第34話 反撃
突然やってきた、今世での妹、エニスと両親、何かと思ったら、前世の妹愛美がタイミング悪く帰ってきた。
おかげで俺は家族にすべてを話すことになった。
しかし、母さんが愛美を受け入れ、父さんに至っては娘が増えたと大喜びだ。
エニスも、すぐに愛美になついた。
愛美がこの世界に来たと聞いた時からどうするかひそかに考えて、後回しにしてきたことだっただけに、ちょっと拍子抜けしてしまったのは内緒だ。
また、母さんが突如フィーナに勝負を持ち掛けての超絶バトル、そしてなぜか、わかりあったようで、フィーナが俺の嫁として認定されたようだ。
もしかしたら、そろそろ覚悟を決めないと、いけないのかと思った瞬間でもあった。
「そういえば、母さんたち、どうしてここに来たんだ。エニスが14になったら一緒に来ると思ってたんだけど」
「ああ、そうだったな、それはな、お前から土産が届いたんだ」
「土産? そんなもの送ってないけど」
いくら記憶を掘り下げてもそんなものを送った覚えはなかった。
っていうか手紙1つ送らなかったはずだけど……
「これよ」
そういって、母さんが持っていたカバンから取り出したのは黒づくめの頭巾。
「ああ、そっちにも行ったのか」
「なにそれ、あれ、それって」
「この間襲ってきた人たちがつけていたものですね」
ここで、愛美が話に加わってきた。
どうやら、愛美も襲われたようだ。
「あのね、私も倒したんだよ」
エニスが自慢げにそういってきた。
「そうなの、エニスちゃん、強いのね」
「うん、お母さんに教わっているから、前はお兄ちゃんも教えてくれたよ」
「基礎だけだけどな」
「そっか、それじゃ、これからは教えてもらえるね」
「うん」
エニスも楽しそうだ。
考えてみればエニスにとって、年の近い人とのかかわりは今回が初めてだった。
これまでは、父さん母さんだけだったし、俺も1年前に出てきたから思えば寂しい思いをさせてしまったな。
俺は、そんなエニスを見ながらそう反省するのだった。
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今から少し前、ファルターの生まれ故郷である、森にたたずむ小さな家の近くで全身黒ずくめの人間たちが音もたてずに移動していた。
「あら、珍しいわね、こんなところにお客さんなんて」
「!!?」
黒ずくめの者たちは驚愕した。
まさか自分たちが発見されるとは思わなかったからだ、しかも、その発見者が近づいてきたのもわからなかったし、何より、その発見者が今回のターゲットの1人だったからその驚きは尋常なものではなかっただろう。
それでも黒ずくめの者たちも百戦錬磨のつわもの、すぐに立て直して散会した。
「あらあら、ずいぶんと物騒なお客様ね」
そういって、どこからともなく槍を取り出したのは、ファルターの母キナだった。
「ファルターの土産か?」
黒ずくめの者たちはさらに驚愕した。
そこに現れたのはファルターの父マルスだったからだ。
だが、そんな驚愕もすぐに消えた、なぜなら、黒ずくめの者たちはあっという間にキナとマルスによってまるで、道端の小石を拾うような感覚で命を刈り取られたからだった。
そんな様子を若干遠くで見ていた男がいた。
――――――バカな、あの一瞬でだと……。
男はどうしようか考えた。ターゲットがあまりにも化け物だったために自分たちの手には追えない、ここは逃げるべきだろう、そう判断しかけたその時だった。
「お父さん、お母さん、どうしたの」
男の目に飛び込んできたのは子供、そうファルターの妹エニスだった。
――――――あれを人質にすれば……
男は追い詰められたことで浅はかな考えをしてしまった。
そして、男は素早くエニスの背後に回り、持っていた短剣をエニスののど元に近づけた。
「この娘の命が欲しければ、獲物を捨てろ」
「??」
エニスは状況がよくわかっていないようだった。
「エニス、やっちゃいなさい」
それを見たキナがそういった瞬間、これまたどこからともなく槍を取り出したエニスが男を切り伏せた。
「えっ!」
男はそんな驚愕の声とともに絶命したのだった。
「まさか、こんなにも早くに来るなんてな」
「あの子、ずいぶんと張り切っているのね」
「何、この人たち?」
「お兄ちゃんが頑張っている証拠よ。ああ、そうだ、この際だからファルターのとこに行きましょうか」
「そうだな、エニスもだいぶ大きくなったし、いっそのことみんなでファルターのところに行くか」
「うん、お兄ちゃんに会いたい」
こうして、ファルターの家族はファルターのもとに向かったのだった。
「……と、まぁ、そんなわけでやってきたってことだ」
というのが父さんの説明だった。
「なるほどね、ていうか父さんたちも暗殺ギルドは知っていたんだ」
「当然だ、俺たちも狙われたからな」
「そういうことか、あれ、そっちに行ったということはフィーナの故郷もか?」
俺はふと気になったのでフィーナに尋ねた。
「多分ね、でも大丈夫よ、うちは、みんな強いし、人数も多いから」
ああ、確かに、勇者一族、上森の技を受け突いた者たちなら、暗殺ギルドぐらいなんでもない。
ファルターの故郷が暗殺ギルドに狙われた時と同じころ、フィーナの故郷でも黒ずくめの者たちがいた。
しかし、彼らはファルターの故郷に行った者たちよりも悲惨な目に会う。
「……ということで、バルダスのところの夫婦喧嘩は片付きました。ああ、それと、村の周辺をうろついていた怪しい連中ですが片付けておきました」
「うむ」
とまぁ、そんな感じで夫婦喧嘩の報告ついでに始末したという報告があっただけであった。
「……たぶん、こんな感じよ」
「……さすがだな」
「……う、うん」
俺と愛美は何とかその言葉を絞り出したが、他の者たちは絶句していた。
「……えっと、それで、お前がそろそろ反撃をしたいんじゃないかと、思ってな、助っ人をしてやるよ」
そんなことを父さんが言ってきた。正直ありがたい。
これまで散々狙われ続けたわけだが、何もただ座していたわけではなく一応連中のことは調べていた。
その結果、暗殺ギルドは、この街を中心に複数の街に支部があり、たとえ1か所をつぶしたとしても、ほかの支部が生きていればすぐに復活する。そのために、ほかの支部も同時につぶす必要があるし、何より、暗殺ギルドのギルドマスターが厄介だった。
「確かに、俺たちだけが狙われているならいいけど、さすがにそっちや愛美たちまで襲われるとなると、そろそろつぶした方がいいかもな」
そういいつつ俺は先ほどから俺の後ろで事態についていけずに固まっていた2人に声をかけた。
「アルディ、ルミナお前たちにも協力してもらうぞ」
「えっ、えっと、それは、もちろん構いませんが……」
ルミナが驚きとともにそう答え
「しかし、ぼくたちでは戦力にはならないかと存じます」
アルディがそういった。
「いや、お前たち、というか正確にはお前たちの親の力を借りたいんだ」
「私たちも親? ですか、まさか」
どうやらルミナは暗殺ギルドのギルドマスターの正体の片鱗に気が付いたようだ。
「そういうことだ」
「どういうことだ。その子たちの親がどうしたんだ」
「まぁ、細かい話はここじゃなくて屋敷の中でするよ」
俺がそうったことで俺たちは庭から屋敷に移ることにしたのだった。




