第35話 暗殺ギルドの正体
屋敷は広いが、10人が一堂に会する場所はあまりなく食堂が一番広いということでそこに集まることとなった。
屋敷のテーブルは元貴族屋敷ということで無駄にでかい、その、短い方の1つに俺とフィーナが並び、左側面に俺たちの方から愛美、サーラ、クルム、愛美の前にポルティ(アルディ達や父さんたちにはまだ話していないのでぬいぐるみのようになっている)が座り、右側面に父さん、母さん、エニスが座っている。そして、俺たちの反対側にアルディとルミナという席順だ。
俺たちが座るとマドリスをはじめとした使用人たちが一斉に紅茶を入れ、俺たちの前にそれを置いたところで話を始めることにした。
「それじゃ、まずは改めて紹介する。アルディ、ルミナ」
俺が名を呼ぶと空気を察し2人が立ち上がった。
「この2人は今俺たちと同様平民の格好をしているけど、その正体は……」
俺がそういいながら目で合図を送ると2人は指輪を外した。
「なっ」
「うそっ」
すると2人の姿は金髪碧眼真っ白な肌をした白人、つまり貴族の姿となった。
「貴族でありながら、平民として冒険者をしているんだ」
「改めて自己紹介をさせていただきます。僕はアルディオン・フォン・ブルグ・シンダリオンと申します。そしてこちらが、妻のルミナリエールです」
「シンダリオン! それって、大公爵じゃないか」
そう、アルディの家はこの国の貴族階級でもトップクラスの大物だ。
「そんな、人がどうして、あっ、そ、その、今まですみませんでした」
サーラはこれまで何度かあっており普通に接していたことを思い出して、かなり動揺していた。
「いえ、御気になさらずに、これまで同様に接してくださって結構ですよ」
「貴族といっても、僕は七男で、ルミナは五女ですから、ほとんど貴族としての力はありませんから」
「まぁ、とにかく、そんなわけだ」
「なるほどね、それで、この子たちのご両親の力を借りたいってことは、もしかして相手は貴族ってことかしら」
さすがに母さんは動揺せずに冷静にその答えを出した。
そして、それを聞いたみんなが驚愕の表情を俺に向けた。
「はい、そうです。暗殺ギルドのギルドマスターはある貴族家です」
「!!!」
その場にいた全員が驚愕した。
「そ、それは、本当のことなんですか」
ルミナが思わずといった感じに声を上げた。
「ああ、本当だ、といっても証拠がないんだけどな。ただ、間違いなはい」
「その根拠をお聞きしても」
アルディが恐る恐るといった感じに聞いてきた。
「もちろんだ。俺たちも、暗殺ギルドに狙われて、ただ受け身となっていたわけじゃない、暗殺ギルドが何者かそれを調べていたんだ」
「それで、わかったんですか?」
「そうだ、といっても最初はただの依頼人という疑いだったけどな」
「依頼人? ですか」
「俺たちが最初に狙われたのはドラゴン討伐をした後、でもな、その前、つまりドラゴン討伐事態が俺たちの命を狙ったものだった」
「えっ、それってどういう」
「ドラゴン討伐の依頼は通常その手のクランに割り当てられる」
そこで父さんからの1言。
「私たちはワーバーン討伐で依頼を受けたのよ。といってもそれも当時ランク10だった私たちには通常出されないものだけど」
「うん、確か、ワイバーン討伐でもランク12だよね」
「そうだ、俺たちは指名依頼を受けたんだ。それで、ギルドも俺たちなら大丈夫だろうってことでそれを俺たちに出してきた」
俺たちがその話を始めるとマドリスたちは気を落としていた。彼らにとっては故郷のしでかしたことだからだろう。
「その話はクジャリのやつから聞いている。お前たちの実力はその当時でもワイバーンぐらいなら楽勝だと考えたようだ」
「ええ、確かにそういってたわね。私もそう思うからクジャリの判断は正しいと思うけど」
「でも、行ってみればドラゴン。これは、ある貴族冒険者が考えた策略だった」
「私たちに復讐するためのね」
「どういうことですか」
「ドラゴン討伐の前、俺たちはある貴族冒険者に仲間にならないかと誘われたんだ。でも、その時気楽な冒険をしたかったっていうのもあるから、断ったんだよ」
それがすべての始まりだった。
「その時断られたことでお前たちを殺そうとしているってわけか」
「俺としてもかなりあほくさいと思うけどな」
「そうですね、ですが、貴族にはプライドがありますから」
「はい、おそらく断られるとは思わなかったのでしょう」
ここで同じ貴族でもあるアルディとルミナが恥ずかしそうに言った。
「みたいだな。おかげで、何度も狙われている」
「でも、うその依頼って違反だよね」
クルムがそういったときマドリスたちがびくっとなった。
「ああ、かなり厳しいばつがある」
「そ、その依頼した人は……」
サーラが心配そうに尋ねてきた。
「それなら、大丈夫だ。俺たち上森には人のうそを見抜くすべもある、依頼人、クリアルブ村の村長だったミグルス、まぁ、このマドリスの兄さんだそうだけど、彼もまたその貴族に脅されただけだったからな。おとがめはなしということにしてある。といっても現在は村長を息子に譲って隠居しているけどな」
俺がそういうと、一斉にマドリスをみんなが見た。
「その時は本当にありがとうございました」
マドリスをはじめとした使用人たちがその場で一斉に頭を下げた。
「ここの使用人はみんなクリアルブ村の出身なんだよ」
「えっ、そうだったの」
「偶然だけどな。この屋敷はもともとルミナの屋敷だったから、ルミナが雇っていたんだよ」
「はい、その通りです」
「不思議な縁ってやつね」
「まぁ、とにかくそれで、ドラゴンでも俺たちを殺せなかったばかりかドラゴン討伐で名を上げてしまった。だから暗殺ギルドに依頼を出したってことだと思う」
「それでも、お兄ちゃんたちを殺せなかったってことでしょ」
「だから、私たちにも来たってことですか」
「だろうな。でも、ここでおかしなことがあるだろ」
「おかしなこと?」
「あまりにもしつこすぎると思わないか。暗殺ギルドに依頼を出すだけでもかなりの大金が必要になる」
「はい、いくら貴族でもそこまでの大金は持ち合わせていません」
「そうですね。それに、そこまで意地になることでもないように思います」
「暗殺ギルドでも同じだろ、いくら何でも何度も何度も失敗続き、暗殺ギルドにとってはファルターたちは関係がない。そこまでする必要はないだろう」
そう、そこである。数回なら暗殺ギルドの意地で狙ってくる可能性はある。しかし、あまりにも多すぎる。それに、なんとしても殺せと依頼人が言ったとしても、俺たちが相手だと損失が大きい、その分依頼料もかさむわけだ。
これまで1年近くも狙われ、ついには家族にまで狙いをつけてきた。つまり、もし依頼したのだとしたら莫大な金が支払われているというわけだ。
「でも、もし、その依頼人が暗殺ギルドのギルドマスターだったら」
そう、俺たちはそれでその結論に達した。だから、細かく調べたのだった。
「それで、ギルドマスターの正体が分かったってわけだ」
「なるほど、そういうことですか。それでは、その貴族は誰なのですか」
ここでルミナが貴族としての表情となり尋ねてきた。
「ここ、セルミナルク領主、アウディオレ家だ」
「!!」
「なっ、アウディオレ家」
「そ、それは、本当なんですか」
アルディ達は驚愕している。それも当然、アウディオレ家は伯爵の爵位を持つ貴族で、ルミナの実家ミリナルオ家にとっては寄り子となる一族であり、アルディの実家シンダリオン家にとっても古来から親交のある一族でもある。
「間違いないわよ」
アルディとルミナは相当ショックを受けたようで茫然としている。




