093
バイエル公爵の庭は空中庭園だ。そこでモンスターが現れることはない。
デンジャラスバッファロー、サタルカンドに出てくる巨大な牛のモンスター。
突進力が高く、まさに猪突猛進だ。ただ、眠りの魔法は効きやすい。
空中庭園に突如現れたロゼは、まさに猪突猛進で群衆をかき分けた。
いや、まっすぐ僕に向かって突進してきた。
バイスは「ああれえっ!」と、わざとらしい弱さを見せて僕から離れた。
背中を思い切りどつかれた僕は、そのまま地面に倒れこむ。
起き上がった時、ロゼはものすごく険しい顔を見せていた。
殺意を感じた僕は、腰を抜かしたまますぐにロゼを見た。
「ロゼ、これは違う!」なぜか僕は平謝り。
だけどロゼの視線は、僕に向いていない。
ファンらしき男性に抱かれたバイスに向いていた。
「あんた、何者なの?」
ロゼが腕を組んで、バイスを睨んでいた。
「あら、あなたは野蛮な廃人のロゼですこと。
なんと暴力的なのでしょう」
「うるさい、お兄ちゃんはあたしのなの!
勝手に取らないでよ、ブリッコ!泥棒猫!」
「猫を馬鹿にするですって、許さないわ」
ロゼを見ては、急に怖い表情になったバイス。
さっきまでのアイドルの笑顔はすっかり消えて、目がつり上がった。
「そこのデブ、この私が大好きな猫を侮辱するんじゃないわよ」
「あーっ、あたしはデブじゃないわよ。あんたの方こそデブじゃない!」
「私はデブじゃないわ、あんたのお腹のお肉が鎧に食い込んでいるのでは?」
「ひっどーい、そんなことないわよ!
あんただって、どうせリアルブスでしょ!」
ロゼとバイスがいきなり罵り合っていた。
腕を組んで睨むロゼ、それから威圧するような険しい顔のバイス。
中央でしゃがんだ僕はオロオロするしかなかった。
「二人共、やめて」僕が仲裁する。
「うるさい、お兄ちゃんは黙ってて!」
「あなたのお兄ちゃんじゃないわ、私のお兄様よ!」
「なんですって、あたしのよ!」
「だからあんたを消せば良かったのよ、ロゼ!」
「黙りなさい、バイス。前々からあなたがきにくわないのよ。
何がネットアイドルよ、バカじゃないの?」
結局僕の言葉で、喧嘩がますますヒートアップだ。
二人の喧嘩は収拾する見込みはなさそうだ。
「バイス、やめておけ」
成り行きを見守っていた群衆の一人が声を出した。
それを聞いて、バイスが声の主を見つけて駆け寄った。
その主は、僕も見覚えのある人物だ。
水色のローブを着た賢者で、名前の文字が赤い。
「エリゴス……あいつがぁ」
「ここはGMである私が裁定をしよう」
そう言いながら出てきたのが、水色のローブのエリゴスだ。
見た装備は水色のローブ。これは、最強賢者装備のトリトン装備だ。
彼が不敵な笑みを浮かべて、バイスの頭を優しく撫でていた。




