速陛下との謁見となった。
これで3度めとなる謁見の間は、過去において最も人数の多い状態だ。聞けば国中の貴族がこぞって集まっているようだ。
ていうかこの国ってこんなに貴族がいたんだな。
そんなことを考えながら見渡しているとやはりマナリズ王国、自国ということもあるがほとんどの貴族が俺たちに尊敬の目を向けてきている。まぁ、もちろんここにも霊に守らない視線を向ける者たちもいるが、その連中はアルディによると伯爵以下の貴族だそうだ。
といっても、アルディが驚いていたが、そういった貴族たちの中でも7割ぐらいが今では俺たちに尊敬の視線を送っているそうだ。
「国王陛下の御成りである」
謁見の前にそう高らかと宣言され、俺達は一様に膝を付きひれ伏した。
それあら少しして声がかかった。
「表をあげよ……うむ、よくぞ戻った。そして、魔王討伐見事果たしたこと聞こ及んでおるぞ。マナリズ王国国王として、そなたらの働き嬉しく思う」
「はっ、ありがたき幸せでございます」
やはり俺たちの中で一番爵位が高いアルディが答えた。
「さて、此度の働きにおいての褒美をとらせる」
なんと、俺達は陛下から褒美をもらえるようだ。俺としては、なんだか面倒な予感がしているが今はおとなしくしていようと思う。
「まずは、アルディオン・フォン・ブルグ・シンダリオン」
「はっ」
アルディが名前を呼ばれて少し緊張の面持ちで陛下を見た。
「そなたは、シュミナ王国との共闘し魔王軍を討ち滅ぼすために尽力、そして見事魔王軍を滅ぼした。この功績を認め、辺境伯とする」
アルディは陞爵したようだ。
「ありがたき幸せ、謹んで拝命いたします」
アルディは一瞬驚いて目を見開いたあとその褒美を受け取った。
「続いて、ファルター・ド・シタナエール」
アルディのあと戦争に参加した貴族たちがそれぞれの褒美をもらい、最後に俺の番が来た。
俺としては、また、いくらか金が貰えればいいと思っていた、ほら、領地運営にも結構カネがかかるしな。
「そなたは、その類まれなる才能を活かし、見事魔王討伐した。そなたの存在はもはや我が国だけのものではない、しかし、そなたが我が国の民であったこと、マナリズ国王として誇りに思う。よって、そなたには、男爵の爵位と、さらなる領地を与えるものとする」
陛下がそう言うと周囲はざわついた。それはそうだろう、俺は平民であり原住民、いくらこの国でも原住民が得られる爵位は騎士爵のみ、それが男爵だ。
これは異例中の異例だろう。
「は、拝命します?」
思わず俺も疑問形で言ってしまったのは仕方ないことだろう。
「しずまれぇい」
ざわついている貴族たちを陛下が一括した。
それを受けて流石に貴族たちも黙っていた。
「し、しかし、陛下、かのものはもとは平民、それを男爵にするなど、前例がありません」
1人の貴族が言葉を選びながらも反発した。
「うむ、そなたらの言い分はわかっておるつもりだ。確かに、これは前例のないことだ。しかし、シタナエールはそれを受けるほどの功績を上げておる。誰もなし得なかったあん圧ギルドの壊滅に始め、魔法によるありえぬ速度での街の開発、そして、此度の魔王討伐だ。これは、もはや、我らではなしえないものである」
陛下が反発した貴族にそう言うと流石に貴族も黙った。
「だが、先程も申したようにシタナエールに与えるさらなる領地に関しては、条件をつける」
どうやら与えられる領地に条件があるようだ。どんな条件下、面倒なことじゃなければいいが……。
「シタナエールの先は魔物がうごめく未開の地、そこを自ら開拓し、得られた地を与えるものとする」
つまり、領地を自分で開拓しろということらしい。
確かにそれは面倒だ。あの先の地にはほんとに魔物が多い、しかも結構強い魔物だ。
その理由は簡単で、実は、かつての魔王が誕生した地こそ、あの先にある。
というのも、実は魔物の誕生は魔王に原因があり、魔王が誕生しその恨みや憎しみが邪気となり、周囲に振りまかれた、それを受けた動物などが魔物化したというのだ。
その邪気が、未だに衰えることがないために魔物がどんどんと生み出されている。
とまぁ、そんなわけで、現在、シタナエールに戻ってから、ブリネオ騎士団や勇者一族たちを中心に周辺の魔物を駆逐しつつ領地を増やしているというわけだ。
そのおかげか、1月たった今では俺の領地は倍ぐらいになっていた。
でも、まぁ、俺も領主となり、自ら魔物を討伐することもほぼなくなったために、今ではほんとにのんびりと暮らしている。
「平和だなぁ」
そうつぶやいてから、俺はサイン書きを続けていった。
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