第19話 予選の予選
ついに武術大会予選を行うための予選が行われる。
なんだかややこしいが仕方ない。
抽選の結果フィーナと俺はうまくブロックが分かれることになり、この予選でぶつかり俺が本選に出場できないという事態は避けられたようだ。
まぁ、だからと言って、フィーナだけが脅威とは限らないが……
母さんみたいな化け物が現れれば確実に負ける。
何せ、俺には武術の才能はないのだからな。
そんなこんなで始まった予選の予選、何とか本選に出場できるように祈るばかりである。
「ファルター、ここでお別れだね」
「ああ、フィーナもがんばれよ」
「ファルターものね、2人で、本選出場しましょう」
「だな」
そういって俺とフィーナはそれぞれのブロックの予選会場に向かうために会場入り口で別れた。
会場に着くとそこにはあまたのつわものたちがひしめき合っていた。
「多っ、っていうかこれ全部出場者かよ」
ざっと見ても1万近くいそうだった。
一体どこからこんなに人が出てきたんだと思うほどだ。
そこで俺は衝撃の事実にたどり着いた。
「ちょっとまて、これでも2つに分けたのかよ」
そう、2ブロックに分かれているということから参加者はこのセルミナルクでも2万、ほかにもあと7都市で同じような規模で予選を行っているとしたら、単純計算で16万人もいることになる。
この国の人口がどれほどいるのか知らないが、武術にかかわっている人間すべてが参加しているんじゃないかと思いたくなる。
と同時に、ひそかに母さんが参加していないだろうなという不安がよぎったが、さすがに母さんがいればすぐにわかりそうなものだし、エニスがまだいるからそれはないだろうと思いとどまった。
にしてもその母さん並みの実力の持ち主がいるかもしれないと気を引き締めることにした。
そんなことを考えているうちに予選の説明が始まった。
それによると、予選はちょっと広めの武舞台上に130名ほどが一斉に上がっての乱戦ということだ。そして、最後まで残っていたものが次に進むという単純なものだった。
130名って、多すぎだな、ちょっと押されただけで武舞台から落ちてしまいそうだ。
まぁ、実際、これで失格になる運の悪い奴も毎回結構な数でいるらしいけど……
そして、これを8つの武舞台で同時に行い、計10試合行われる。
1日の試合数が5試合となっており、2日で1万から80人まで絞られるというわけだ。
さらに、そこから、今度は5人が武舞台に上がり2試合。これで、16人まで絞るというわけだ。
最後にこの16人でトーナメント方式による試合を行い優勝、準優勝者が本選出場枠を勝ち取れるという内容だ。
そして、俺の試合だがそれは抽選の紙に書いていあった。
それによると俺は第2試合の5番の武舞台で行うようだ。
「第2試合となると帰るわけにもいかないな。しょうがない、前の試合でも見ておくか」
そう思ってさっそく試合会場に足を運んでみた。
するとそこでは試合が始まろうとしていた。
「予想以上にぎちぎちだな。ちょっと押されただけでも落ちそうだ」
そう思ってみていると試合開始とともに数人押されて武舞台から落ちたやつがいた。
「うわぁ、ほんとに落ちた。あれで、失格とか、最悪だな」
気を付けないと思う光景だった。
その後、かなりの乱戦が行われ、ようやく残り8人となったところでいつの間にか2人1組となり戦いを始めた。
それを繰り返して何とか勝利を収めた大男が絶叫していた。
そして、ついに俺の試合となった。
俺は前の試合を参考にうまく場所取りを行った結果、中過ぎず外過ぎない結構いい場所をとることに成功した。
「それでは、だい2試合、始めてください」
試合開始の合図とともにやはり外側にいたやつらが数人落ちていったようだ。
さてと、それじゃ、まずはどうするかな。
とにかく様子を見ようと思いながら、隣から攻撃してくるやつらをことごとくかわし続け場外に落としていった。
しばらくしてだいぶ人数が減りスペースが空いてくると、俺を見つけた数人に囲まれた。
「おいおい、こいつ魔法使いじゃないか」
「まじかよ、何勘違いしているんだ」
「やっちまおうぜ」
「おう」
などと言ってきた。
まぁ、確かに俺も一目で魔法使いだとわかる格好で武舞台に上がったけど、普通は警戒するだろ。当然中には遠巻きに俺を観察している奴らが結構いるし。
そんなことを考えていると男たちの攻撃が迫ってきていた。
その攻撃はお世辞にも鋭いとは言えない、なので紙一重でよけて背中を少し押してやる。
すると、バランスを崩して場外へというわけだ。
そんなことを繰り返してさらに数人片付けた。
遠巻きに見ている奴はそれを見て何やら感心したような表情をしていたが、特に気にしないでおこう。
こうして俺をかこってきた数人はあっという間に全員場外に落ちた。
それからも何人かがやってきては場外に出すを繰り返していると、いつのまにか10数人ぐらいまで減った。
そうなってくるとほかの連中の戦いを見ることができる。
「結構、やるやつが残っているな」
少なくとも今残っているのは先の戦争で戦ったブースター部隊の連中よりは強い奴らだった。
それでも、俺が負けるような強さのやつはいないように見えた。
実際、その後に複数のやつから試合を申し込まれたり襲撃を受けたが難なく全員を倒すことができ、ようやく勝負がついた。
そう、俺は勝ち抜くことができたようだ。
試合を終えてふと気が付いたのだが、観客席にフィーナがいた。
どうやら応援に来ていたようだった。
俺が勝ち進んだことを喜んでいた。
何を言っているのかはわからないが俺はとりあえず手を挙げて声援にこたえることにした。
そして、次の日、今度はフィーナの試合がある、フィーナが負けることはありえないと思うが、昨日応援に来てくれたし、何よりそうしたいから屋敷のみんなで応援に行った。
といっても、フィーナの試合はすぐに気合の入ったフィーナによりことごとく場外に放り出され。あっという間に試合終了となり、フィーナもまた勝ち進んだ。
「早すぎないか」
「はい、まさか、これほどとは……」
「奥様、すごいです」
俺たちは唖然としていた。
そして、次の日、予選の予選第2試合が開始される。
「今日勝てば予選出場が決まるわけか、フィーナは余裕で行けると思うけど、才能のない俺じゃわからないからな油断しないようにしなきゃな」
俺は気合を入れなおした。
っで、実際の試合が始まったわけだが……
結論から言うと何とか勝てたという感じだ。
「まさか、開始早々全員がまとめて俺を襲ってくるとは思わなかったよ」
俺はどっと疲れ、ため息をついた。
まぁとにかくこうして俺は足方から行われる予選トーナメントに出場が決まった。
ちなみにフィーナも同じく決めたようだ。




